InfiniBandなどで仮想化時代のI/Oボトルネックを解消する~メラノックスのデータセンター戦略


 メラノックス テクノロジーズ ジャパン株式会社(メラノックス)は13日、同社のデータセンター戦略を解説する記者説明会を開催した。

 米Mellanoxは、InfiniBandやEthernetなどのインターコネクト技術・製品を手がけるベンダーだ。もともとは、InfiniBandの利用率が高いHPC分野で実績を挙げてきた企業だが、現在では、その業容はデータセンター全般に広がっている。

 この大きなポイントは、インターコネクトのボトルネックにあるという。CPUのマルチコア化の進展や搭載メモリの大容量化により、仮想化によるサーバー環境の集約が加速度的に進みつつあり、I/Oについても高い性能が要求されるようになったため、データセンター内のサーバーには、LANへつなぐためのEthernetポートや、ストレージを接続するためのFC SANポートなど多くのケーブルが接続されるようになった。

ジェネラルマネージャの津村英樹氏

 従来型のソリューションでI/O性能を増やすためにはポートを増やすのが手っ取り早いため、「1サーバーからは、管理用も含めると10本のケーブルが出ているといわれている」(ジェネラルマネージャの津村英樹氏)状況がデータセンターではふつうに見られるとのこと。こんな状況では、トラブルが発生した際にケーブルを特定し、それを抜き挿しするだけでも大変な手間を伴うだろうということは、想像に難くない。

 従って、複雑な配線を単純化したいというニーズは常にあり、その面で広帯域、低遅延のInfiniBandに対する期待が大きくなっている。実際に、多数のケーブルをInfiniBandで統合すれば、冗長化を考えてもわずか2本で済んでしまうという。もちろん、統合した結果スループットが遅くなってしまっては意味がないわけだが、Mellanoxでは業界で唯一、最大56GbpsのFDR(Fourteen Data Rate) InfiniBandを提供しており、この面では問題がない。津村氏によれば、「実際、引き合いのほとんどが、複雑、膨大になっているケーブルを減らせないか、というもの」(津村氏)だそうで、これが実需として現れてきている。

 それにケーブルが減らせるということは、同時にその接続先であるHBA(ホストバスアダプタ)やスイッチを減らせることでもあり、管理の負荷も軽減されるため、津村氏が「サーバー統合でコストを半減できるといわれているが、I/O統合でさらに半減できる」と述べるように、さらなるコスト削減が期待できるわけだ。

 またストレージの世界ではSSDの登場によって劇的にパフォーマンスが向上したが、この性能を生かすためにもインターコネクトのパフォーマンスを上げることが求められるようになった。Mellanox ワールドワイドセールス担当副社長のマーク・サルツバーグ氏は、「プライスパフォーマンスという点では、FCに将来が考える人も増えた。未来にあるべきデータセンターの姿を考えると、高速・広帯域なInfiniBandなどによりインターコネクトのボトルネックを解消できる当社のソリューションは、ますます期待を持って受け入れられるだろう」と述べる。


Mellanox ワールドワイドセールス担当副社長のマーク・サルツバーグ氏ストレージの分野でもInfiniBandによる強みを発揮できるという

 ただし、サーバー環境を仮想化によって集約し、さらにI/Oを統合する場合には、仮想化によるオーバーヘッドの問題が常につきまとってくる。せっかく高速なインターコネクトを利用できるのに、その性能を十分に発揮できないのであれば、効果も半減してしまう。そこでメラノックスではSR-IOV(Single Root IO Virtualization)やMicrosoft SMB Direct(SMB over RDMA)といった技術を積極的に採用し、その問題に対処してきた。

 すでに提供されているKVMへのSR-IOVドライバに加えて、9月13日にはVMware ESXi 5.1向けのSR-IOVドライバの提供を発表。これによって、FDR InfiniBandを利用するとvSphere VMFS上で最大5GB/秒、19万IOPSの性能を発揮できるようになった。またWindows Server(Hyper-V)についても、最新のWindows Server 2012でSMB Directに対応し、マルチ環境のサポート体制が整ったという。

 津村氏は、「Hyper-Vはライセンス費用が(OS以外に追加で)かからないメリットがあるものの、I/Oが弱いせいで大規模クラウドで採用されていなかった。しかしSMB Directへの対応によりそこが改善されたため、これからは導入が進んでくるのではないか。なお、SMB DirectにおいてMicrosoftが当社製品を指定している点も、大きく強調できる点だろう」と述べ、今後のビジネスの進展について大きな期待を示した。


SR-IOVによりハードウェアベースのI/O仮想化を提供Windows Server 2012のSMB Directに対応

 こうした自信の裏付けには、Mellanoxの業績が非常に好調に推移している点がある。Mellanoxの2011年度の売上高は2億5930万ドルだが、「2012年度はストレージ、Web 2.0、クラウドなど、HPC以外のさまざまな分野での需要の高まりを受け、5億ドルを超える売り上げが期待されている」(ザルツバーグ氏)とのことで、同氏はInfiniBandを中心とした同社の技術がすでにニッチな市場を抜けたとの認識を示す。

 ただし、ソリューション化としては1社だけでは十分なものが提供できるとはいえない。そのため、ザルツバーグ氏は「チャネルパートナーについての投資を拡充しようとしているし、エコシステム、特にISVやVAR(付加価値再販業者)との関係を充実していく必要がある。日本市場でも取り組みを進めているところだ」と、今後の方向性を語った。

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