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富士通が挑むAI時代の「経営起点」サイバー防衛戦略 「SPIRAVOLVE Cyber Defense」で目指す2000億円事業の全貌

 富士通株式会社は、新たなサイバーセキュリティ戦略を策定し、「Fujitsu SPIRAVOLVE Cyber Defense(スパイラヴォルヴ サイバーディフェンス)」の名称で展開する。AI時代における企業のサイバー防衛ライフサイクルを実現し、企業のサイバー防衛能力を継続的に進化させることを目指しており、2030年度までに国内セキュリティサービスで約2000億円の売上収益を目指す方針も明らかにしている。

 Fujitsu SPIRAVOLVE Cyber Defenseは、防御思想、モデル、防御能力、フレームワーク、運用概念、サービスを一体にとらえ、事業を継続的に守るための「サイバー防御の上位コンセプト」と位置づけたもの。具体的には、企業全体のサイバー防衛能力を、構築、運用、改善するための考え方を体系化した「サイバー防衛運用モデル」と、実践的な枠組みとして定義した「サイバー防衛フレームワーク」で構成される。

 さらに、同フレームワークで得たデータから、脅威やリスクを感知して、観測および分析結果を可視化し、個々の防衛活動の方向付けや現場の自律的な実行サイクルを促す仕組みとして「Cyber Nerve System」を構築する。加えて、100人体制のバーチャル組織「Cyber Security Nerve Center」を設立して、企業のセキュリティ対策の強化を支援する。

 ちなみに、「SPIRAVOLVE(スパイラヴォルヴ)」は、「Spiral」と「Evolve」を組み合わせた造語で、循環しながら進化するサイバー防御を意味している。

経営を起点に進化する、新たなサイバー防衛へ

 なぜいま、富士通は、サイバーセキュリティ戦略である「Fujitsu SPIRAVOLVE Cyber Defense」を新たに策定したのか。富士通 執行役員常務 CISO(Chief Information Security Officer)の太田雅浩氏に、その背景と狙いを聞いた。

富士通 執行役員常務 CISO(Chief Information Security Officer)の太田雅浩氏

AIによるサイバー攻撃の高度化と「経営視点」での防衛の必要性

 ここにきて、サイバー攻撃によって企業が持つ個人情報が流出するニュースが相次いでいる。中には、個人を特定できる画像を含む運転免許証の情報が大量に流出したケースもあり、該当する可能性がある利用者からは、なりすましによる悪用などを懸念する不安の声が上がっている。

 サイバー攻撃が相次ぐ中で見逃せないのが、攻撃者側のAIの積極的な活用である。相次ぐサイバー攻撃の手口については、すべてが明らかになっているわけではないが、AI技術の飛躍的な進化により、サイバー攻撃は急速な勢いで高度化および自動化しているのが現状であり、脆弱性の探索や攻撃経路の分析、攻撃コードの生成、侵害後の内部システムへの攻撃拡大などの活動は、従来とは比較にならないほど、短時間で高精度に行えるようになっている。これが、サイバー攻撃による情報流出の増加の温床になっているのは間違いない。

 例えば2026年7月には、OpenAIの未公開AIモデルが社内プロキシの脆弱性を発見した上、検証環境を勝手に抜け出してHugging Faceに侵入し、攻撃するという出来事が発生した。このときの攻撃行動そのものは人が行うパターンと同じであったものの、経路探索については、人が行う規模とは大幅に異なり、発表によると、4・5日間の間に約1万7600回もの攻撃を実行した。そのほとんどが失敗したが、最終的には攻撃を成立させている。また、攻撃時には、3回連続で同じ攻撃に失敗するとロックされて発覚してしまうことをAIが認知し、次々と経路を変更して攻撃する仕組みとなっていた点も特徴だ。

 これは、AIによるサイバー攻撃の高度化を示す事象のひとつだといえる。AIによるサイバー攻撃の高度化は、高速、大量試行、長時間継続、経路変更の繰り返しという、人にはできない攻撃の「しつこさ」にもつながっているというわけだ。

 さらに、攻撃側にとっては、サイバー攻撃の対象が広がっているという点も、守る企業側には頭が痛い問題だ。企業のIT環境は、クラウドの活用や外部とのデータ連携、サプライチェーンを形成するシステムとの接続などによって複雑化しており、企業が管理すべき防衛対象領域は自社のシステムやネットワークだけでなく、グループ会社やパートナー、委託先などサプライチェーン全体へと広がっている。これらを守ることは、まさに至難の業だ。

