【Cloudforce 2010 基調講演】真のクラウドはソフトウェアの民主化だ~米salesforce.com・ベニオフCEO


 株式会社セールスフォース・ドットコムは、10月5日から2日間にわたり、東京・芝公園のザ・プリンス パークタワー東京において、「Cloudforce 2010 Japan」を開催。米salesforce.comのマーク・ベニオフ会長兼CEOが、「Welcome to Real Cloud Success!」をテーマに講演した。

 

政府も大企業もスタートアップ企業も、同じシステムを使えるのがクラウド

米salesforce.comのマーク・ベニオフ会長兼CEO

 ベニオフCEOは、最新の実例を交えて「真のクラウドコンピューティング」について説明した。

 ベニオフCEOは、基調講演のなかで、「クラウドは民主化したシステムである」として、「スタートアップの企業、中堅企業、大企業でも、官公庁でも、すべてが同じクラウドを使えることができる。われわれは、すべての人が使えるクラウドのためにさまざまな製品を用意してきた」と切り出し、「セールスフォース・ドットコムは、日本では10年にわたる活動を行ってきた。創業当時に話を聞いてくれた人は、広い会場を用意したのにも関わらず、わずか2人しかいなかったが、今日は数千人が話を聞いている。しかも、今日だけではすべての人に話を聞いてもらえることができずに明日も同じ話をすることになっている。クラウドによって、世の中は大きく変わっている。それはクラウドが大きな効率化をもたらすからだ」などとした。

 また、クラウド・コンピューティングは、環境効率が最も高く、従来型ソフトウェアと比較して、90%以上エネルギー消費量が少ないなどとし、「クラウドを積極的に利用している日本は、その点でも環境に貢献している」と語った。

スタートアップの企業でも大企業でも公庁でも、すべてが同じクラウドを使える環境効率が高いのもクラウドの特徴
NTT Comの海野忍副社長

 さらに、Platform as a Service(PaaS)という言葉を作ったのがsalesforce.comであるとしながら、「われわれはハードも、ソフトも売っていない。そして、お客さまに対して、アップグレードをしてくださいとは言っていない。クラウドは、そうしたものでなくてはならない」と主張。

 「しかし、偽物のクラウド、ゴーストクラウドがある。それは、効率が悪く、ソフトウェアの民主化を行わず、経済性が低い。クラウドであるのに、ハードを購入しろ、ソフトを購入しろということをいうケースもその一例だ。一体、本当のクラウドとは何かということを考えてほしい」などとした。

 また、「今日は新たなニュースを発表する」として、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)との提携により、東京に新たなデータセンターを設置することを正式に公表。ゲストとして登場したNTT Comの海野忍副社長は、「salesforce.comからは、厳しいリクワイヤメントがある。それに耐えうるデータセンターを提供する。ハード、ソフトを買ってもらうのは偽物のクラウドという話があったが、ネットワークを使ってもらうのは正しいクラウドだと認識している」などとした。


効率の悪い偽物のクラウドには注意NTT Comとの協業で、東京にデータセンターを設置する
前総務大臣の原口一博氏
「Cloud 2」のビジョンのもと、さまざまなサービスを提供する

 さらに、ベニオフCEOが「日本のビジョンを知るために追っかけている」とする、前総務大臣の原口一博氏が登場。ゲストとして登壇した原口氏は、「韓国ではなく、中国ではなく、日本にデータセンターがあるということは、日本の経済発展のためにも大きな意味がある。salesforce.comの今回の決断に感謝したい」としたほか、「政府では、2015年までに光の道を作ろうとしている。ICTによって運輸、農業、すべの産業の生産性を3倍にあげる。その中心になるのがクラウドである」などとした。

 さらに、クラウドの世界が「Cloud 2」へと突入していることを示しながら、マーケティング&アライアンス担当のジョージ・フーEVPが、発表したばかりのChatter 2について説明。「Chatterのソーシャル機能、モバイル機能、リアルタイム機能を活用できるようにするため、すべてのアプリケーションのアーキテクチャを再構築した。すでに22%の生産性をあげることができたという声があるが、それ以上の新たなレベルの生産性へと高めることができる。実際に使ってもらうと、そのよさがわかる」などとした。

 Chatter 2は、2010年10月に予定されているWinter'11リリースとして提供される。

 また、日本法人の田崎純一郎氏が、33世代目となる最新のSales Cloudと、Chatter 2を、iPadやiPhoneを用いながらデモンストレーション。「社内のコラボレーション、競合情報、国際的なコラボレーションが可能になる。1月にはAndroid対応も行われる」などとした。


 

顧客も続々登壇、導入による効果を強調

楽天の小林正忠取締役 常務執行役員 ECBU副担当役員

 楽天の小林正忠取締役 常務執行役員 ECBU副担当役員は、同社がセールスフォースを導入した実績をあげ、「セールスフォースでは、中国語に簡単にシフトでき、すぐに導入ができる。海外展開の際にも効果が得られる」などとしたほか、中外製薬の永井秀明執行役員は、「患者がこれまでどんな問い合わせがあったのかといった履歴などを管理するものとしてセールスフォースを採用した。初期投資が半分、開発期間が3分の1で済んだ。的確な回答をできるようになった」などとした。

 また、コナミスポーツ&ライフの東矢寿人氏は、「レッスンとともに、ユニフォームの販売で情報を共有できるシステムを活用。1年の開発予定だったものが5か月で開発が完了した」と語った。


中外製薬の永井秀明執行役員コナミスポーツ&ライフの東矢寿人氏

 一方、Services Cloud 2についても説明。コールセンターにおいては、50%以上のデータが共有されていないことを示しながら、salesforce.comのチーフ・マーケティング・オフィサー(CMO) ケンドール・コリンズ氏は、「Services Cloud 2では、いま顧客で何が起こっているのかを部門を越えるコラボレーションによって実現できる」などと強調した。

 このほか、Seesmicのルウィーク・レミュアーCEO、CAテクノロジーズのブライアン・ベル シニアバイスプレジデント、シナジーマーケティングの谷井等社長が、それぞれセールスフォースで利用できるアプリケーションを紹介。谷井社長は、「このほど戦略的な業務・資本提携を結んだ。Force.comプラットフォームを基盤とする新たなクラウドサービスの開発を支援する。Synagy!LEAD on Force.comを、Salesforce CRMと完全に統合したマーケティンクサービスとして提供する」とした。

Seesmicのルウィーク・レミュアーCEO米CAテクノロジーズ プロジェクト&ポートフォリオ・マネジメントBU シニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーのブライアン・ベル氏(右)、シナジーマーケティングの谷井等社長(左)

 ベニオフCEOは、「エンタープライズシステムはもっと理解しやすく、簡単に構築でき、スピードも速くてはならなくてはならなかった。新しいレベルの機能をマルチテナント環境で、セキュリティを確保できたものである。米国、シンガポール、東京のデータセンターのいずれもが選択できる。シスコシステムズからスイッチを買う必要や、デルからPCを買う必要がない。セキュリティを検査する必要もない。インフラにフォーカスせず、ハードやネットワークの専門家になる必要はない。みなさんは、仕事に集中し、ユーザーのために仕事をしてほしい。それをsalesforce.comが支援する。真のクラウドと提供できるのは当社だけである。これは重要なメッセージである」と語った。

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