「開発者、ユーザー、企業の架け橋に」-The Linux Foundation、新施策と新体制を発表
ジャパンディレクタに就任した福安徳晃氏 |
The Linux Foundation(以下、LF)は2月4日、2010年度の国内における新体制と活動計画を発表した。
新体制としては、日本で活動を統括するジャパンディレクタに、ターボリナックスの海外子会社であるTurbolinux Indiaの社長や、PHPソリューションを提供するゼンドジャパンの社長などを務めた福安徳晃氏が就任。前任の工内隆氏はアドバイザーとして引き続き活動をバックアップするほか、テクニカルコンサルタントとして日立 システム開発研究所の杉田由美子氏を招き、グローバルミッションである「Promotion(普及)」「Protection(保護)」「Standardization(標準化)」を推進する、さまざまな新施策を展開していく。
LinuxはPCやサーバーにとどまらず、ケータイや家電など日常的なシステムにも採用されている。一方、1月には東京証券取引所の基幹システムでの採用が報じられるなど、企業レベルの浸透も始まっている。福安氏は「今やLinuxの信頼性は完全に市民権を得た。今後のチャレンジは、企業の垣根を越えたオープンイノベーションで、産業界に新市場を創出すること」と目標を語り、そのためには「コミュニティがより良く回っていく仕組みや、企業の理解を深める活動が欠かせない」とした。
2010年はこの目標に向け、「Bridge」をキーワードに、コミュニティ、開発者、企業、エンドユーザーなど、Linuxにかかわる人々の架け橋となるような新施策を次々と展開する予定。
世の中に浸透しているLinux | 2010年はコミュニティ、開発者、企業、エンドユーザーなどの架け橋に |
まず、第二回 国際技術シンポジウム「Japan Linux Symposium」を9月27日~29日に開催する。第一回目となった2009年度はLinux創始者Linus Torvalds氏をはじめ、コミュニティでも著名な開発者や技術者が参加したが、「2010年はさらにプログラムを充実させる予定」(同氏)という。
また4月21日には、モバイル端末向けディストリビューション「Moblin」の開発・普及促進のため、「Moblin Seminer Spring 2010」も開催。国内外より、Moblinのエキスパートを集め、国内ハードベンダー、アプリケーション開発者に向けて、技術・マーケティング・コミュニティ活動の観点から情報を提供する。
併せて、Webを通じた活動としてWebサイトの充実も図る。2009年度は、LFの日本語サイト(www.linuxfoundatin.jp)に、カーネル開発プロセスへの手引き、開発プロセスの仕組みなどを紹介する「Linuxカーネル開発への参加方法」や、ホワイトペーパー「誰がLinuxを開発し、誰が支援しているか」などを日本語化したが、さらに翻訳コンテンツを充実させ、併せてオンラインコミュニティサイト「Linux.com」の日本語版も開設する予定。
このLinux.comは、Linuxのユーザーと開発者を結びつけることを目的としたポータルサイトで、Linux関連のリソースを提供するほか、利用者がブログやグループを立ち上げて活動するSNSとしての役割も果たす。日本語版では参加者のコミュニティ貢献度をポイントで評価し、その高低に応じてさまざまな特典を付与する新しい制度や、開発者とLinux関連求人企業を結ぶ「Linux Job Board」を開設するなど、独自のメニューも充実させるという。
開発者と企業の架け橋としてはこのほか、デバイスドライバ・デバッグ・Linuxアプリケーション開発・パフォーマンスチューニングなどに関する、6科目の有償トレーニングメニューを日本で実施するほか、無償Webセミナーも順次開催。第一回目は3月1日のJonathan Corbet氏による「How to Work with the Linux Community」となる予定。
6科目の有償トレーニングメニュー | 無償Webセミナーも展開する |
一方、Linuxコミュニティに参加する日本の個人会員向けには、メールドメイン(@linux.com)の提供、Dell製ハードウェア、O'Reilly Japan出版物、LF主催イベント・トレーニングの特別割引を特典として与える。「Linux開発に貢献してくれる個人会員に対して、何かしらのベネフィットを返したい」(福安氏)との考えで、「海外ではさまざまな特典が用意されていたのに日本にはなかった。今後はこれ以外にもさまざまな特典を増やしていく予定だ」としている。
工内氏から福安氏へバトンタッチされ、25歳若返ったLFは、「国内30名の個人会員を1000人に増やす」などを目標に2010年も精力的に活動していく方針だ。
2010/2/4 17:09