 もちろん、企業側も対策を怠ってきたわけではない。各種調査からも明らかなように、企業におけるセキュリティ投資は拡大傾向にあり、AIを活用した防御に乗り出す企業も増えている。

 こうした中、富士通 執行役員常務 CISO(Chief Information Security Officer)の太田雅浩氏は、「従来のように、侵入されないことや侵入後に検知して対応することだけを前提としたセキュリティ運用では、企業全体のサイバー防衛能力を継続的に維持、向上させることが困難になりつつある。だが企業側には、これまでのセキュリティ投資によって守れているとの認識がある。経営から問われたら、多くの企業の現場からはそうした回答があるだろう。しかし、それは客観的に評価されたものではないケースが少なくない。経営層から見ると、本当に企業が守られていることを正しく確かめる方法がないのが実態である。経営層が納得し、実感できる仕組みが必要である」と指摘する。

 企業には、最重要視する経営課題のひとつとしてサイバー防衛を再設計し、サイバー攻撃を完全に防ぐのではなく、攻撃を受けることを前提として影響を最小化することで、事業継続性を維持する防衛能力の向上が求められる時代に入ってきたといえるのだ。

 富士通の太田CISOは、「サイバーセキュリティをITシステム構築後の運用対策としてとらえるのではなく、戦略立案から設計、開発、実装、運用、評価、改善までを一体的にとらえるサイバー防衛ライフサイクルとして実践する必要がある」とし、「富士通のサイバーセキュリティ戦略の最大の特徴は、一貫して経営目線でセキュリティを考えている点である。セキュリティは、経営層自らが自社の対策がしっかりしていることを客観的に理解しなくてはならない。防御能力が高まっているのか、下がっているのかを理解していない経営層が多いことが、日本の企業のセキュリティ対策の課題である」と警鐘を鳴らす。

 その上で、「セキュリティ戦略において重要なのは、セキュリティ技術に投資をするのではなく、防御のケイパビリティ(防御能力)に投資をすることである。富士通は、サイバーセキュリティ戦略はケイパビリティの提供にフォーカスする。AI時代においては、常に変化し続けるサイバー防衛の全体像とお客さまの現状との差分を明らかにし、お客さまのサイバー防衛ライフサイクルを一貫して支援することで、企業のサイバー防衛能力とサイバーレジリエンスの継続的な向上への貢献を目指すことになる」とした。

中核を担う「Cyber Nerve System」と専門組織「Cyber Security Nerve Center」

 富士通の「Fujitsu SPIRAVOLVE Cyber Defense」は、生成AIの進化や企業システムの複雑化に対応し、企業のサイバー防衛能力を継続的に進化させるものになるという。

 実践知を生かしたコンサルティングやシステム構築サービス、運用サービス、AI活用型防衛サービスを段階的に提供し、企業のサイバーレジリエンスの向上を支援。さらに、高度監視や自動対処、AIエージェントによる顧客環境への実装支援などのサービスやソリューションを拡充する考えを示す。また、大規模言語モデル「Takane」をはじめとした自社技術との融合により、企業やサプライチェーン全体を支える次世代サイバー防衛基盤へと発展させるという。

 さらに、Cyber Nerve Systemでは、サイバー防衛フレームワークのデータから、脅威やリスクを感知し、観測および分析結果を可視化することで、個々の防衛活動を方向づけ、現場の自律的な実行サイクルを促すための仕組みと位置づけており、Fujitsu SPIRAVOLVE Cyber Defenseの中核的役割を担うことになる。

 太田CISOは、「Cyber Nerve Systemでは、脅威やリスクを感知し、観測、分析結果を共通認識基盤として可視化し、運用や評価、経営判断を支援する。Nerve(神経)という言葉を用いているように、目、鼻、口といった役割を果たすセンサーからさまざまな情報を収集し、これを神経網を通じて伝達し、頭脳の役割を果たすCyber Security Nerve Centerが、リスクを判断し、優先順位を考え、サイバー防衛フレームワークに指示し、実行することになる」と説明する。

 すでに富士通社内では、Cyber Nerve Systemのベースとなる仕組みを実践していることも明かす。

 「富士通では、リージョンやビジネスグループごとに、脆弱性が表出した状況や、規定の期日内にリスク対応ができたかどうか、間もなくEOSを迎えるシステムはどれかといった情報などをダッシュボード上に表示し、経営層自らが確認できるようにしている。経営層がCyber Nerve Systemをもとに、いまの実態を客観的に理解でき、企業が守られているのかどうかを常に確認できる」という。

