ニュース
ネットアップ、「NetApp INSIGHT 2026」の新発表を解説――AIデータ基盤「AIDE」の一般提供や“地球上最速”ストレージ「Novus」など
2026年10月22日 06:30
米NetAppの日本法人であるネットアップ合同会社は、米国で9月26日~10月1日に開催した年次カンファレンス「NetApp INSIGHT 2026」での主な新発表について、報道向けに解説するメディア向け勉強会を、10月21日に開催した。
NetApp INSIGHT 2026のテーマは「Intelligent Data Infrastructure for the AI Era and Beyond」。これは、説明にあたったネットアップ合同会社 チーフテクノロジー エバンジェリストの神原豊彦氏によると、「AI時代、もしくはその先を支えていくためのデータ基盤はどうあるべきか、というテーマ」とのこと。今回のメディア向け勉強会でも、企業でのAIエージェントの活用やAI Factory(AIデータセンター)に向けたストレージソリューションが紹介された。
神原氏は、NetApp INSIGHT 2026におけるキーワードとして、企業内のデータを活用する「Agentic Enterprise」、クラウドでのデータ活用の「Cloud Without Borders」、AIデータセンターの「AI Factory」の3分野を紹介。さらに、これらすべてを含む製品ポートフォリオを表す「The NetApp Platform」とあわせ、4つのキーワードを紹介した。
Agentic Enterprise:社内のデータを横断してカタログ化しAIやアプリから利用できるようにする「AIDE」がGAに
まずは、企業内のデータを活用する「Agentic Enterprise」の分野だ。
企業の中では、さまざまな部門のさまざまな場所に、特にファイルなどの形でデータが散在している。「どこの会社に聞いても、誰がどこでどんなデータをどれだけ扱っているか、自信を持って答えられる会社には出会ったことがない」とユーモアまじりに神原氏は語る。
特にNetAppが主張するのが、複数あるAIのそれぞれのところにデータをコピーして持っていくのではなく、共通のデータをAIから参照させる「Bring AI to Your Data」だ。「データをコピーしていると、煩雑さとセキュリティリスクの温床になる」と神原氏は言う。
これを実現する技術として、「NetApp AI Data Engine(AIDE)」がGA(一般提供開始)となった。AIDEは2025年に発表されたソフトウェアソリューションだ。
AIDEでは、非構造化データ(データベース化されていないデータ)を対象に、NetAppや他社のファイルストレージに入っているデータをスキャン。アクセス権限やコンテキストなどを理解したうえで、ガバナンスを効かせられる形でメタデータとともにカタログ化する。その中から必要なものを、APIやMCPなどによってAIやアプリケーションから参照できるようにする。「すでに実際に、数社のAIサービスや解析アプリなどで、連携するソフトウェアも出てきている」(神原氏)。
Bring AI to Your Dataの技術の1つとして、DataPelago社を7月にNetAppが買収したことも神原氏は紹介した。SQLやSpark、Tableauなどさまざまなデータソースから、ETLのようにコピーするのではなく、データを元に置いたままクエリだけでデータ統合する技術だという。クエリをダイナミックに最適化するエンジンや、それを高速に実行するDataVMといった技術を特徴とし、「他社と比べて10倍以上速く、データをコピーしないので8割ぐらいコスト削減になる」(神原氏)とのことだ。
説明時点ではまだ買収した段階だが、「これを統合して、お客さまに新しい価値を届けたい」と神原氏は語った。
Cloud Without Borders:OCIやAzureでのクラウド機能強化、Nutanixとの提携も
次に、クラウドでのデータ活用の「Cloud Without Borders」だ。
NetAppは、オンプレミスからクラウドまでデータを統合管理するData Fabricというアーキテクチャを推進してきた。
NetApp INSIGHT 2026では、これにOracle Cloud Infrastructureで対応する「OCI NetApp Storage Service」が新しく発表された。
またMicrosoftのAzureについては、NetAppによるファイルストレージ機能「Azure NetApp Files」の強化が発表された。
まずHPCなどのワークロードに向けて、1ボリュームあたり80GB/sという一般的なスーパーコンピューターのストレージを上回るパフォーマンスを持つという「Large Volumes Breakthrough Mode」がGA(一般提供開始)となった。
また、ストレージを階層化して使用頻度の低いデータを自動的に移す単価の安いストレージ「Cool Access」も機能強化(GA)。Cool Accessからデータを呼び出す性能を強化するとともに、動的にデータ量を調整する機能も加わった。
もう1つ、Azure NetApp FilesがEntra IDのKerberosによるSMB認証に対応した(プレビュー)。
そのほか、仮想化環境の移行のニーズに応えて、Nutanixと提携することを4月に発表していたが、今回具体的な機能をプレビュー公開した。
企業が既存のNetAppストレージアレイを引き続き利用しながら、Nutanix AHVを仮想化プラットフォームとして採用できるようになった。
AI Factory:“地球上最速”をうたう「NetApp Novus」
「AI Factory」は、一般に「AIデータセンター」と呼ばれる分野だ。
そこで要求されるパフォーマンスについて、神原氏はスーパーコンピューター、特に国内最大規模の「富岳」との比較をまじえて説明した。
容量については、エクサバイトの容量で、さらに単一ネームスペースで数千億ファイルを扱うことが求められる。「富岳で同時に扱えるのが150万ファイルで、10万を超えると専用のチューニングを入れるという世界だったが、それを何桁も飛び越えている」(神原氏)。
スループット性能も、GPUあたり2GB/s×5万GPUとすると、100TB/sが求められる。「富岳のストレージが1.5TB/sで、その80倍近い性能を欲しがってる人が普通にいっぱいいるというのがAIデータセンターの世界」(神原氏)。
そのほか、AIデータセンターとともに話題にのぼる電力消費問題に対応した電力効率や、セキュアなマルチテナント、大規模クラスタを安定稼働させる制御技術も神原氏は挙げた。
この分野に向けてNetApp INSIGHT 2026で発表されたのが「NetApp Novus」だ。「Novus」は「新しい」「再生する」「生まれ変わる」といった意味を持つという。
NetApp Novusは、100TB/sのパフォーマンスをうたい、「The Fastest Storage on the Planet(地球上最速のストレージ)」を名乗っている。「これをアナウンスした後、競合の方々から、熱いメッセージをSNSでいただきました」と神原氏は苦笑した。
技術要素としては、ネットワークファイルシステムのパラレルNFS(pNFS)4.2の機能により、データを異なるストレージに分散して、サーバー(NFSクライアント)から並列に読み書きできるようにする。
さらに、ファイル一覧やアクセス権などを記録したメタデータが従来分散できずボトルネックになっていたのを、pNFS 4.2の「pNFS Lattice」機能により、分散した。pNFS Latticeは、PEAK:AIOとロスアラモス国立研究所などが開発したもので、神原氏は「NetAppが世界で最初に商用製品化した」と説明する。なおPEAK:AIOは、2026年9月に、NetAppによる買収が発表された。
こうした特徴があると同時に、pNFS Latticeを含むpNFSのドライバーはLinuxカーネルに標準で入っているため、ストレージにアクセスするサーバー(NFSクライアント)側は専用モジュールなしに利用でき、Linux上のさまざまなソフトウェアからアクセスできることも神原氏は強調。そして、分散したストレージシステムを1つに見せて高性能を実現していることを同氏はあらためて語った。













