Enterprise Watch
連載バックナンバー
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年

中小企業市場を開拓せよ!―“ITの原野”に挑むベンダーたち―

第五回・Webとチャネル販売の2本柱で事業拡大―日本HP


 「当社の売り上げで見ると、SMB市場向けのPCビジネスは、前年比約70%増を達成。エンタープライズ市場でのPCビジネスの伸び率の2倍を記録している」―日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)では、中小企業市場に大きな自信を見せている。以前から中小企業ユーザーを獲得してきたという自負に加え、同社の売り上げを見ても、着実に成果が出てきているからである。この要因となっているのが、Webを使った直接販売「HP Directplus」の存在だ。同社では販売パートナーとの協業と、Web直販の2本立て体制により、中小企業ユーザー拡大を進めている。


ターゲット別組織体制でSMBへアプローチ

営業統括 コマーシャルビジネス統括本部 山下淳一統括本部長
 日本HPでは、「2004年以降、急に中小企業向け施策を強化したというつもりはない」と断言する。中小企業市場に対しては、「以前から多数の中小企業ユーザーを持っていた実績がある」というのだ。

 ただHPでは、ワールドワイドレベルで、2004年5月に「コマーシャルビジネス統括本部」という組織を立ち上げた。これまでは、セールス/マーケティングの事業部を製品区分ごとに分けていたのだが、製品ではなく、ユーザーニーズに焦点をあわせるべく組織を変化させ、中小企業だけでなく、エンタープライズ、公共、コンシューマなどターゲットユーザーにあわせた体制へ組み換えたのである。こうしたこともあって、「中小企業向けビジネスへの注力が増したように見える」という側面があるのかもしれない。

 山下統括本部長も、「中小企業ユーザー向けビジネスを積極的に展開していかなければならないという意識が高まったということはいえるのではないか」という。

 ちなみに、日本HPの「中小企業」とは、同社自身の営業がアプローチしている、いわゆる“直販”、以外のユーザーを指す。そのため、かなり企業規模の大きなユーザーであっても中小企業というセグメントに入ってくる企業も出てくる。

 だが直販の場合は、ユーザーが製品単体ではなくソリューションを求める傾向にあることから、業種別営業体制を採っているのに比べ、中小企業向け営業では業種ごとのソリューションよりも、コスト効果の高い製品を要求する声が高くなるなど、ソリューション以外の点が重視される。こうしたユーザーニーズに合致した企業を中小企業としてカウントしているわけだ。

 この中小企業向け施策の中で、大きな伸びを見せているのがWeb直販のHP Directplusだ。すでにスタートしたのは5年以上前となるが、その時点からメインターゲットを中小企業ユーザーと定めていた。

 扱っている商品は、各種PCはもちろん、コンシューマ向けのフォトプリンタから、エンタープライズユーザーが利用するIAサーバーまで幅広い。

 「競合他社のWeb直販で、これだけ幅広いラインアップになっている企業はほかにはない。このカバレージの広さが、他社にはない特徴のひとつといえるのではないか」(山下統括本部長)

 価格重視のユーザーが多いことから、価格面での割安さを前面に出していることはもちろんだが、もうひとつの大きな特徴が「5営業日で商品をユーザーに届ける」(同本部長)という点である。

 これは日本に工場をもっているからこそ実現できるサービスで、「“お届けまでに大体7日くらいかかります”というのと、“7日でお届けします”と言い切ることができるのでは、ユーザーの印象はまったく異なる」という。


Web直販とパートナービジネスで、さらなるシェア拡大に意欲

 HP Directplusによって売り上げを伸ばしているというと、同社の中小企業向けビジネスがWeb直販だけを検討しているように思われてしまうかもしれないが、Web直販とともに販売パートナー経由のビジネス拡大を図っている点も、日本HPの特徴となっている。

 「将来的にはそういうユーザーも減っていくのかもしれないが、現段階ではベンダーのWebで直接商品を購入することに抵抗を感じているユーザーも多い。パートナー経由の販売なしには、ビジネスが進まない面がいまだにある」(山下統括本部長)

 実はDirectplusがスタートした5年前の段階では、ターゲットとしていたのはITリテラシーの高いユーザーであった。そのため日本HPでは、「きめ細かいサポートが必要なユーザーに関しては、販売パートナー経由で商品を購入してもらう」という体制を作り上げている。

 そして販売パートナーからもDirectplusで扱っている商品を購入できる「HP Directpartner」という制度を用意し、そうしたユーザーにもリーチできるようにした。これは、―Directplusで扱っている商品も欲しい、しかしサポートなどの支援も必要―というユーザーにとって、ありがたい体制である。

 こうした施策の効果が現れてきたのが、同社のSMB市場でのパソコンの売り上げだ。エンタープライズ市場の2倍という大きな伸びを記録している。

 しかし、この成果だけに満足しているわけではない。

 「Directples、Directpartnerともに右肩上がりで売り上げが伸びている。この勢いをもっと拡大させて、中小企業だけでなく、中堅企業向けパソコン販売でも売り上げを拡大させていきたい。強い市場ではさらに強く、これから伸ばすべき市場でも他社を上回る伸びを目指す」

 着実に成果が現れ始めているだけにその姿勢はあくまでも強気。この姿勢のまま2005年の売り上げ拡大を狙う。

【おわびと訂正】
 初出時に、取材元の日本ヒューレット・パッカード株式会社側で事実と異なるデータを提供していたことが判明いたしましたので、別のデータを参照の上、現在の構成へ変更いたしました。また、一部のデータを誤って掲載しておりました。関係者の方々へご迷惑をおかけ致しましたことを、深くおわびいたします。



URL
  日本ヒューレット・パッカード株式会社
  http://www.hp.com/jp/
  HP Directplus
  http://welcome.hp.com/country/jp/ja/howtobuy.html

関連記事
  ・ 第一回・なぜ、ベンダーは中小企業を目指すのか(2005/01/05)
  ・ 第二回・全社平均を上回る成長率を実現する―日本IBM(2005/01/12)
  ・ 第三回・中小企業にも直販モデルで挑む―デル(2005/01/19)
  ・ 第四回・販売店強化こそ中小企業市場開拓の要―NEC(2005/01/26)


( 三浦 優子 )
2005/02/02 00:00

Enterprise Watch ホームページ
Copyright (c) 2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.