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「WAN環境でもLANに負けないパフォーマンスを実現」、米DiskSites


 企業が拡大するのに伴い、拠点数が増えていくのは常だ。そうなると、各拠点は、ファイルサーバーをはじめプリントサーバー、DHCPサーバー、DNSサーバー、ストレージ、バックアップなど、多くのITシステムを抱え、さながらミニデータセンターと化してしまう。実はいま、ユーザー企業の間ではこうしたことが悩みのタネとなっている。つまりミニデータセンター化した多数の遠隔拠点を擁していると、それらのITシステムに対するリソース実装や管理、保守、そしてセキュリティなどに向けた設備・運用コストなどが肥大化していくからだ。

 こうした、“ミニデータセンター化”に伴うユーザーの悩みを解決するソリューションとして提供されるようになったものが「WAFS(Wide Area File Service)」で、米DiskSitesは同分野で注目を集めているベンダである。同社は1999年に設立されたが、当初4年間は製品出荷は行わず、ひたすらR&Dのみに全精力を傾注させていた。そして2003年になって初めて製品を出荷するという堅実な取組みを展開している。今回は、DiskSitesの社長であるドロン・メイロム氏に、WAFSと同社のソリューションについて話を聞いた。


WAFSによる、“一極集中化”のメリット

WAFSの導入例。中央サイトに「ファイルポート」、拠点側に「ファイルコントローラ」というアプライアンスを設置し、WANの最適利用を図る
 WAFSは前述したように、多数の拠点に分散している“ミニデータセンター”状態を解消するためのコンセプトの1つである。これを導入すると、ユーザーは各拠点のファイルサーバーではなく、WANを介して中央サイトのデータにアクセスし、ファイルの操作・保存を行うことになる。したがって、これまでのように、各拠点で複数のサーバーなどのITシステムを抱える必要がないので、設備・運用コストがかからず、TCO削減に結びつくというわけである。また、拠点側のユーザーに対しては透過型に働くため、使用感に影響を与えることはないという。

 さらにWAFSには、TCO削減効果に加えて、セキュリティ対策としての効果も期待されている。つまり中央サイトへのデータ集中の結果、各拠点からはファイルサーバーをはじめストレージ、バックアップデバイスなどがなくなってしまうので、無許可でデータを操作したり改ざんされたりする機会が減少し、盗難や事故、損傷などの可能性も小さくなるのである。こうしたことで、拠点のセキュリティホール化は避けられるはずだという。

 メイロム社長は「WAFSで重要なのは、更新ファイルが確実に保存されることとリアルタイム性。特に、WANを介してアクセスするので、このとき発生する遅延をどう克服するかという、リアルタイム性は重要」と説明する。ここにDiskSitesならではのコアコンピタンスが隠されているというのである。


他方式にはみられない「DiskSitesのWAFS」の強み

米DiskSitesの社長、ドロン・メイロム氏
 そのコンピタンスとは、データがリアルタイムで完全に同期操作されることだという。一般にWAFSを実現する場合は、ユーザーの各拠点と中央側にそれぞれアプライアンスを設置。キャッシュ、データ圧縮などの技術を用いて、これらのアプライアンス間の通信を極力高速にし、狭いWAN帯域の有効活用を実現している。DiskSitesのソリューションでも、基本的な仕組みは同じだ。

 しかし、その実装の仕方に問題があるケースがあるとメイロム氏は指摘する。「『ストアアンドフォワード方式』などを採用している他社のソリューションでは、拠点側アプライアンスに書き込んだ(キャッシュされた)瞬間にユーザーを解放するものがある。そうしたものでは、ユーザーは、解放された段階で作業は終了したと思いこんでしまう。だが、その時データはまだ拠点側のアプライアンス内にあるから、厳密には、中央サイト側のデータはアップデートされていない。後からスケジューリングやレプリケーションで対応しても、中央サイト側のサーバーのディスク容量がいっぱいだというような理由で、更新が正常に行われないこともあり得るはず」(同氏)。

 しかしDiskSitesのソリューションでは、必ずリアルタイムに、中央サイト側のデータと同期させるようにしているため、ネットワークにトラブルがあって中央側に保存ができなかった場合は、その操作を拒否する。これによって、ファイルが更新されたとユーザー側が勘違いすることを防止できるという。またネットワークが復旧して、正常に更新(あるいは解放)されるまで、中央サイト側のファイルはロックされ続けるので、ファイルの同一性も保つことができる。


リアルタイム操作を実現させる、差分計算による転送機能

 また同社の場合は、バイナリの差分計算による転送を行うユニークな機能があり、これが同社のオリジナルなキーテクノロジーだという。WANを通じてファイルを呼び出した場合、そのファイルは中央側・拠点側の双方にキャッシュされ、ファイルの更新時にそのデータすべてではなく、変更部分のみを保存したり受け取ったりする仕組みだ。

 したがって、現実には必要最小限のデータがWAN経由で転送されることになるため、これが遅延を防ぐ大きな役割となっているのである。またさらなる遅延削減のために、CIFS(Common Internet File System)トランザクションの集約も行われている。これは、CIFSをWANに最適化されたプロトコルにカプセル化するというもので、集約の平均レベルは60~100倍にもなるという。そのほかにも前述のようなデータ圧縮機能もある。

 こうしたパフォーマンス向上技術のおかげで、WANを介して転送した場合、128kbps程度の回線でも、ファーストアクセスでおおよそ3~5倍、セカンドアクセスではLANにかなり近いパフォーマンスを実現することが可能になったという。また、遅延が大きな品質の低いネットワークでは帯域を広げても実際のアクセススピードはなかなか上がらないが、同社のソリューションを用いると、100ms程度の遅延が発生する環境でも、大きな効果が得られるという。

 メイロム氏は「DiskSitesのこうした技術が、WAN環境であってもあたかもLANのようなパフォーマンスを実現してくれる。こうなるとWAFSというよりもむしろWAN最適化と呼んでほしい」と、本音を語る。


ERPやMetaFrameなど次なるソリューションに向けて

 DiskSitesでは現在、ファイルサービス以外にも、プリントサービス、DNS、DHCP、レプリケーションサービスなどを実装ずみだ。今後はさらに、WebキャッシングやFAXサーバーなどの追加も予定している。さらに今後、差分計算による転送機能をCIFS以外の、たとえばオラクルやSAP、Microsoft Exchange、Notes、MetaFrameなど、ほかのアプリケーションの高速化分野でも使いたい構えだ。まずは年末までには、SAPとMetaFrameへの対応が行われそうな気配である。

 加えてInterop Tokyo 2005では、新たに在宅勤務やモバイルで利用するユーザーに向けたソリューションも、プロトタイプを紹介した。これは拠点側のアプライアンスにある差分計算機能などを、クライアントソフトとして利用できるようにしたものだ。

 なおDiskSites製品の提供は、国内ではマクニカネットワークスからソフトウェア形態で提供され、同社のパートナーがアプライアンス化して、サービスとともに販売する予定だという。価格は予想の域をでないが、センター側300~400万円、拠点側150~200万円になるのではないかとみられている。

 すでに米国では、製造業など大手企業や金融、政府機関などに多くの導入実績があるとのことで、サーバーレスブランチオフィスの実現を目指す企業が増えるにつれ、さらに本格的に浸透していきそうだ。



URL
  米DiskSites
  http://www.disksites.com/
  マクニカネットワークス内のDiskSites紹介ページ
  http://www.macnica.net/disksites/

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( 真実井 宣崇 )
2005/06/17 15:59

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