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インテル、“Software Defined”ビジョンなど企業向けの最新戦略を説明

 インテル株式会社は30日、「最新IT技術で可能となる企業変革の推進」と題し、クラウドやビッグデータに向けたインテルの戦略について説明する記者会見を開催した。

デバイス増につれて要求が増えるサーバーリソース

 会見の冒頭で、同社常務執行役の平野浩介氏は、「戦略的ITによる新しいビジネスのあり方」と書かれたスライドのタイトルを示し、「つまり『ITを使ってもっと儲けよう』という意味(笑)」と、くだけた表現でテーマを説明した。

 平野氏はまず、モバイルの普及によって、デバイスの数と同時に、対応するサーバーCPUの出荷も増えていることを指摘。また、IoTでさらにデバイスが増えること、SNSなどによってデータ量が大幅に増えていることを示して、「これをもうけ(ビジネス)につなげるには、膨大なコンピュータパワーが必要になる。いままでのインフラでは対応できない」と主張した。

インテル 常務執行役 平野浩介氏
モバイルデバイス数の伸びにつれてサーバーCPUの出荷も増えている

 ここでインテルの取り組みとして、自動車分野が紹介された。米Intelは米国時間5月29日付けで、コネクテッドカーと自動運転を対象にした、ハードウェアとソフトウェアによる「インテルIn-Vehicleソリューション」と投資の拡大、技術研究への取り組みを発表している。

 同社の中国におけるスマートトラフィック実験の例を挙げ、3万台のカメラの背後に1万台のゲートウェイが、さらにその背後に2500台のサーバーと650台のネットワークスイッチ、250台のストレージが必要になったと説明。さらに2016年までに、コネクテッドデバイスが190億台になると予測されており、データセンターリソースの需要が急増すると述べた。

自動車分野への取り組み
中国でのスマートトラフィック実験の例

 このようにインフラの処理するものが増えるときに、「従来型の、サーバーやストレージ、スイッチをそのまま増設するというやりかたでは、ニーズに対応しきれない」と平野氏は主張し、インテルのビジョンとして「Software Defined Infrastructure(SDI)」を示した。

リソースをより最適に利用するインテルのSDIのビジョン

 続いてインテル ビジネス・デベロップメント データセンター事業開発部 シニアスペシャリストの田口栄治氏が登壇した。

 田口氏はIntel自身のプライベートクラウド化について説明。72%のリソースを仮想化し、新しいコードのデプロイに要する時間が数分、サービスのプロビジョニングに要する時間が45分まで短縮。また、リソースの容量をグローバルで共有するようになってきているという。

 そして、「まだ足りないことがある」として、「人間が頭の中にあるキャパシティプランを元に台数を指定していること」と、「サーバーやストレージの台数単位でプールを指定していること。より細粒度な指定が望ましい」との2点を挙げた。

インテル ビジネス・デベロップメント データセンター事業開発部 シニアスペシャリストの田口栄治氏。手に持つのは、Xeon E7 v2のシリコンウェハ
Intel自身のプライベートクラウド化。
SDIで求められるデータセンター
クラウド型基盤の進化

 それをふまえ田口氏は、SDIの構成要素として、サーバーやストレージなどの「プール化された資源」、それを最適に適用する「プロビジョニング管理」、サービス要件にしたがって自動的にアプリケーションを配置する「サービスの保証」の3つを挙げた。

 そのためのインテルのアプローチとしては、より柔軟な「進化したリソースプール・アーキテクチャー」、ハードウェア基盤の情報をオーケストレーションソフトウェアに伝える「統合化された属性管理」、商用およびオープンソースによる最適化されたクラウドOS環境の「広範囲なエコシステムの形成」の3つを挙げた。

SDIの構成要素
SDIへのインテルのアプローチ

 そのひとつ、ストレージのリソースプールを“Software Defined”で利用するための、IDCフロンティアとのCephの評価実験が紹介された。Cephは、ブロックアクセスできる分散ストレージ。実験の結果、クラウドサービスの提供基盤として十分な性能を確保していると確認できたという。

