「ミッションクリティカル領域でのアプリ実行基盤に注力」~日本オラクルのミドルウェア戦略


執行役員 ソフトウェアライセンス事業 製品事業統括 Fusion Middleware事業統括本部長の桐生卓氏
国内のミドルウェア事業戦略
ミドルウェアビジネスの成長点とポイント

 日本オラクル株式会社は28日、ミドルウェア事業戦略に関する説明会を開催。その中で執行役員 ソフトウェアライセンス事業 製品事業統括 Fusion Middleware事業統括本部長の桐生卓氏は、「WebLogic、つまりアプリケーションサーバーを中心に伸ばす戦略を押し進める」と話す。

 同社が具体的に狙っているのは、ミッションクリティカルシステムでのWebLogic Serverの導入。WebLogic Serverの新機能として紹介された、「Active GridLink for RAC」では、RAC(Real Application Clusters)ノードの負荷状態に基づく動的なバランシングなどにより、RACの処理効率を改善するほか、障害・変更の高速検知により、自律的な障害対応や障害時間の最小化を図ることが可能。こうした機能を備えたWebLogic Serverや、ミッションクリティカル向けの機能が強化されたJava SE Advanced/Suiteをユーザーに訴求することで、「ミッションクリティカルならWebLogic、という位置付けを明確にする」(桐生統括本部長)のだという。

 しかしこれは、アプリケーションサーバー市場で、市場自体に特に伸び代が見込めるというわけではない。日本オラクルは製品戦略において、フルスタックのラインアップを提供できることを柱の1つとして掲げており、アプリケーションの実行基盤からその上のさまざまなミドルウェア、アプリケーション、データベースまでの包括的な製品ラインアップをそろえ、単品、あるいはソリューションとして多くの企業に利用されている。

 さらに別の柱としては、個々の製品で“ベスト”を目指すとともに、それらを複数利用した時のメリットの訴求もひんぱんに行われている。こうした中で、Java SEやWebLogic Serverといった実行基盤を積極的に打ち出すことの目的は、ほかの自社製品と組み合わせて、トータルでの差別化を訴求していくことにほかならない。

 桐生統括本部長は、他製品との組み合わせの例として、インメモリデータグリッドの「Oracle Coherence」を取り上げ、「お客さまから超高速システムを構築したいという場合にはCoherenceをご紹介することになるが、それを動かす基盤としてのWebLogic Serverの利点とあわせて、トータルでの強みを訴求できる」と、この戦略を説明する。

 また、ハードウェアを含めた包括的なソリューションである「エンジニアードシステム」の提供も、他社にない強みといえる。データベース領域での「Oracle Exadata」に続き、ミドルウェア領域では「Oracle Exalogic Elastic Cloud」が発表されているが、これらのエンジニアードシステムを利用すると、圧倒的なパフォーマンスとコスト削減を実現できる、とのメッセージが繰り返し伝えられている。桐生統括本部長は、こうしたエンジニアードシステムも大きな目玉として押し出し、ソリューションの拡販を進める意向を示した。

 なお市場へのアプローチは、引き続きパートナーと協力して進める考えで、「当社の営業が直接お客さまへメリットを訴求し、実装や運用はパートナーが行う『プル・プッシュモデル』を継続して推進する。また本年は引き合いが強くなっていて技術者が不足してきたため、100名強のパートナー技術者を育成していく」(桐生統括本部長)と取り組みを説明。加えて、専門情報サイト「WebLogic Channel」を立ち上げ、開発者向けの情報を一元的に提供することも明らかにしている。


ミッションクリティカルシステムのためのWebLogicの機能強化パートナーとの協業強化

 

CEP市場にも本格参入

CEPに注目する理由
空港での乗客流量管理の例

 またFusion Middleware事業統括本部 ビジネス推進本部 マネジャーの井上憲氏は、ソリューションの一例として複合イベント処理(CEP)を紹介。Coherenceと統合したCEP製品「Oracle CEP 11g」により、大量データをさばきながら高速処理を実現し、顧客にメリットを提供できるとした。

 なお、今CEPが注目されているのは、「ビッグデータ、埋もれていたデータをリアルタイムに活用したいというニーズが増えたこと」が一番大きな理由で、これを競争力強化や他社との差別化強化につなげよう、という企業が増えているのだという。

 この例として井上マネジャーは、「空港のデューティフリーショップに大量の人が居て、一斉にセキュリティチェックに流れたら人が滞留してしまう。これを避けるために動く歩道の速度を下げ、その間に人員を増強する」といったケースを紹介。さらに、「子供服売り場の近くに滞留している人には子どもがいる可能性が高いため、ドラッグストアの子ども向け商品の割引券を配布する」といった、One to Oneマーケティングにも活用できるとした。

 ただし、こうしたケースではその企業のコアビジネスとリンクするため、個別企業ごとのプロセスの最適化作業などが発生してしまうが、リスク排除に使うケースでは、一部をテンプレート化することで、導入コストを下げてより利用しやすくすることも可能なのだという。日本オラクルではこうしたケースに対応するため、シグマクシスと共同で、「Oracle CEP 11g」をベースにした金融犯罪リスクを低減する、オンライン不正検知ソリューションを提供することも発表された。

 「当社では、大量処理、高速処理を実現するのみならず、カートリッジ技術を用いたオンライン処理などにより、業務ルールを変更してもシステムを止めずに運用し続けられるため、ミッションクリティカル性を高めながら継続して提供できるインフラを提供できる点が強みだ」(井上マネジャー)。


対象領域シグマクシスと共同ソリューションを提供する
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