インターネット/クラウドの最新潮流~PART04
霞が関クラウド・大手PaaSベンダーの動き
■【霞が関クラウド】2000超のシステムを国民視点で集約へ
政府主導の「霞が関クラウド構想」は、2009年6月に立ち上がった。その具体策として、総務省は2010年4月に「政府情報システムの整備の在り方に関する研究会最終報告書~政府共通プラットフォームの構築に向けて」を発表。バラバラに開発・運用している政府系システムを統一して、全体のITコストを引き下げる方針を明らかにした。
同省の調査によると、各府省が運用中のシステムは現在、本省・地方を含めて2059ある。これらの年間運用コストの合計は、約3900億円に上るという(図)。こうしたシステムをクラウド上で集約してシェアドサービス化すれば、大きなコスト削減効果を見込める。
図:政府情報システムの現状(出典:総務省) |
■【大手PaaSベンダーの動き】汎用技術を採用し企業ユーザーを争奪へ
クラウドサービスは、大きく言ってSaaS、PaaS、IaaSの3層に分けられる。このなかで昨今、関心が高まっているのはCPUやメモリーといったハードウェア資源に加えてOSやミドルウェア、開発・実行環境までを提供するPaaSだろう。
企業はPaaSを利用することで、自社でサーバーを所持することなく専用アプリケーションを構築できる。その一方で、ハードウェア資源のみを貸し出すIaaSと比べて運用管理の手間を抑えられる。ここでは、PaaSを提供する主要3社の動きと、新たなプレイヤーの登場について見ていきたい。
■クラウドネイティブはJava対応を急ぐ
2010年2月、マイクロソフトの「Windows Azure Platform」が正式にサービスインした。その最大の特徴は、Windows技術者であれば、既存スキルでアプリケーションを開発できること。さらに、.NETをベースに構築した既存アプリケーションであれば、大幅なコードの書き換えなしに、ほぼそのままPaaS環境に移行できる。こうしたメリットを武器に、後発とはいえ徐々にユーザー企業を増やしている。
先行するセールスフォース・ドットコム(SFDC)やグーグルも手をこまねいてはいない。誰もが使い慣れた汎用技術を積極的にサポートすることを宣言し、“ベンダーロックイン”を警戒する企業へのアピールを始めた。
SFDCの「Force.com」、グーグルの「Google App Engine(GAE)」はともに、新規開発以外には使いにくいという課題を抱えていた。Force.comは、Apexという独自の開発言語しか利用できなかった。
JavaやCといった汎用言語で開発した既存アプリケーションをForce.comに移行するには、コードを全面的に書き換えるほかない。加えて、Force.com上で開発したアプリケーションをオンプレミス環境に戻したり、別のクラウドに移植することは困難だった。
一方のGAEは、PythonとJavaによる開発が可能だ。しかし、企業ユーザーに馴染みの深い、オラクルのRDBを採用している Force.comに対して、GAEのDBはグーグルが独自開発した「Bigtable」。これが企業システムへの採用を阻む1つのハードルになっていた。アプリケーション開発時に、新たなスキルを身につけなければならないからである。