ハイブリス、日本法人を設立。マルチチャネル・コマース製品を日本で本格展開


 マルチチャネル・コマース製品を開発・販売するhybris社は4月24日、記者会見を開催。日本に現地法人ハイブリス ジャパン株式会社を設立したと発表した。同時に、日本市場でマルチチャネル・コマースのソリューション製品「hybris マルチチャネル・スイート4.6」の出荷を開始する。

店舗、ウェブなど縦割りになっているシステムを一括管理

hybris社CEO アリエル・リューディ氏

 発表会で、hybris社CEOのアリエル・リューディ氏は、「hybrisは1997年にドイツで創業した。日本とドイツはいくつかの点で似ていると考えている。勤勉であること、そして高品質の製品を作ることだ」と挨拶。

 続いて、「hybrisが創業したドイツを含む欧州市場は複数の国で構成されており、hybris製品は複数通貨、複数言語に標準対応している。日本についても、ローカライゼーションはすでに済んでいる」と説明。

 「欧州市場から展開し始め、3年ほど前に欧州から米国に進出。2011年からアジアへの進出を開始し、日本市場については特に力を入れている。欧州や米国の顧客企業で日本に進出したいというニーズも多く、また日本企業で海外進出を図る企業も多い。」と日本法人設立の経緯を語った。

 hybris社のマルチチャネル・コマース製品については、「現在のビジネスでは、消費者は商品の情報を得たり、購入したりするのに複数のチャネルを持っている」と説明。ウェブで製品情報を調べ、実際の店舗で実物を見て、ウェブサイトから購入するといった行動が普通に行われているが、こうした消費者とひとつの企業をつなぐ複数のチャネルで、一貫性を持った情報を発信するのが難しくなってきていると述べた。

 リューディ氏は、「インターネットの普及で顧客はさまざまなチャネルを使って企業と接するようになった。その一方で、業界を問わず、店舗、ウェブ、モバイルなどチャネルごとに縦割り構造になっており、相互の連携が取れていないという現実がある」と指摘。

 小売りやウェブなど、それぞれのチャネルが分断されているため、ウェブで調べる、店舗に行く、モバイルでアクセスするなど、一人の消費者が違うチャネルにまたがって利用すると、店舗とウェブの情報管理が独立していて、消費者はその都度情報提供が必要になるといった劣悪な経験をすることがあるとした。

 「hybris マルチチャネル・スイート4.6」では、プロダクト情報や顧客情報を格納し、貯えた情報を再利用できる形でストアできる。コアとなるプラットフォームはスケーラブルで、複数通貨、複数言語に対応したグローバル仕様で設計されているという。

 リューディ氏は、「店舗やコールセンター、ECサイトなどで基本情報や一人の顧客の購買履歴などをhybrisでひとつにまとめて管理できる。また、既存の物流システムや在庫管理システムなどと連携可能で柔軟な運用ができる点が評価されており、hybrisは400名前後のテクノロジーカンパニーながら、米国のガートナーやフォレスターリサーチの調査では、IT業界のリーディングカンパニーとして高く評価されている」と述べた。

 hybrisの顧客企業は世界で400社に上り、42カ国でhybrisを使ったソリューションを提供している。顧客企業はH&M、ルフトハンザ、リーボック、ダグラスCheck Point、P&G、エリクソン、ネスプレッソ、トイザらス、リーバイス、GRAINGER、Sprint、T Mobileなど、業種は製造、小売り、流通、電気通信、デジタルコンテンツなど幅広い。CheckPointの日本サイトもhybrisを使っているほか、日本企業ではニコンとブリジストンが欧州市場でBtoC、BtoBで利用しているという。


インターネットの普及で顧客はさまざまなチャネルで企業と接触を持つようになったただし、現状は各チャネルが縦割りになっており、情報の一括管理ができていないhybrisは製品情報や顧客情報を、カタログ、ウェブショップ、POS、サプライヤーとの物流などのシステムとつなぐコアになる
製品や顧客情報を統合化し、さまざまなチャネルのシステムとつなぐhybrisのアーキテクチャ図hybrisの顧客企業


製造業、小売業、流通業の多国籍企業がターゲット

ハイブリス ジャパン株式会社 代表取締役社長 森田正昭氏

 ハイブリス ジャパン株式会社の代表取締役社長に就任した森田正昭氏は、hybris社製品について「ウェブ、店舗、コールセンターなどで製品情報や顧客情報を一括管理が可能。標準で多言語、多通貨対応しており、グローバル展開にフィットする。B2B、B2Cともに利用できる」と特長に改めて触れたのち、、「従来はライセンス販売中心だったが、SaaSやホスティングなど提供形態も多様化し、価格もフレキシブルに対応可能な体制を作っていく」と説明。