 サイバーセキュリティ戦略において、経営層と直結するのが、Cyber Security Nerve Centerである。2026年10月1日付でスタートした組織だ。Cyber Nerve Systemから得られる客観的な情報に基づく意思決定支援を行うことができるという。

 「Cyber Nerve Systemから得られる客観的な評価やエビデンスに基づいて、システム停止やサイバー防衛の優先順位づけ、投資方針など、経営陣に対する報告や提言を行い、意思決定を支援する」という。

 富士通自らがカスタマーゼロとして実践したノウハウや、顧客支援を通じて培った知見を集約するほか、市場や脅威、技術の動向を踏まえて、サイバーセキュリティ戦略を横断的に推進。必要に応じて新たなプロダクトや機能を開発するとともに、自社環境で実効性を検証し、コンサルティングや高性能AIを活用した脆弱性診断、AI脅威ハンティング、AIレッドチームオペレーションなどの防御機能として展開する。

 100人規模のバーチャル組織として構成。富士通研究所やUvance Wayfinders、サービス開発部門、ミドルウェア開発部門、セキュリティ開発部門、デリバリー部門などから参加し、これらの知見や技術を結集し、技術導入やサービス開発を含めたサイバーセキュリティ戦略を横断的に推進する。

 「Fujitsu SPIRAVOLVE Cyber Defenseで提供するケイパビリティを実現する上では、プロダクト開発やサービス開発の推進、新たな技術の取り込みなどを進めなくてはならない。また、デリバリーにも工夫が必要になる可能性もある。陣容は、コンサルティングを含むサービス開発部門が中心になるが、さまざまな知見を集めて、マーケットに提供する仕組みを構築することになる」とした。

 さらに、Fujitsu SPIRAVOLVE Cyber Defenseでは、スタートアップや外部パートナーなどからも新たな技術を取り込み、富士通自身のサイバーセキュリティ戦略へ反映することになる。

 「富士通の実践知を活用しようと考えても、そのままでは多くの企業が使えるものにはならない。そこで、サイバー防衛運用モデルを活用し、お客さまに提供する形にする。また、サイバー防衛フレームワークは、実行レイヤーであり、さまざまなセキュリティ施策を展開することになる」とし、「実践や検証を進めている高性能AIを活用するだけでなく、富士通がカスタマーゼロとして培った実践知やお客さま環境からのフィードバックを組み合わせ、Cyber Nerve Systemや各種サービスへ反映することで、企業の防衛能力そのものを継続的に進化させていくことを目指す。さらに、実践知をもとに、AI脅威ハンティングやAIレッドチームオペレーションなどの高度なサイバー防御機能のサービス化を推進する」と述べた。

攻撃を遅らせ目的を暴く「減速防御」の思想

 Fujitsu SPIRAVOLVE Cyber Defenseでは、「サイバー防衛運用モデル」を構成する4つのサブモデルによって、サイバー防衛を定義することになる。これにより、防衛対象、防御思想、防衛責任、防御レベルを体系的に整理。セキュリティ対策の優先順位や必要となる投資を明確化し、企業の防衛能力の向上と、サイバーレジリエンスの継続的な進化を支援するという。

 ひとつめは、「Fujitsu Cyber Defense Philosophy Model」である。防御の基本思想を定義するものであり、攻撃を完全に防ぐことだけを目的にせず、攻撃者の行動を遅らせることで防御側に時間的優位を生み出し、行動を観測することで、追加対策の実施などにつなげる「減速防御」の考え方を取り入れるという。

 太田CISOは、「Fujitsu Cyber Defense Philosophy Modelは、防御思想を定義したものである」と位置づけ、「高度なAIを利用したサイバー攻撃は、マシンスピードで行われており、すぐに検知ができなかったり、検知が難しかったりすることを念頭に置く必要がある。つまり、AIを活用したサイバー攻撃に対し、そのままAIで防御することは難しいと考えるべきである。そこで、攻撃されても崩れない構造を作る『構造型防御(Structural Defense)』と、攻撃に応じて適応し、変化を与える『適応型防御(Adaptive Defense)』によって、攻撃者の進行を継続的に遅らせ、防御側が観測、判断、対応するために必要となる時間的優位を創出し、これによって防御することを目指す」と語る。

 防御AIは、攻撃AIを見つけないと戦えないという不利な状況にある。また、防御AIは、膨大な正常トラフィックの中から攻撃だけを見つけなければならず、その点でも防御AIは、攻撃AIにスピードで勝てないという状況にある。つまり、防御AIで戦うにも、まずは攻撃AIの速度を「削る」必要があるのだ。