IDCフロンティアとのCephによるSoftware Defined Storageの評価実験

各社の事例も紹介

 こうした取り組みについて、各社の事例も紹介された。ビッグデータについてスケールアップ型とスケールアウト(分散)型、クラウドについてメインフレームからの移行とSMB(中小企業)向けサービスと、4カテゴリの取り組みが各社から解説された。

 NTTデータグループからは、まず株式会社NTTデータ数理システムの中川慶一郎氏が、金融マーケット向けのTwitterセンチメント分析と、日経ボラティリティ・インデックスとの相関性を検定したことを紹介した。デスクトップクラスのCPUからXeon E7 v2に移行することで、約1000倍の処理スピードとなり、PDCAを多く回して分析できるようになったという。

 また、株式会社NTTデータグローバルソリューションズの青木聡氏は、インメモリデータベースのSAP HANAによるビッグデータ処理における、Xeon E7 v2の検証を紹介した。チップを変えるだけで処理時間が短縮されたほか、処理待ちが発生せず、必要なときは100%のリソースを使い切れるという結果が説明された。

 さらにインテルの田口氏が、株式会社野村総合研究所(NRI)のBOS(Business Oriented Solution)を紹介した。基幹業務システムでの、バッチ処理が終わらない問題や、従来のアーキテクチャではストリーミング処理が難しい問題などに対し、Xeon E7 v2などを使った超並列で疎結合のアーキテクチャによって、高速に処理するという。

NTTデータ数理システム 中川慶一郎氏
金融マーケット向けのTwitterセンチメント分析での、Xeon E7 v2の効果
NTTデータグローバルソリューションズ 青木聡氏
SAP HANAでのXeon E7 v2の効果。リソースを使い切れるようになったという
NRIのBOS(Business Oriented Solution)

 一方、業務システムの基幹バッチをHadoopによるスケールアウト構成で解決するソリューションを、株式会社ノーチラス・テクノロジーズの中田明氏が紹介した。Hadoopを使うことによりディスクI/Oのボトルネックを解決してCPUの性能を使い切れるという。その処理をコーディングするために同社が開発した、データフローを記述するとそこからJavaのプログラムを生成するAsakusa Frameworkを説明。九州電力での事例なども紹介した。

 インテルの田口氏はそのほかHadoopの事例として、PCフェーズ株式会社によるブックオフコーポレーションの顧客分析を紹介した。

ノーチラス・テクノロジーズ 中田明氏
Asakusa Frameworkの特徴
PCフェーズによるブックオフコーポレーションの顧客分析

 クラウドアーキテクチャの事例として、田口氏はファイルフォース株式会社の「fileforce」の事例を紹介した。fileforceは、自動タグ付けや検索エンジンなどを備えた企業向け文書管理で、クラウディアンの分散ストレージ(Intelも出資)を利用しているという。

 また、ミッションクリティカル分野における、メインフレームからインテルアーキテクチャへの移行としては、レッドハット株式会社の古舘正清氏が事例を紹介した。大規模な顧客としては、通信事業者や政府、金融機関などがインテルアーキテクチャとRed Hat Enterprise Linux(RHEL)に移行しているという。具体的な事例としては、日産自動車や大和証券、佐川急便グループ(SGシステム)の事例が紹介された。

 さらに、中小企業向けインフラの分野では、田口氏は大塚商会のHyper N-Packを紹介した。中小企業が仮想化とクラウドを利用するために、サーバーにHyper-Vを使ったアプリケーションごとの仮想マシンをキッティングし、クラウドによるバックアップを備えるという。

レッドハット 古舘正清氏
メインフレームから、インテルアーキテクチャとRHELへの移行
ファイルフォースの企業向け文書管理「fileforce」
大塚商会のHyper N-Pack

高橋 正和