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「WAN最適化製品でオンラインバックアップ、DR分野への食い込みを狙う」-F5ジャパン


WANJetシリーズの上位製品「WANJet400」

F5のWANJet担当プロダクトマネージャー、ケヴィン・ホッヘンブリンク氏

WANJetでファイル転送をした場合、平均的には10倍、最大では500倍高速になるという
 F5ネットワークスジャパン株式会社(以下、F5ジャパン)は5月17日、この4月に提供を開始したWAN最適化アプライアンス「WANJetシリーズ」の新版について、説明会を開催。国内では、Windowsファイル共有環境の最適化、アジア圏との間の通信最適化といった市場に加え、増えつつあるオンラインバックアップ、ディザスタリカバリの市場に対しても食い込みを図りたい考えを示した。

 WANJetはもともと、米F5 Networks(以下、F5)が買収したSwan Labsの製品で、WAN回線を流れるトラフィックを高速化・最適化して、「LANであるかのようにWANを利用するための製品」(F5のWANJet担当プロダクトマネージャー、ケヴィン・ホッヘンブリンク氏)。基本的には、WANを挟んだ企業の各拠点に設置し、対向で利用する製品だ。

 この分野のプレイヤーとしては、F5以外にも米RiverBedや米Juniper Networks(旧Peribit)などがあり、国内でもこれらが製品提供を行っている状況。市場規模も拡大しつつあると見られている。ホッヘンブリンク氏が引用したIDCのレポートによれば、「ワールドワイドで、2005年は3億ドル強、2009年の予測で6億ドル強の市場規模」とされているが、同氏はこれを「アナリストは市場規模を過小評価している。北米における顧客の関心からすると、この市場に対する見方は変わってくるだろう」と評し、もっと見込みのある市場だとの見解を示した。

 F5でも、企業買収をして製品を手に入れたくらいであるから、当然この市場には大きな期待をかけている。ホッヘンブリンク氏は「企業のグローバル化による分散環境への対応と、法規制による集中化の流れという相反する動きがあるが、F5ではWAN最適化によるアプローチで、これに十分対応できる」と自信を示す。

 現在は、法規制への対応などのために情報の集中管理をしたいという流れがある。そこで各企業はデータセンターにサーバーインフラやデータを集約し、それに対して拠点からアクセスさせることになるが、現実的には回線パフォーマンスの問題があり、LANと同じように運用するのは難しい。そこで、WANJetを導入することによってパフォーマンスを上げ、問題を解決しようとするアプローチがある。

 WANJetではいくつかのアプローチで高速化を行っている。その中でも、TCPの最適化に加えて、Transparent Data Reduction(TDR)と呼ばれる技術を持っている点が、競合に対する差別化につながっているという。TDRでは、一般的な辞書圧縮だけでなく、レイヤ5(セッション層)に着目した圧縮を行う。ここでは、データをマージする前にセッションレベルで圧縮をかけるので、「連続したデータの圧縮を効果的に行える」(ホッヘンブリンク氏)。また回線における遅延やふくそうの状況から、圧縮の度合いをコントロールするほか、キャッシュを利用した差分転送の技術なども用いられている。

 また、F5ではソリューションの統合が可能になる点もメリットという。今後の対応待ちであるが、同社の主力製品「BIG-IP」に用いられているOS「TMOS」上への移植、共通API「iControl」、管理基盤「Enterprise Manager」への対応といった、自社製品との統合を推進する動きがすでに明らかにされており、この流れによってトータルソリューション化を図り、差別化をさらに進めることができるとしている。


F5ジャパンのプロダクトマーケティングマネージャ、武堂貴宏氏
 一方国内では、販売ターゲットを大きく3つに分けて推進していくという。F5ジャパンのプロダクトマーケティングマネージャ、武堂貴宏氏は「リモートでWindowsアプリケーションによるファイル共有を使わない企業はない」として、業種業態を問わず、CIFSによるアクセスを高速化したい企業へ販売するとしたほか、「アジア圏は特に遅延が大きい。またブロードバンドも普及していないか、コストが高い」と述べて、工場が海外にあるような製造業などの顧客に対しては、質の悪い回線を補完する目的で売り込みを図るとした。

 さらに、「オンラインバックアップ、レプリケーションやディザスタリカバリを行う企業を、当面、一番大きな市場と期待している」と説明。「データベースのバックアップは容量が大きいので、オンラインでは(回線などの)コストが高い。WANJetでは十分コスト削減が可能だ」(武堂氏)と語っている。



URL
  F5ネットワークスジャパン株式会社
  http://www.f5networks.co.jp/

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( 石井 一志 )
2006/05/17 18:17

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