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「確たるプラットフォームへの統合で差別化、パートナーシップも推進」-F5副社長


ビジネスディベロップメント バイスプレジデントのジム・リッチングス氏
 米F5 Networks(以下、F5)はここ数年、主力製品であるロードバランサー「BIG-IP」と、企業買収によって得た多数の製品ラインとの統合を進め、アプリケーション配信最適化の一大プラットフォームを築こうとしている。同社がどういった理由でこの戦略を進めているのか、またどうパートナーと連携しているのかを、ビジネスディベロップメント バイスプレジデントのジム・リッチングス氏に聞いた。

 リッチングス氏は、アプリケーション配信が重要になってきている理由として、アプリケーション展開の仕方が変わってきている点を挙げる。そのうちの最大の変化としては、「Webアプリケーションが主流になったこと」、「負荷の高いプロトコルが使われていること」、また「コンテンツがリッチになっていること」などがあるという。

 実際に、MicrosoftやOracle、SAPといった大手ベンダのエンタープライズ向け製品においてもWebベースのものが増えているし、とある調査によれば、2005年にアプリケーション配信最適化の市場は36%の成長を遂げているという。こうした市場の変化に対応するため、F5では各製品の機能強化、ラインアップ拡充などを続けているが、それとともにソフトウェアベンダとのパートナーシップを積極的に推し進めている。

 これは、F5製品だけでも導入の効果が出るようにしているとはいえ、互いの連携が容易にできるようにされていた方が、より効果が現れるからだ。リッチングス氏は、「アプリケーションのパートナー企業にフォーカスした戦略を、いち早く2001年から打ち出している。当社ではiControl APIを提供しており、製品間の統合が容易に可能なほか、ラボでの共同検証も進めている」と説明。

 あわせて、「すでに、Microsoftのサーバー製品と当社製品を使っているユーザーは1200以上いるし、Oracleでも、BEAでも、多くの事例がある。ワールドワイドの売り上げのうち、半分がアプリケーションとともに利用されている分からのもの」と実績を語った。こうした効果を顧客に説明するために、同社では「F5ソリューションセンタ」をWebサイト上に開設しており、7月には「F5テクノロジセンタ」を公開するなど、さらに拡張していく予定だ。

 ソフトウェアベンダとの取り組みの例としては、Microsoftがサードパーティ製品と自社製品を組み合わせて検証するための「Microsoftテクノロジセンタ」へ投資を行っているほか、Oracleとは、可用性を最大限に高める「Maximum Availability Architecture」の開発に共同で取り組むなど、高可用性に関しての戦略的な提携を実施しているとのこと。加えて、「両社とのセキュリティ関係の取り組みも、積極的に行っている」(同氏)とした。


 リッチングス氏はまた具体的な事例として、Oracleのオンデマンド業務サービス「Oracle On Demand」のバックエンドシステム更改時の例を説明した。かつてOracleでは、アプリケーションサーバーとしてUNIXサーバーを用いていたが、リソースの不足や、高額なハードウェア費用に悩んでいたという。

 「そこでOracleは、Linuxを用いたIAサーバーのグリッドと、F5のBIG-IPを用いたシステムにリプレースし、パフォーマンスを向上させながらコストを200万ドル以上削減することに成功した。グリッドとBIG-IPの間のやりとりにiControlを用いて、通信のやりとりの際にどこが優先度が高いのか、などを判断している」(同氏)。

 あわせて、リッチングス氏は「Oracleでは、互いの製品を組み合わせて自社で使うだけでなく、顧客企業にそれを推奨している」と述べ、F5の製品がパートナーから信頼されていることをアピールしたほか、「製品を販売したことによる売り上げは50%以上がパートナーシップの成果」であり、さらにその実績が過去数四半期にまたがって上昇傾向にあると語り、非常に順調に推移しているとした。

 またパートナーに選ばれる理由として同氏は、「競合ベンダはいろいろな市場にまたがってビジネスをしているが、F5はまさにアプリケーション最適化が事業の神髄であり、当社の技術もこの分野の問題解決に特化している」と主張。さらに、「1つのプラットフォーム上で運用の効率を上げていくことを目指している。アプリケーションセキュリティも、WAN最適化も、すべて同じプラットフォーム『TMOS』上で使えるようになる」と述べている。

 F5ではすでに、MagniFire買収で手に入れたアプリケーションファイアウォール「TrafficShield」の機能をBIG-IP上で利用できるようにしているほか、WANJet、FirePassといった製品も順次TMOSで動作するように統合を進めていく考えである。

 「すべてのトラフィックを両方向で詳細に分析できることなど、TMOSはアプリケーションのインテリジェンス自体が高い。当社では、最終的にはアプリケーション配信をこのTMOSに統一していくが、競合は統一プラットフォームがないのでその戦略はとれないだろう」(リッチングス氏)。



URL
  米F5 Networks
  http://www.f5.com/
  F5ネットワークスジャパン株式会社
  http://www.f5networks.co.jp/


( 石井 一志 )
2006/04/28 13:25

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