JEITA発表、2011年度のIAサーバーは予想上回る実績に~今後も継続的な需要拡大を見込む
サーバーおよびワークステーションの総出荷実績 |
一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は28日、2011年度(2011年4月~2012年3月)のサーバーおよびワークステーションの出荷実績を発表した。
IAサーバーの出荷台数は、前年比6%増の33万2242台、出荷金額は2%増の1965億4100万円となった。そのうちブレードサーバーは、前年比11%増の4万4861台となった。
「震災の影響を慎重にみていたが、その影響は限定的だった。最終的には当初の予想よりも伸長している。むしろ、震災後に、データセンター集約への投資や、クラウド活用といった需要が増加した結果、伸長したと予測している。特に製造業での投資が活発であり、ここでは製造業におけるBCP対策への前倒しが行われたと推測できる。また、メインフレームやUNIXサーバーからの移行も想定されるほか、100万円未満の製品の伸びが大きい。ブレードサーバーについては、データセンター需要の増加が大きいと判断している」(JEITA サーバ市場専門委員会・香川弘一委員長)と分析した。
価格帯別では、300万円以上の出荷台数が14%増の1351台、出荷金額が前年並の114億3400万円(前年実績は114億6200万円)。100~300万円未満の出荷台数が13%増の9253台、出荷金額が7%減の222億2500万円。50~100万円未満が9%増の8万3772台、出荷金額が15%増の596億5200万円。50万円未満の出荷台数が4%増の23万7866台、出荷金額は2%減の1032億300万円となった。
業種別には製造業向けが出荷台数で前年比15%増の7万2317台、出荷金額では31%増の454億8000万円と大幅に成長。第一次産業は台数で42%増の242台、出荷金額で63%増の1億4000万円となった。金融関係、販売業、が台数、金額ともに、2けたの落ち込みとなった。
IAサーバーの出荷実績 | ブレードサーバーの出荷台数 | IAサーバーの産業別出荷台数構成比 |
IAサーバーの産業別出荷金額構成比 | JEITA サーバ市場専門委員会の香川弘一委員長(=東芝ソリューションプラットフォームソリューション事業部参事) |
一方、UNIXサーバーの出荷台数は22%減の1万699台、出荷金額は9%減の1011億3000万円となった。
「UNIXサーバーでは1000万円~4000万円台の出荷が伸びている。基幹系データベースサーバーの需要が増加したものとみている」(JEITA サーバ市場専門委員会・香川弘一委員長)という。
IAサーバーとUNIXサーバーを合計したオープンサーバー全体では、出荷台数が前年比5%増の34万2941台、出荷金額が2%減の2976億7100万円となった。
メインフレームの出荷台数は前年比13%減の390台、出荷金額は27%減の602億7900万円となった。
独自OSサーバーは、出荷台数が前年比14%減の850台、出荷金額が6%減の61億5400万円。ワークステーションの出荷台数は前年並の7万3340台(前年実績は7万3665台)、出荷金額は1%減の120億5500万円となった。
UNIXサーバーの出荷実績 | メインフレームの出荷実績 |
UNIXサーバーの産業別出荷台数構成比 | メインフレームの産業別出荷台数構成比 |
なお、2011年度以降の見通しについては、「国内経済は、欧州財政不安、円高継続、株価低迷などにより不透明な状況にあるが、先延ばしにされてきた投資の再開や、復興財政支出などの好転が期待できる。ユーザー企業においてはIT投資の絞り込みと効率化の追求によって、所有型から利用型への移行が進み、クラウド型サービスの需要が一層拡大。サーバー需要の拡大が見込まれる」とした。
サーバー需要の拡大については、大震災の教訓を踏まえた事業継続プログラムの実行による基幹システムのバックアップサイトの構築や、データセンター化の増加、防災システムの構築などのほか、クラウドコンピューティングの進展に伴い、プライベートクラウドおよびパブリッククラウドの構築、強化によって、データセンターの構築、増強が進むとみられるほか、新たに発生するサービスに対応するためのサーバー導入や、システム運用効率化のためのサーバー統合や仮想化導入、全国的な節電対策への対応としての省電力化を重視したサーバーへの更新、グリーンIT対応サーバーへの投資などをあげた。
さらに、スマートコミュニティの構築、非定型型のビッグデータの高速処理といった新たな市場変化への対応も、サーバー需要につながると予測した。
IAサーバーは引き続き幅広い用途での需要が拡大することから、2012年度の出荷台数は34万1064台、出荷金額で1989億9400万円、2014年度には36万5458台、2051億8200万円に達すると予測した。また、UNIXサーバーは2012年度には出荷台数で9294台、出荷金額で912億6300万円、2014年度には8041台、792億1700万円と引き続きマイナス成長を予測。メインフレームは、2012年度の出荷台数が388台、出荷金額が622億900万円、2014年度には322台、549億100万円とした。
JEITA サーバ市場専門委員会・石原良一副委員長は、「IT投資に対する厳しさはあるが、2011年度実績も上半期よりも下半期の方が好調であるなど、徐々に回復基調に転じている。クラウドやサーバー統合への需要も引き続き、期待ができる。IAサーバーでは、2011年度に当初予想を上回ったように、2012年度のIAサーバーの出荷が見通しを上回ることを期待したい」などとした。
メインフレーム需要予測 | UNIXサーバー需要予測 | IAサーバー需要予測 |
なお、JEITAのサーバー出荷統計は、統計参画会社の出荷実績データをそのまま集計したものであり、市場カバー率を背景にした予測や推測は一切含まれてない。メインフレームでは国内市場全体のほぼ100%をカバー。IAサーバーなどのオープン系サーバーでは約7割をカバーしている。
統計参画企業は沖電気工業、日本IBM、NEC、富士通、東芝ソリューション、日本オラクル、日立製作所、三菱電機。
また、同協会では、サーバーの年間消費総電力量に関する試算を発表した。同試算を対外的に発表するのは昨年に続き2回目。これによると、2011年度のサーバーの稼働台数は295万台に対して、総消費電力量は295KWhの実績となった。
昨年5月に発表した2013年度の予測では稼働台数289万台、総消費電力量47KWhとしていたが、今年の予測では、294万台、45億kWhと修正。台数は増加しながらも省エネ化が進むとした。
JEITA サーバグリーンIT専門委員会の西岡浩委員長(=NEC プラットフォーム販売本部エグゼクティブエキスパート)は、「プロセッサのマルチコア化、製造プロセスの微細化、2.5型ハードディスクの採用などの技術改良により、サーバー単体の消費電力が抑えられたこと、サーバーのパフォーマンス向上により、効率よいサーバー利用が進んでいることが要因」などとした。
2014年度には299万台が稼働し、総消費電力量は44億kWhになると予想した。
1UのIAサーバー下位モデル機を例にとると、2005年モデルから、2011年モデルへのリプレースによって、電力消費量は約4割削減でき、パフォーマンス性能では約30倍となる例を示しながら、「サーバーを新しくすることで大幅な省エネにつながることを、業界として訴求していきたい」と語った。
「国内のサーバーは、省電力化での競争力を持っている製品が多く、技術力、信頼性での強みが発揮できる」(JEITA サーバ事業委員会・村野井剛委員長)などとした。
サーバー年間総消費電力量の推移 | IAサーバーの下位機ではリプレースで電力消費量を約4割削減できる | サーバーグリーンITハンドブック2011を手に持つ、JEITA サーバグリーンIT専門委員会の西岡浩委員長 |