Enterprise Watch
連載バックナンバー
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年

中小企業市場を開拓せよ!―“ITの原野”に挑むベンダーたち―

第七回・企業イメージ是正に全力を注ぐ―日本オラクル


 これまでハードベンダーの中堅中小企業市場向け取り組みを紹介してきたが、こうした分野の取り組みを強化しているのは、ハードベンダーだけではない。ソフトベンダーも積極的に市場開拓を進めている。

 「4000社の中堅企業に当社が直接アクセスをとった成果が見え始めてきた」―日本オラクル株式会社(以下、日本オラクル)では、2004年から中堅企業向け施策を大きく変更した。

 これは国のIT施策が中堅・中小企業を対象としたものが増えているといった背景に加え、「日本オラクルという企業にどういうイメージをもっているのかユーザー調査を行ったところ、『ライセンスが高い』、『使いにくい』、『データベースメーカーというイメージが強く、アプリケーションサーバーを出していることは知らなかった』といった否定的な意見が多かった。中堅・中小企業に限らず、イメージを変えていかないとまずいという認識を持ったことが要因のひとつとなっている」(日本オラクルの執行役員 クロスインダストリー統括本部長 三澤智光氏)ためだという。

 イメージを変えていくために、日本オラクルでは直接エンドユーザーとコンタクトを取り、日本オラクル側のメッセージを伝え、ユーザーの声を真摯(しんし)に受け止める機会を作っていった。この成果が中堅企業向けビジネスでも着実に出ているという。


ユーザーに対して直接アクセスできる体制へ変更

日本オラクルの執行役員 クロスインダストリー統括本部長 三澤智光氏
 パートナー経由での販売を行っている日本オラクルにとって、中堅・中小企業ユーザーと直接アクセスする機会を作るためには、社内体制を大きく変える必要があった。

 社内体制変更の象徴となったのが、クロスインダストリー統括本部である。この統括本部を指揮する三澤統括本部長はその意味を次のように説明する。

 「大改革を2003年の2月からスタートし、2004年6月に完成した。象徴となるクロスインダストリー統括本部は、対中堅企業向け施策を実践する部署で、もともと他部署に配置されていた人員を集めて結成している。この組織こそ、日本オラクルが本気で中堅企業市場に取り組む、本気を象徴する部隊となっている」

 この改革のもと、進められたのがエンドユーザーとダイレクトでアクセスできる体制を作ることであった。コールセンター「Oracle Direct」では、これまでのようにパートナーを介さず、ユーザーと日本オラクルが直接やり取りすることが前提だ。

 これは、「ユーザーが問い合わせをしたいと思っても、営業担当者がつかまらないといったことをなくし、日本オラクルからのメッセージを直接届けるのが狙い」(三澤統括本部長)という。

 直接ユーザーとのコンタクトをとれば、「最初は罵詈雑言を浴びることになる」が、それでも日本オラクルからの正しい情報を伝えることが必要だという認識のもと進められている。

 また、ターゲットとして売上高が300億円~3000億円の企業4000社をピックアップし、日本オラクル製品を使っているかどうかにかかわらず、顧客訪問をするという試みを行っている。

 「当社から直接アポイントをとると、10件中、9件は面談をしてもらえる」(三澤統括本部長)というブランド力が大きな強み。そこで出てくる、ユーザーの悩みを聞いていくことで、実際にビジネスに派生するケースも出てきている。

 「売上高が1000億円以上の企業となると、コンサルタントを入れてITの見直しを行ったことはあるものの、思ったほど成果があがっていないという場合が多い。そこで当社が、最先端技術にのっとってアドバイスをし、問題解決に導いていく」

 例えばサーバー統合の場合、日本オラクルがその分野のプロのスタッフを連れて行くことで、それまでのコンサルティングでは解決できなかった問題の解消につなげていけるという。

 またこうして解決していった事例のうち、要望が多いリ・ホスト、サーバー統合といったものについては、ほかの顧客にも応用できるソリューションと成り得る。

 さらに、このような取り組みを行った結果、「上流コンサルもして欲しい」というリクエストを受けることもあるなど、順調にビジネスが回転し始めている、と三澤統括本部長は説明した。


2005年は「安い・早い・簡単」であることを認知してもらうために全力を注ぐ

 日本オラクルでは、こうした生の声をユーザーに直接発信できる組織を作るとともに、パートナーとの関係の見直しも行った。

 「中堅企業すべてに日本オラクルが製品をそのままで販売できるわけではない。ソフト開発会社や、システムインテグレーターとの協業も重要な課題。そのために、従来はリセラーを前提としていたパートナー組織ではない、リセール権を持たないパートナー組織を構築した」(三澤統括本部長)

 この一環としては、地図情報システムなど日本オラクルが開発したアプリケーションを提供し、ソリューションを構築する支援を進めている。

 こうしてユーザーへのアクセス、パートナー制度などの見直しが進んでいる2005年、日本オラクルが新たに取り組まなければならないこととしているのが、「日本オラクル製品は、決して高いものではない。実は安い・早い・簡単を実現している製品であることを多くの人に知ってもらう」ことだという。「安い」ということでいえば、日本オラクルのデータベースは高価で、マイクロソフト製品は安価というイメージを抱いている人が多いとのことだが、「例えばエントリーレベルのデータベース製品では、昨年から、中小企業でも利用できる製品であるStandard Edition Oneを投入したことで、マイクロソフト製品以上に安くお求めいただけるようになった。しかし、この事実を認識している人があまりに少ない」と三澤統括本部長は嘆く。

 マイクロソフト製品というと、SQL Serverを思い浮かべるが、「SQL Serverはもちろん、場合によってはAccessよりも安価になっている」と三澤統括本部長は指摘する。

 実際に、Oracle Database 10g Standard Edition Oneの価格は9万7650円からで、イメージよりもずいぶん安価であることは確かだ。

 また、ソースネクストと組んで、1980円で購入できるOracle JDeveloper 10g 1Year Limitedも用意した。「決して、日本オラクル製品は高くないのだということを徹底してアピールしていく」(三澤統括本部長)ことが今年の目標のひとつだ。

 これまで中堅企業向け営業はほとんどやってこなかったために、実績が出れば前年を大きく上回る売り上げとなることも大きい。

 「前年比3割増は決して難しくない。やればできる市場だ」(同統括本部長)として、さらに積極的に市場開拓を進めていく計画だ。



URL
  日本オラクル株式会社
  http://www.oracle.co.jp/

関連記事
  ・ 第一回・なぜ、ベンダーは中小企業を目指すのか(2005/01/05)
  ・ 第二回・全社平均を上回る成長率を実現する―日本IBM(2005/01/12)
  ・ 第三回・中小企業にも直販モデルで挑む―デル(2005/01/19)
  ・ 第四回・販売店強化こそ中小企業市場開拓の要―NEC(2005/01/26)
  ・ 第五回・Webとチャネル販売の2本柱で事業拡大―日本HP(2005/02/02)
  ・ 第六回・オープン時代の新しい定番作りを推進―富士通(2005/02/09)


( 三浦 優子 )
2005/02/16 00:00

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.