 「ライセンス販売は、売上規模500億円以上の企業がターゲットになると考えている。SaaSは100億円以上の企業を対象に想定している」と比較的売上げ規模の大きい企業をターゲットとする方針を述べた。初年度は日系多国籍企業と、欧米市場などの既存顧客企業で日本市場においても採用を考える企業などに絞って営業活動を行っていくという。

 業種については、「消費者から受ける影響が大きく変化の早い業界でニーズがあると考えている。hybrisは製造業、小売業、流通業に大きな顧客を持っており、日本でもそういった業界から攻めていきたい」と述べた。

 また、hybris社は欧米市場でもSIerのパートナー企業を通じて販売する仕組みをとっており、日本で営業活動を開始するにあたり、すでに、Infosys、福井県の江守商事株式会社、日本インサイトテクノロジー株式会社、株式会社アルファパーチェス、西濃グループの株式会社セイノー情報サービスの5社とパートナー契約を結んでいる。

 森田社長は、売上げ目標について「初年度ライセンス販売1億円、3年間でライセンス販売5億円を目指す。パートナー企業とともに日本市場を開拓していきたい」との数字を挙げた。


日系多国籍企業、日本への進出を図る海外の多国籍企業がターゲット規模感として、売上500億円以上の企業にはライセンス販売、100~500億円規模の場合はSaaS提供を想定パートナーとして、5社のSIerと契約を結んだ


グローバルで現地対応可能で、かつスピーディな技術対応で導入を決めた

オーエスジー株式会社 常務取締役 園部幸司氏

 発表会には、hybris社製品の導入を決めたオーエスジー株式会社 常務取締役 園部幸司氏も出席。オーエスジーは東証1部・名証1部上場企業で、ドリル、タップ、エンドミルといった切削工具の専門メーカー。園部氏によれば、従業員5078名のうち約半分が海外で、タップでは世界で30%、国内では56%のシェアを持つという。競合はスウェーデンのサンドビック社、米国ケナメタル社、イスラエルのIMCグループになるが、刃の部分が一体化されているソリッド工具ではオーエスジーが世界ナンバーワンだという。ただし、現在の市場は刃の部分を交換して使うインデキサブル工具がマーケットの4分の3を占めており、オーエスジーも今後インデキサブルに力を入れていくと述べた。

 オーエスジーは1980年代から“地球会社”をスローガンにワールドワイドでビジネスを展開してきており、海外の子会社数が35社、世界25カ国に製造・販売拠点を持ち、売上げの50%が海外。海外進出にあたっても、現地サポート・現地デリバリーができる体制を整えているという。

 おもな顧客は車メーカー、車部品メーカーで、電話やPCなどを使って製品情報などをやり取りしてきたが、「今後はスマートフォンやタブレットといったデバイスにも対応していかなくては、すぐに情報が欲しいと言う時に対応ができない。かといって、システム改修を行うと莫大な費用がかかる」と、変化する企業環境に対応を迫られるがシステム改修には莫大なコストがかかるという、企業共通の問題を指摘。

 オーエスジーは最近、システムを刷新。現在はオラクルのEBS製品ですべて稼働しているが、顧客とのパイプの部分は20年前に作ったシステムのままになっているという。

 顧客とのパイプの部分を改修するにあたっては、日本のメーカーということにはこだわらず、「開発力、スピーディーな対応を評価してハイブリスが一番いいと判断した」(園部氏)。また、「日本の企業が海外に出ていく時、同じ図面などをひとつのシステムでグローバルに展開できるという点で、hybrisは非常に優れていると考えている」という。また、グローバル企業を多数既存顧客として抱えており、グローバルでの導入実績がある点も評価したと述べた。

 オーエスジーでは、SIerはインドのinfosysが担当となり、導入を進める。日本でまず導入し、シンガポール、タイ、フィリピン、インドネシアなどの南アジア市場、次に欧州市場と順次展開していく予定だという。

オーエスジーのグローバル戦略現在の顧客との受発注処理の仕組みhybris導入で、顧客ごとのキャンペーン施策や過去履歴からの発注、在庫切れ商品に対して類似商品の自動表示、スマートデバイス対応などさまざまな効果を見込む


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(工藤 ひろえ)
2012/4/25 10:03