 構造型防御では、攻撃AIと防御AIを戦わせる前に、まずは攻撃者と自社の防御構造と戦わせて時間的優位性を創出し、その時間を利用して、分析し、攻撃AIを発見することになる。

 そして、攻撃AIを発見する役割を担うのが適応型防御である。これまでは見逃していたような小さなシグナルや違和感、ノイズなどをトリガーに、膨大なログから正規の行動と非正規の行動を切り分けて特定することができる。正規と非正規の行動を特定するのは、「Fujitsu Weak-Signal Contextual Reasoning(FWSCR)」と呼ぶ微兆文脈推論技術であり、Fujitsu Cyber Defense Philosophy Modelにおいて重要な役割を果たす機能だ。

 また、FWSCRによる適応型防御によって、検知した途端にすぐに「遮断」するという選択肢以外に、攻撃速度を減速させるという選択が可能になる点は大きな特徴になると強調する。これは、誤検知した際の業務への影響を抑えることにもつながるだけでなく、攻撃側の行動や目的を理解することにもつながるからだという。

 「検知した途端に遮断すると、それ以上攻撃は受けないが、攻撃が消えてしまい、攻撃AIが何を目的に行動していたかを理解できないままで終わってしまう。適応型防御によって、ある程度泳がせてみることで、目的を理解して対応可能になり、次に備えることができる。リスクが高いと判断したら遮断することは必要だが、検知したらすぐに追い出すのではなく、攻撃を減速させる一方で、権限や特権を無くした際にどう動くのかといった摩擦を与えて目的を探ることも、防御という点では必要な要素となる。富士通では、構造型防御と適応型防御を組み合わせ、ここに減速防御の原則を掛け算する。これが、Fujitsu Cyber Defense Philosophy Modelによって実現する防御の基本思想になる」と説明した。

 実は、Fujitsu Cyber Defense Philosophy Modelと同様の手法は、先に触れたOpen AIの未公開AIモデルによるHugging Faceへの侵入においても活用されている。

 Hugging Faceでは、AIベースのセキュリティエージェントがセキュリティ監視データの中から相関分析によって弱い信号を攻撃シグナルとして検知。数万件に及ぶアクションリストをもとに行動を分析するとともにネットワークを分離し、認証情報をクラスタやワークロードごとに分離した。これにより、1つの認証が侵害されても横展開できる範囲を最小化し、予防措置を図ったという。

 太田CISOは、「膨大なセキュリティ監視データの中から、複数のシグナルを相関させて侵害を認識したHugging Faceの対策は、Fujitsu Cyber Defense Philosophy Modelの手法に酷似している。これは、このモデルの有効性を裏付けるものである。また、Hugging Faceのその後の再発防止策が、従来技術による防御施策が中心であったことにも注目したい。AI時代においても、構造型防御が基礎となることを示唆している」と指摘した。

防御レベル・対象領域・関係性を体系化する3つのサブモデル

 「サイバー防衛運用モデル」を構成する2つめのサブモデルが、「Fujitsu Cyber Defense Proximity Model」である。ここでは、防御レベルを定義。攻撃者の目的達成との距離に応じて必要な防衛活動を整理して、企業が目指すべき防御レベルやセキュリティ対策投資の優先順位を明確化する。

 「攻撃者の目標行動との距離や近接性(Proximity)をもとに、守り方のステージを変えていくという考え方である。経営者に必要な視点は、攻撃者がどこまで進んできているのかではなく、防げているのか、防げていないのかというバックキャストでの見方である。バックキャストにより逆算し、攻撃者が目標を達成する直前で止めて、対応していくことになる」という。

 そして、3つめが、「Fujitsu Cyber Defense Domain Model」だ。企業が守るべき対象を定義する役割を担う。サイバーセキュリティによって守る対象は、業務上の役割に基づき、対象をとらえるという考え方を徹底しているのが特徴だ。具体的には、防衛対象は、IT領域だけでなく、監視カメラや入室管理システム、医療設備、検査機器といった物理領域も含めることを提案している。IT領域を守ったとしても、物理領域である医療機器などが誤動作すれば、人命に関わるトラブルが発生することにもなりかねないというわけだ。

 太田CISOは、わかりやすい例え話として、映画「ミッション:インポッシブル」を挙げる。主演のトム・クルーズが、スパイ活動で施設に忍び込む際に、相棒が遠隔地からサイバーアタックし、入り口のロックを一定時間内に渡って解除するというシーンなどがあるが、「こうしたことを許してはいけない。IT領域だけを守るのではなく、ロックをはじめとする施設を構成する機器をそれぞれに守り、企業全体を守らなくてはならない」とする。

