IPv4サイトをしばし延命、AkamaiがIPv6透過接続サービスを年内開始


 米Akamai Technologiesは、同社がグローバル規模で運用しているコンテンツ配信ネットワーク(CDN)において、IPv6対応サービスを年内にも開始する。データセンターなどにあるウェブサーバーがIPv4のままでも、IPv6接続のエンドユーザーから利用できるようになるという。

 日本法人のアカマイ・テクノロジーズ合同会社が17日に開催した報道関係者向けの説明会において、Akamaiの共同創業者兼チーフサイエンティストであるTom Leighton博士が、IPv4アドレス枯渇にともなう課題や同社の対応について説明した。

Akamai Technologies共同創業者兼チーフサイエンティストのTom Leighton博士アカマイ・テクノロジーズ合同会社の小俣修一職務執行者社長

 AkamaiのCDNは、インターネットを構成している各ネットワーク上にエッジサーバーを配置し、エンドユーザーが自分に近いエッジサーバーに接続するよう振り分けることで、データセンターなどにあるオリジンサーバーのトラフィック負荷を軽減するとともに、ウェブサイトのパフォーマンスを向上させるものだ。エッジサーバーは現在、72カ国・650都市に8万4000以上を配置。それらの間はAkamaiの独自プロトコルで高速接続されているという。

 IPv4アドレスの枯渇時を見据え、Akamaiが予定しているのは、エンドユーザーからIPv6による接続要求があった場合にも、IPv4で運用されているオリジンサーバーへの接続を透過的に行えるようにする機能だ。もちろん、従来どおりのIPv4による接続も可能だ。これにより、オリジンサーバーをIPv6化することなく、IPv4/IPv6いずれのエンドユーザーにも並行してコンテンツを提供できることになる。

AkamaiのIPv6対応方針IPv6対応サービスの仕組み

 Akamaiでは、2020年までに世界のインターネット人口は40億人に達し、使用されるIPアドレスも50億個に増加するとみている。しかし、IPv4のアドレス空間は約43億個しかないことから、IPv6への移行は避けて通れないと説明する。

 IPv4アドレスについては2月3日、グローバルでIPアドレス資源を管理しているIANA(Internet Assigned Numbers Authority)に残っていた“中央在庫”が枯渇。さらに今後は、世界5地域の地域インターネットレジストリ(RIR)に残っている在庫も2012年に枯渇するとみられているという。

 そうなると、IPv6アドレスしか割り当てられないサーバーや端末が出てくることになる。しかし、Leighton博士によると、現状でIPv6に対応しているサイトはまだごくわずか。一方で、IPv4にしか対応していないOSなど既存のレガシーなシステムが多数存在し、これらがネットワークから一掃されるまでには10年かかるとみている。その間はIPv4/IPv6が混在する期間が続くことになる。

 このようなIPv4/IPv6移行期には、ウェブサイトやエンドユーザー環境だけでなく、インターネットを構成する各ネットワーク自体もIPv4とIPv6が混在する環境になる。Leighton博士は、それらの接続ポイントに置かれるキャリアグレードNATもボトルネックになり、パフォーマンスが落ちると指摘する。これに対してAkamaiのCDNネットワークは独自プロトコルのため、エッジサーバー間はIPv4/IPv6どちらでも高速に接続できるとしている。

2020年までのインターネット利用状況予測IPv4/IPv6が混在する移行期のネットワークの状態

 なお、AkamaiにおけるIPv6対応のいくつかの機能は現在、限定された事業者に対して試験提供中だ。今後、IPv6の大規模実験「World IPv6 Day」が6月8日に予定されており、これにAkamaiも参加するが、アカマイ・テクノロジーズの小俣修一社長によれば、それまでにはIPv6対応サービスの詳細を発表するとともに、2011年中にはサービスとして提供開始する予定だとしている。

 Leighton博士は、AkamaiのIPv6透過サービスにを利用することで、事業者が直ちにオリジンサーバーやウェブアプリケーションをIPv6に移行する必要がなくなるとしながらも、「ただし、10年後にはIPv6化する必要がある。その移行を先延ばしするすもの」と表現した。

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