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NRI、2018年までのBYOD動向を予測

   2013年5月21日
                         株式会社野村総合研究所
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         2018年度までのITロードマップを発表
   ~個人モバイルの業務利用(BYOD)で社員の生産性向上を強化~
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株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:嶋本 正、以下「NRI」)は、2018年度までの『BY OD関連技術の進化と、企業へのインパクト』を予測した「ITロードマップ」※1をとりまとめました。

モバイル技術の進歩により、ビジネス活動が「場所」の制約を受けることは少なくなってきました。今後、社員が個人で所有し、使い慣れたスマートフォンやタブレット端末等のスマートデバイスを業務でも利用するBYOD(Bring Your Own Device)関連の技術の進歩により、ビジネスの現場で個人のスマートデバイスが利用される機会が増え、生産性向上とモバイルビジネスの一層の拡大が進むと予想されます。2018年までの、BYODに関連した技術の進歩により、ビジネスの現場にどのような変化が起こるかを、それを支える主な技術とともにNRIで予測したのが「ITロードマップ」です。

【今後5年間のBYODに関するビジネス活動の変化予想】

2013~2014年度:BYOD黎明期(デバイス管理の時代)

多くの企業がBYODを検討するが、利用シーンは限定的

海外に続き、日本でも多くの企業が社員のモバイルワークを支援する手段の一つとして、BYODの採用を検討する。セキュリティリスクを考慮し、企業メールを利用した連絡網の確保や情報共有などが、BYOD採用企業の主な利用シーンである。(登場する主な技術)MDM(モバイルデバイス管理)、NAC(ネットワークアクセス制御)など

2015~2016年度:BYOD発展期(アプリケーション/データ管理の時代)

個人の端末でセキュアな公私分離が実現し、業務アプリを本格利用する先進事例が登場

個人の端末内に業務専用の環境をセキュアに構築し、公私の分離が実現する。セキュリティリスクへの配慮から、会社保有のスマートデバイスを社員に貸与する企業は依然として多いが、BYODでも業務アプリを本格利用してモバイルビジネスを拡大する先行事例が登場する。(登場する主な技術)MAM(モバイルアプリケーション管理)、公私分離技術/デュアル・ペルソナなど

2017年度以降:BYOD普及期(BYO:Bring Your Ownの時代)

会社や個人が所有する端末やサービスを適材適所で活用する業務スタイルが実現

場所やアプリに応じて柔軟に接続先を設定できるネットワーク技術の利用により、BYOD環境の構築を最適化。スマートデバイスだけでなく、会社や個人が所有する端末やサービスを適材適所で活用する業務スタイルが実現し、生産性向上や事業継続強化に貢献する。(登場する主な技術)上記技術に加え、コンテキストアウェア技術、パーソナルLANなど

※1 ITロードマップ:NRI先端ITイノベーション部(旧イノベーション開発部)
が半期ごとに公表している、5年先までの情報技術の動向を予測したもの。

※図表は以下のNRIのホームページでご覧いただけます。
 http://www.nri.co.jp/news/2013/130521.html

【ご参考】
[背景]BYODへの取り組みを加速させる、「ITのコンシューマライゼーション」※2

これまで大企業を中心に、パソコンや携帯電話を社員に貸与してきた日本企業は、個人所有の端末や個人向けサービスを業務で利用することは、セキュリティリスクを高め、ガバナンスを低下させる恐れがあるとして、積極的な活用を避ける傾向がありました。しかし、今以上に生活者が普段利用するIT(情報技術)環境が多様化・高度化する時期を迎え、企業がそれらの利用を厳しく制限することは、時代の変化に乗り遅れるだけでなく、新しいビジネスアイデア創出の芽をそぐ可能性があります。

社員が個人で所有し、使い慣れたスマートデバイスを業務で利用するBYOD(Bring Your Own Device)は、生活者が利用する端末やサービスが企業のそれよりも先行する「ITのコンシューマライゼーション」を象徴する現象といえます。海外のベンチャー企業や、台頭する中国・アジア圏の企業の多くが、生活者市場で普及する先進的なITを業務で積極的に採用し、新しいビジネスのいち早い開発に努めるなか、日本企業もその流れを無視することはできません。

今後、BYODを採用する企業が拡大すれば、社員が個人で利用するさまざまな端末やサービスを業務で利用するBYO(Bring Your Own)の動きが一層加速します。このBYODからBYOへの流れは、一度はじまると止まることはないでしょう。企業は自社のビジネスの成長にBYOをどう生かすことができるか、一歩踏み込んだ検討が求められます。

[ロードマップの詳細]BYOD関連技術の動向と企業におけるスマートデバイスの利用シーン

2013 ~2014年度:BYOD黎明期(デバイス管理の時代)