 最後が、「Fujitsu Cyber Defense Relationship Model」である。企業を取り巻く関係性からサイバー防衛を定義することになる。グループ会社やパートナー企業との関係性に応じて防衛責任や防御範囲を設計して、サプライチェーン全体のサイバーレジリエンス向上を目指す。

企業をまるごと、つながりごと守る

防衛ライフサイクルの実践と高度セキュリティ人材の育成

 なお、Fujitsu SPIRAVOLVE Cyber Defenseでは、循環しながら、進化を続けるサイバー防御のコンセプトであり、これによって、企業のサイバーセキュリティを再設計することになる。

 Principle-Driven Defense Designによって防御原則を策定。サイバー防衛運用モデルを構成する4つのサブモデルを通じて防御能力を高め、サイバー防衛フレームワークで実行することになる。

 これを実装するのは、Fujitsu Model-Driven Defense Serviceであり、セキュリティを後から加えるのではなく、システムや事業構造そのものを最初から埋め込むことができるアーキテクチャー「Fujitsu Inherent Defense Architecture」と、攻撃と防御の双方で、探索、推論、試行、適応のループを自律的に実行するAIインテリジェンスである「Fujitsu Adaptive Defense Intelligence」を、サービス群として提供する。

 「サービス同士の循環に加えて、Fujitsu Model-Driven Defense ServiceとCyber Nerve Systemの間で、実行結果やエビデンス、学びなどの防御情報を循環したり、運用で発見した結果を、構築側に循環したりといった環境を構築している」という。

 一方、サイバー防衛運用モデルを実践するために、サイバー防衛フレームワークを構築。これを、「構築や運用、継続的改善を通じて実効性を高め続けるための実践的な枠組み」と位置づけている。

 企業のサイバー防衛を、ITシステム構築後の運用対策だけにとどまらず、戦略立案から設計、開発の段階から関与し、運用や改善までを含めたサイバー防衛ライフサイクルとして実践するのが特徴だ。ここでは、フロンティアAIを活用した脆弱性診断を導入するほか、政府が推進する国家的AIサイバー防衛パッケージ「Project YATA-Shield」への貢献も目指すという。

 さらに、富士通では、サイバーセキュリティ人材の育成を推進する考えも示す。

 太田CISOは、「セキュリティの専門知識を持ったFDEのような人材を育成したいと考えている。モデルやケイパビリティを提供するという観点から、お客さまに寄り沿いセキュリティを提供できる人材を育成し、企業を守ることになる」とする。

 Cyber Nerve Centerで蓄積した実践知や最新の脅威分析の結果、実際の防衛活動から得られた知見を教育プログラムに継続的に反映。これをもとに、社内ホワイトハッカーやセキュリティアーキテクトなどの高度専門人材を育成し、AI時代のサイバー防衛を担う人材基盤を強化する考えだ。

2030年度に売上収益2000億円を目指す富士通のサイバーセキュリティ戦略

 富士通は、2026年9月16日に開催した「IR Day 2026」で、高橋美波副社長 COO(ソリューションサービス担当)が、サイバーセキュリティへの取り組みに言及。2030年度には、国内セキュリティサービス事業の売上収益で2000億円を目指す計画を打ち出した。これが、「Fujitsu SPIRAVOLVE Cyber Defense」による取り組みを指すものとなる。

 富士通の高橋副社長は、「これまでは、個別の製品やサービスの提供であったが、今後は、リスク管理、防御の実装、運用、管理を一体化した『経営サイバー防衛ガバナンス』を提供する。経営起点でお客さまのサイバーセキュリティを再設計し、高度な防御サービスを提供し、企業の事業継続を守る」と語る。

 富士通では、2035年度を目指した「中長期経営ビジョン2035」を発表しており、「Technology-drivenの価値創造」を掲げ、テクノロジーを起点に社会課題を解決していく姿勢を打ち出している。この取り組みにおいて、必要不可欠な要素がセキュリティとなり、富士通の時田隆仁社長 CEOは、「2026年はセキュリティイヤーである」とも発言。Fujitsu SPIRAVOLVE Cyber Defenseが、それを象徴する取り組みになるといえる。

 経営を起点として進化する富士通のサイバーセキュリティ戦略は、AI時代における企業のサイバー防衛ライフサイクルの実現をリードすることになる。