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中小企業市場を開拓せよ!―“ITの原野”に挑むベンダーたち―

最終回・市場開拓から地道に取り組む中小企業対策―マイクロソフト


 他社が中小企業戦略に取り組む前から、積極的に中小企業向け施策を展開してきたのがマイクロソフトだ。すでに3年以上、中小企業市場開拓に取り組んできた眞柄泰利執行役常務は、「これまで競合がなく、寂しかったので、競合が出てきてくれることは素直にうれしい」と笑顔を見せる。

 しかし、「競合はない」というのは、現在でも変わらない部分もある。他社が、「中小企業」とセグメントしているのは、マイクロソフトのセグメントでは「中堅企業」に該当する。マイクロソフトが中小企業に分類する企業向けにIT導入を進めているベンダーは、「いまだにほとんど存在しない。当社と各地域の地場販社が地道に取り組んでいるくらいだ」(同執行役常務)からだ。

 だが、やはり3年にわたり市場開拓を進めてきた成果は着実に現れ始めている。昨年発売したWindows Small Business Server 2003は、「同分野での前年比600%から700%と高い勢いで伸び始めている」(同執行役常務)という。


中小企業市場からサービスコストを徴収できるか?

執行役常務 OEM営業本部 ゼネラルビジネス統括本部 ビジネスパートナー営業本部 東日本・西日本営業本部 担当 眞柄泰利氏
 眞柄執行役常務は、中小企業向けビジネスを担当するようになって、「キープレイヤーが参戦していない」と感じていた。

 「全国各地の地場の販社の中には、中小企業向けビジネスを真剣に取り組んでいる企業があるものの、キープレイヤーが参戦してこないために、最新の技術の活用やブロードバンド化といった部分は遅れているという印象をもっていた。その状況を変えるためには、影響力をもったプレイヤーが中小企業向けビジネスに取り組むようにならなければ駄目だと思っていた。エンタープライズ向けビジネスについては、2000年問題以降、ハード販売以外のビジネスがきちんと成立するようになった。が、中小企業向けビジネスではそれは当てはまらない。やはり、キープレイヤーの参戦により、その状況を変えていかなければならないからだ」(眞柄執行役常務)

 実際にマーケットとして見ても、中小企業市場はチャンスが多いとマイクロソフトでは分析している。同社の調査によれば、中小企業のパソコン導入台数は1社あたり0.28台。これはベトナム、インドネシアと同等のレベルだそうだ。

 サーバーについても、従業員数100人未満の企業の導入率は10%以下。まだまだ、新たにサーバー、パソコンを導入してもらうことができるマーケットであることは明白である。

 ただし、眞柄執行役常務が指摘した通り、エンタープライズ領域では定着している“サービスを対価として支払ってもらうこと”は中小企業マーケットではまだ成立しているとは言い難い。そのため、販管費、サービスコストをどう徴収していくのかという課題が残っている。

 この課題を解決するために、マイクロソフトでは、「スマートビジネスキャンペーン」を実施している。昨年12月からスタートしたこのキャンペーンは、「実証実験の場だと考えている」と眞柄執行役常務は説明する。

 このキャンペーンは、初めてのサーバー導入に最適なWindows Small Business Server 2003 Standard Edition と情報共有のためのソリューションを1つにまとめたパッケージをお得な価格で提供するなど、お買い得価格でシステムを提供するだけのものに見えるが、「パッケージの中には、サービスコストまで含んでいる。そのコストが妥当なものかどうか、ユーザーに評価してもらい、どの位のサービスコストを徴収するのが、妥当なのかを探るのが目的」(同執行役常務)となっている。

 パートナー自身がサービスビジネスで収益をとろうとしても、ユーザー側はなかなか納得しない。そこでマイクロソフトがサービスを収益にできるパッケージを提供し、ユーザーからサービスコストが妥当なのかどうか判断してもらう。その結果をふまえて、今後本格的にパートナーがサービス収益をとれる体制を作っていくというのがマイクロソフト側の狙いだ。

 それを実現するために、提供するパックの中には、「特典」として通常は有償のサポートを利用できるようにするなど、サービス部分も盛り込まれている。この実験を6月まで実施し、成果を見て、7月以降にどう展開していくのかを決定するという。


中堅企業にはデータベースマーケティングで対処

 一方、多くのITベンダーが参入してきた中堅企業向け取り組みも地道に進めている。

 「中堅企業に対しては、綿密なプロファイルをとり、中堅企業のIT化がどういう状態にあるのかを把握する活動を進めている」(眞柄執行役常務)という。

 その中でセキュリティ対策に苦慮する企業が多いというのであれば、「生命保険のパンフレットのように、『こう情報システムを作っていくと、効率よく外部からの攻撃を守っていけます』といった、読むことで参考になる内容のダイレクトメールを送付している。すると、通常はダイレクトメールの送付後の応答は1%程度であるのに対し、10%を超える返答がある」そうだ。

 応答があったユーザーについては、販売パートナーと連携し、システム構築の提案を行う。

 「中堅企業に対しては、きちんとしたデータベースマーケティングができつつあるので、お客さんが望むソリューションを紹介していくことで、効率よくビジネスとしていくというサイクルが出来上がりつつある」(同執行役常務)

 このサイクルがきちんと出来上がったという手応えがあるため、「他社が参入してきたことで、競争が激しくなったという側面は確かにあるだろう。だが、これまでの実績があるので競合の登場を脅威とは思わないでいられる」(同執行役常務)と強い自信をのぞかせる。


中小企業向けビジネスでも実績が出始めた

 中堅企業向けビジネスで成果が出てきたことに比較すれば、中小企業市場はいまだ市場を作る段階でもあるが、それでも「ビジネスとしての成果も出てきた」と眞柄執行役常務は話す。

 ITコーディネーター、IT経営応援隊を支援する活動を長年続けてきた結果、「真面目に市場開拓をしているのだと多くの人に認知されるようになった」という。

 また、Windows Small Business Server 2003は、前述したように前年比600%から700%と驚異的な伸びを見せている。

 「これは価格訴求力があったこともあるが、対象となる企業を経営する若い経営者の中には情報リテラシーが高い人も多かったということ、さらにIT投資減税があったことなど、いくつものファクターが重なって出てきた成果ではないか。日本の中小企業にも真剣にIT武装を考えるところが増えてきた。もっとも中小企業は150万社ある。ひとつのシナリオではなく、さまざまなシナリオで攻めていく必要があるだろう」

 数字の伸びだけに左右されず、地道な取り組みも続けていこうとする姿勢にこそ、他社に先駆けて中小企業市場に取り組んだ、マイクロソフトならではの部分があることを感じさせる。



URL
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/

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( 三浦 優子 )
2005/02/23 00:00

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