多くの企業がBYODを検討するが、利用シーンは限定的。

海外の企業や公的機関におけるBYOD採用の動きをうけ、日本でもスマートデバイスを業務で利用する手段の一つとして、多くの企業がBYODの採用を検討します。しかし、この時点ではBYODを実現する技術は進化の途上です。

例えば、BYODで利用されるスマートデバイスの設定や端末資産管理にはMDM(モバイルデバイス管理)を、スマートデバイスが接続する企業ネットワークの保護にはNAC(ネットワークアクセス制御)などの技術を利用することができます。しかしながら、現在提供されている多くのMDMでは、社員が個人用途で利用しているアプリケーションの内容や通信履歴も把握できるため、公私利用の分離が難しく、企業が社員のプライバシーを侵害する恐れがあります。

さらに、日本では大企業を中心に、業務で利用するITの多くを企業が所有し、社員に貸与しています。BYODの採用にあたっては、社員の理解と協力が不可欠です。企業は、個人所有の端末を業務で利用することのメリットとリスクを、社員に対して適切に説明する必要が生じます。

2015 ~2016年度:BYOD発展期(アプリケーション/データ管理の時代)

個人の端末でセキュアな公私分離が実現し、業務アプリを本格利用する先進事例が登場。

これまでのBYODでは、個人の端末内のアプリケーションとデータを、個人用と業務用で分離することが難しく、利用上の制約がありました。この時期になると、個人所有のスマートデバイス上に業務用の環境を安全に構築する、公私分離技術を利用できるようになります。

公私分離技術を用いたソリューションは、海外では『デュアル・ペルソナ』あるいは『デュアル・アイデンティティ』ソリューションなどとも呼ばれ、2012年ごろから米国の通信事業者や仮想化技術ベンダーが取り組みを強化しています。この技術は、業務アプリケーション利用時の安全性を高めることができるため、スマートデバイスの本格的な業務利用を促進することが期待されています。

公私分離技術には、スマートデバイスの基本ソフト(OS)やアプリケーションへの仮想化技術の適用の仕方によって、複数の方式があります。そのため、適用可能な端末が制限されることや、モバイルアプリケーション配信管理(MAM)の構築が必要になるなど、仕組みが複雑になります。

2017年度以降:BYOD普及期(コンテキストアウェア型パーソナルネットワーク

の時代)
会社や個人が所有する端末やサービスを適材適所で活用する業務スタイルが実現

BYODの実現にあたっては、端末だけでなく、ネットワーク技術の進化も不可欠です。これまで、スマートデバイスで企業ネットワークに安全に接続する場合、一般的には仮想LANと呼ばれるネットワーク構築技術が利用されてきましたが、仮想LANを利用すると、個人のアプリケーションは利用できない場合がある、といった課題がありました。

この時期には、社員がいる場所や利用するアプリケーションなど、コンテキスト(状況)に合わせて柔軟にネットワークポリシーを適用できる、コンテキストアウェア※3型のパーソナルLANの構築が実現します。これにより、スマートデバイスを業務で用いる社員の利便性や満足度を下げることなく、適材適所でのスマートデバイスの業務利用と私的利用の使い分けができるようになると考えられます。

さらに、この技術をモバイルPCにも活用すれば、会社や個人が所有する端末とサービスをオフィスや外出先、自宅などの場所に縛られることなく、適材適所で活用して円滑に業務を遂行できるActivity Based Working(アクティビティ・ベース・ワーキング)※4を本格化でき、企業は社員の生産性向を図ったり、災害時等における事業の継続性を強化できるようになります。

この結果、BYODを採用する企業が拡大すれば、社員が個人で利用するさまざまな端末やサービスを業務で利用するBYO(Bring Your Own)の動きが一層加速するでしょう。もちろん、企業が所有し、社員に貸与するスマートデバイスやパソコン、サービスがなくなることはないでしょう。取り扱う情報の機密性やモバイル環境下での業務遂行の要否、さらにBYOによるコスト削減ができるかどうかに応じて、企業は社員に端末やサービスを貸与すべきか、BYOを採用すべきかを検討すべきです。いずれにせよ、BYODやBYOといった企業におけるIT活用のアプローチは、社員の生産性向上や企業の事業継続強化に貢献する手段の一つとして、市民権を得ると予想しています。

※2 コンシューマライゼーション:生活者のライフスタイルやワークスタイルに変革をもたらす価値が、企業側ではなく、生活者向け市場で生まれることを示す。
※3 コンテキストアウェア:ユーザの興味・関心や行動状況といったコンテキスト情報を推定する技術やそれらに関する概念を示す。
※4 Activity Based Working(アクティビティ・ベース・ワーキング):従来のようにオフィスの決められた席に座って仕事を行うのではなく、業務に応じて作業を行う場所や利用するIT資産などを柔軟に選択できる、新しいワークスタイルを示す概念。