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中小企業市場を開拓せよ!―“ITの原野”に挑むベンダーたち―

第六回・オープン時代の新しい定番作りを推進―富士通


 オフコン(オフィスコンピュータ)時代から培ってきた中小企業向けソリューションをオープン時代となってどう構築すべきか―富士通が現在取り組んでいる中小企業向けの取り組みを一口で説明するとこうなる。

 ソリューションが定番化されていたオフコンに比べ、現在のオープンシステムはサーバー、周辺機器、アプリケーション、ミドルウェアなどの選択に自由度が高いものの、オフコン時代のような「定番」が作りにくい。だが、中小企業ユーザーにとっては、ベンダーが、「オープン時代の新しい定番」を提示してくれた方がソリューションの選択がしやすい。

 このオープン時代の新しい定番作りこそ、ここ数年、富士通が中小企業向けビジネスで進めてきたものなのだ。


オープンシステム時代の新たな販売パートナーとの関係を模索

経営執行役 中村巧 パートナービジネス本部長
 富士通の中小企業向けソリューションとして、忘れることができないのがオフコン「Kシリーズ」だ。中小企業ユーザーからも高い人気を誇った製品だけに、オープンシステムが当然のこととなっている現在でも、「Kシリーズでのノウハウは重要な資産だ」(経営執行役 中村巧 パートナービジネス本部長)と社内でも認識されている。

 だが、オープンシステムとなればオフコン時代とはまったく異なるノウハウが必要となる場面も当然出てくる。象徴的なのが販売を担当するパートナー企業と富士通の関係であった。オフコンの場合、ハードウェア中心であり、販売パートナーが販売する製品は富士通製品のみというケースがほとんどであった。

 しかし、オープンとなってハード、ソフトが分離され、販売パートナーも富士通専業ではなくマルチベンダーで、システムインテグレーションを担当する企業が増えた。

 そのため、「販売を担当してくれる企業は、一緒にビジネスをしてくれるパートナーなのだという認識のもと、2004年7月から販売パートナーを担当する部署の名前をパートナービジネス本部へと改称した。実は富士通の長い歴史の中で、パートナーという名前が入った部署が誕生したのは初めてのこととなる」(中村本部長)という変更も実施している。

 このパートナービジネス本部には、営業、SE支援、マーケティングという三つの部隊が集合し、販売パートナー向け機能がすべて集結した組織となっている。

 ここ数年、富士通ではオフコン時代の販売パートナーとの関係見直しを進めていた。その理由こそ、オープンシステム時代の新しい販売パートナーとの関係作りを実現するためのものだった。


TRIOLEを中堅企業にも適応しアプリケーションセット拡大

パートナービジネス本部 堀切達也本部長代理
 販売パートナーが中堅企業向けビジネスを迅速に展開することを狙い策定したのが、大企業向けシステムからスタートしたIT基盤“TRIOLE(トリオーレ)”を中小企業でも活用できるよう、「中堅企業向けTRIOLE」を作ったことだ。

 TRIOLEは、なんでも組み合わせが可能というオープンシステム時代に、あえて標準的なミドルウェア、アプリケーションなどを組み合わせることで、システムを導入しやすくすることを狙いとして作られた。

 「大企業向けで実績ができたことから、これを中堅企業にも適応していくこととなった」(パートナービジネス本部 堀切達也本部長代理)

 さらにTRIOLEにパートナー企業が開発したアプリケーションを組み合わせていくための支援プログラム「パートナーアリーナ」を構築。すでに昨年6月の時点で11社が賛同しており、これをさらに増強していく計画だ。

 「アプリケーションとしては、富士通自身が開発したものに加え、PCA、OBCといったベンダーの勘定系アプリケーションや、ディサークル、サイボウズといったベンダーのアプリケーションもそろっており、パートナーにとって販売しやすい環境を整えた」(堀切本部長代理)


商談の取り付けやトップセールスできる人材育成の研修も実施

 また、販売パートナーの商談を増やしていくために富士通自身が中堅企業に電話でアポイントを取り、実際には販売パートナーが出向いてソリューションの説明を行うという試みも行っている。地方の販売パートナーの場合、一日に10件の顧客のもとを回ることは簡単ではない。そこで、少しでも商談の件数を増やすことができるよう、富士通が協力してこの取り組みを行っているという。

 「月間で9000件程度のテレコールを行っている。営業を行う際には、最初の面談の約束を取り付けるのが容易ではない。富士通自身がテレコールすることで、最初のアポイントを取り付けやすくなる」(中村本部長)

 また、販売パートナーへも、面談を取り付けた後のフォローとなる施策を実施している。

 「中堅企業となれば、すでになんらかのコンピュータが導入されている。そこで新しいものを勧めるというより、経営者に対し経営上の問題点をアドバイスし、アプローチしていく必要がある。そこで販売パートナーに、経営者向け商談ができる実力をもってもらう必要があるので、トップセールスのための訓練を開始した」(中村本部長)

 10月に実施した研修は販売パートナーからも好評を得た。今後は成果が出ているのか、研修後のフォローもあわせて行い、トップセールスができる人材作りを徹底させていく。

 こうした成果から、2005年度上期には中堅企業向けビジネスは対前年比で2けた増となる程度の伸びを見せた。これを通期では12%増とすることを目指して営業活動が進められている。

 「実現のための施策はいろいろと打った。これが機能していけば、この目標は達成できる。さらに2005年度には施策の内容も、実績も充実させていきたい」と中村本部長は意欲を見せている。



URL
  富士通株式会社
  http://jp.fujitsu.com/

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( 三浦 優子 )
2005/02/09 00:05

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