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富士通、スマートデバイスでワークスタイルを変革する製品群を発売

ミドルウェア事業本部長の新田将人氏

 富士通株式会社は24日、スマートデバイスによるワークスタイル変革を支える情報活用ソフト計8製品を発売した。スマートデバイスを活用した情報システムを構築するための開発・実行基盤に加え、セキュリティ管理や現場から得られるデータの高速収集、オープンインターフェイスのデータベース、タイムリーなビッグデータ分析・予測などの製品を提供する。

 営業、販売、点検などさまざまな現場でスマートデバイスの利用が広がり、扱うデータの種類や入力手段も多様化している。スマートデバイスで現場から発生するデータを収集し、そのデータを情報システムで分析し、現場にフィードバックするリアルタイムな情報活用が求められている。

 例えば、スーパーマーケットで商品棚にスマートデバイスをかざすだけで、個人の趣向を反映した推奨商品や推奨レシピが表示されれば、顧客にとって来店が楽しくなる一方、店舗にとっては店内での動線や購入前検討商品の情報が得られるなどマーケティングに活用できる。

 こういったシステムの実現には、スマートデバイス上のアプリだけでなく、そこからリアルタイムにデータ収集・分析し、最適なレコメンデーションを送り返すサーバー側の仕組みが不可欠だと富士通は考える。

 そこで今回、(1)モバイルAPサーバー、(2)セキュリティソフト2種、(3)現場に最適な情報を表示するAR(拡張現実)サーバー、(4)スマートデバイスや遠隔地を結ぶ高速転送ソフト、(5)データを自在に加工・分析するソフト、(6)高性能・高信頼データベース、(7)バッチ処理性能の高速化ソフトを提供する。

今回の提供製品
Interstage Mobile Application Server V1の特長

 (1)モバイルAPサーバーの「Interstage Mobile Application Server V1」では、セキュアなスマートデバイスアプリを迅速に開発。スマートデバイスAPI(60種)、サーバーAPI(30種)が用意され、開発者はJavaScript・HTML5・CSS3などの標準言語で、Android・iOS・Windows 8など異なるプラットフォームの違いを意識することなく、従来の1/2ほどの工数でアプリを開発できるという。また、端末が不正な位置情報を示すなどあらかじめ定義した条件に合致した際に、データを消去する仕組みが自動で実装されるという。

 (2)のセキュリティソフト2種としては、「Systemwalker Desktop Patrol V15」と「Systemwalker Desktop Keeper V15」を提供。PCだけでなくスマートデバイスも含めてセキュリティのライフサイクル全体を一元管理できる。両端末のセキュリティ設定をはじめ、利用するデバイスの制御や操作ログによる監査までを一元的に管理して、セキュリティを向上できる。管理者は紛失・盗難時にリモートロックを行ったり、スマートデバイスの業務アプリを配布したり、配布したアプリの利用停止が行える。

Interstage AR Processing Server V1の特長

 (3)のARサーバー「Interstage AR Processing Server V1」では、ARマーカーにスマートデバイスのカメラをかざすだけで、利用者に応じて最適な情報を現物に重ね合わせて表示する、開発・実行・管理の機能を備えたAR統合基盤。内蔵カメラやタッチパネルの操作で現物に合わせて情報を登録できるオーサリング技術で、誰でも現場で作業手順やプロセスを追加できる。また、照度・距離・手ぶれに強い富士通研独自のARマーカー技術により、さまざまな環境での利用を実現した。

 ミドルウェア事業本部長の新田将人氏は、事例として同社沼津工場での実践を紹介。「各設備にARマーカーを装着し、点検結果・申し送り事項を共有することで作業漏れを防げた。現場の状況を動画で送付し事務所の専門家と共有、アドバイスを与えることで作業品質を向上できた」と説明した。

 この事例における現場の状況を動画で送付した際に貢献したのが、(4)のスマートデバイスや遠隔地を結ぶ高速転送ソフト「Interstage Information Integrator V11」だ。スマートデバイスやPCの仮想デスクトップでもコマ落ちせずに、海外などの遠隔地にある大容量ファイルのダウンロードも高速に行える。例として、スマートデバイスを使った仮想デスクトップでは画面表示速度が7倍に、カリフォルニアから東京への1GBのデータ転送は50分から50秒に60倍もの効果が上がったという。これらは特許出願中の低品質な回線でも独自の誤り訂正技術とUDP通信により、TCP/IPの高速化をソフトで実現する技術などで実現している。

Interstage Business Analytics Modeling Server V1の特長

 (5)のデータを自在に加工・分析するソフト「Interstage Business Analytics Modeling Server V1」では、ビッグデータの分析だけでなく、分析に必要なデータの収集・加工まで含めたプロセスを描けるのが特長。データの収集・加工から分析・予測、データ出力までの一連の操作を1つのフローで定義できる。約30種類のデータ収集・加工部品、200種類を超える分析シナリオを提供することで、分析に必要なデータの準備にかかる工数を従来の1/6に低減するという。「分析シナリオ部品を切り替えることで、現場の状況に合わせて分析手法を簡単に変更できるのもメリット」(新田氏)とのこと。

 (6)の高性能・高信頼データベース「Symfoware Server V12」は、PostgreSQLのインターフェイスを採用した製品。これにより、設計開発、データ統合、運用管理、BIなど多くの製品と連携できる。さらにほかのデータベースとの互換性も強化し、アプリ移行工数を従来比1/8に削減した。

 (7)のバッチ処理性能の高速化ソフト「Systemwalker Operation Manager V15」は、ジョブスケジュールとシステムの自動運転を実現する。同時かつ大量にオンデマンド型ジョブの起動が要求された場合も、同時実行数を一定に保つことでシステムにかかる負荷を軽減する。当日起動するジョブのスケジュールを判断・抽出してインメモリDB上で管理することで、バッチ数が1万本を超えるようなシステムでは、バッチジョブの処理時間を従来の半分以下に短縮できるという。

 企業におけるスマートデバイス業務活用状況は、2011年~2012年の1年間で約2倍に急伸。大企業ほど活用が進み、1000人以上の企業の半数がスマートデバイスを活用しているという調査結果がある。富士通においてもスマートデバイス関連商談数は急伸しており、2012年度実績で商談件数で4倍、受注件数で3倍になったという。

 事例として、医薬品卸のメディセオでは薬局へタブレットを配布して発注業務を簡易化しているほか、昭和シェル石油では系列サービスステーションにおいてタブレットを活用した新サービス(カード入会申し込み、商品販売)を提供していると紹介。また、農業現場でもスマートデバイスの普及は始まっており、時間や場所に拘束されない農作業の実現に貢献しているという。

 こうした商談でポイントとなるのが、「ビジネス変革に向けた活用が拡大していること、専用端末の置き換えが進展していること、BYOD対応のセキュリティ商談が増加していること、ICT未活用領域への適用が拡大していること」だと、総合商品戦略本部長の阪井洋之氏は語る。今回の製品群はそうしたニーズにワンストップに応えるものだと訴求した。

(川島 弘之)