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グリー田中社長、「継続してこそ、世の中に影響を与えることができる」
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今回のゲストはmixiと並ぶSNSの雄、GREEを運営するグリー株式会社代表取締役社長の田中良和氏、および取締役最高技術責任者の藤本真樹氏です。
SNSをWeb 2.0的と考えるかどうか、という点では意見が分かれるところとおもいます。筆者は近著「Web2.0 BOOK」にも書いたように、Web 2.0とはWebの「質的変化」と「量的変化」によって生まれた新しいWebの状態とトレンドであると考えています。量的変化とはWebへの参加者が増えたことと、それによってデータ量が増大したことを指しますが、SNSはブログと並び、量的変化をもたらした要因の一つであるといっていいでしょう。
■ 95年頃からネットに興味が
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代表取締役社長の田中良和氏
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―今日はよろしくお願いいたします。まず、自己紹介をお願いできますか?
田中氏
大学に95年に入った時期が、ちょうどWindows 95が出たときだったんですね。18、19歳というと何か力を注ぐべき目的を探している頃なわけですけど、世間ではバブル崩壊で、仕事は熱心にやるもんじゃないというか、日本全体が沈滞化したような感じがまん延していた時期でした。でも、90年代後半にネットスケープとかYahoo!が出てきて、インターネットの世界がすごくホットになってきた時期でもあったんです。当然、僕もネットビジネスに興味がでてくるわけです。在学中に、元CNETの編集長で今はグリーの副社長になっている山岸や、mixiの笠原さん、はてなの川崎さんらと出会ったのもその頃ですね。
―それで楽天に就職ですか?
田中氏
いえ、その前にソニーコミュニケーションネットワークに就職したんですけど、ネットエイジとも交流があったりして、やっぱりインターネットに関わる仕事がしたいとおもって2000年2月に楽天に転職したんです。楽天では三木谷さんに「君、ネット詳しいの、じゃあいろいろ作ってよ」みたいに(笑)言われて、コンシューマ向けのサービス、ブログやネットくじのようなサービスをひたすら作ることになりました。僕はエンジニアではないんですけど、見よう見まねというか、やりながら覚えていったという感じです。楽天広場というブログは僕が作りました。ほかにもアライアンスの契約書を作るなど、ベンチャーでやるべき仕事は一通り何でもやりましたね。
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取締役最高技術責任者の藤本真樹氏
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―藤本さんも楽天出身ですか?
藤本氏
僕は楽天にコンサルみたいな形で通ってました。PHP等のオープンソースプロジェクトに参画していたこともあり、楽天だけではなく、複数の企業にオープンソースソフトウェアシステムのコンサルティング等を仕事にしていたんですよ。
田中氏
楽天の社内勉強会で、たまたま二人で話す機会があって、これは変な人だな(笑)とおもって、誘ってみたのがきっかけで仲良くなりました。
藤本氏
焼き肉につられてついていきました(笑)。グリーが設立されてからも、しばらくは非常勤で手伝っていたんですけど、去年の暮れから本格的にジョインしました。
田中氏
やはり僕自身が真性のエンジニアではないんで、ちゃんとエンジニアのバックグラウンドを持っているパートナーが欲しかった、という感じです。
■ ユーザーに喜ばれるサービスを作る
―GREEを立ち上げたのは楽天時代ですよね?
田中氏
ええ。2004年2月です。GREEを立ち上げたのは、好きなことをしようとおもってやってみただけで、仕事にしようとおもってたわけではないんです。世の中を変えたいという気分、かな。他の人から見ると、どういう意味があるの? と聞かれるけど、作りたいから作った、みたいな。
―法人化した理由は?
田中氏
GREEを作ったら意外と評判よくて。ユーザーを裏切らないためにも、いいサービスを作らなければならないし、いいサービスを作り続けるには、いい体制がいるとおもったんです。あるときユーザーからメールで質問を受けたんですけど、「一人でボランティアで作ってて、田中さんが死んだらどうなるの?」と聞かれたんですよ。僕が死んだらGREEがなくなる、というのではユーザーに申し訳ないとおもったわけです。
サービスを継続するには、お金も人もいる、体制を作る人がいるんですね、当たり前ですけど。それで、2004年12月に、会社を作ったというわけです。
―社員数はどのくらいですか?
田中氏
今は社員20人くらいですね。2005年2月にオフィスを借りたんですけど、6月に増資したり7月に新しいオフィスに移ってからは、いいペースで社員が増えています。
―ユーザー数はどのくらいになっていますか。
藤本氏
今は31万人、かな。
―実のところmixiに規模では差を付けられていますが、その辺りはどう考えていますか?
田中氏
ユーザーは多いにこしたことはないですけど、気にはしてないですね。むしろ今のユーザーに十分役立てるようなサービスの提供を心がけてますね。
■ グリーをWeb 2.0的な法人としてフレームワーク化したい
―ビジネスモデルをお聞きしましょう。最近どこかの記事で、(副社長の)山岸さんが、グリーはロングテールのヘッドで儲けている、とおっしゃっていましたが。
田中氏
収入は広告から得てます。確かに現時点ではロングテールのヘッドなやりかたといってもいいですね。つまり、広告代理店にバナーを売ってもらっています。ただ、ヘッドとテールのどちらかに集中したいわけではなくて、両方から収益が欲しいとはおもっていますよ。スケーラブルかどうかというと、テールだろうし、いったん収入があがりはじめればテールの方が安定的だろうし。
藤本氏
テールに耐えられるサービス、長いテールを持っているかが大事ですからね。結局のところ、技術力がないと安定していかないわけで、二段ロケットじゃないですけど、まずはヘッドで収入を上げて、次にテールを考えていけばいいかとおもってますね。
―ロングテールという話が出たところで、Web 2.0に話をふりましょう。グリーのWeb 2.0観を聞かせてください。
田中氏
僕は楽天で2000年からオークションやブログをやっています。いまさらWeb 2.0がどうのということもないんですけど、やはりWebのユーザー数が増えてきたことが大きいですね。オタク向けの日記から誰でも使えるホームページになり、そこから互換性を持つためのAPIを作ることもできてきたんです。するとお金にもなるようになった。アフィリエイトみたいなものがそれです。つまり、コミュニティサイトがお金になるようになってきたんですね。ユーザー数が多くなってメディアになって、お金になること、それが2003年くらいから多くの人の目に明らかになってきた。その流れにWeb 2.0があるんじゃないですかね。
藤本氏
使うのは人間ですからね。単純にユーザーが増えたせいかもしれないですけど、インターネットでなんでも情報を取得できる時代になって、ハックする技術がいる時代に続きます。それからAPIがでてきて、それほど高い技術がない人でも、Webの情報を活用することが比較的易しくなってきた。それでもまだまだギークのような人がWebを支えているわけですけど、APIを使ってなにか新しいものを産むこと自体は、ちょっとした知識さえあれば女子高生でもできる時代になってきたわけです。
田中氏
そもそも僕らもSNSだけをやろうとおもったわけではないんですけど、どんなサービスにしても、それを成長させていくには、そのためのフレームワークが必要という気がしてます。フレームワークというのはソフトウェア的なものだけでなくて、人員とか資金とか、つまり会社組織みたいなものも、大事なわけです。アメリカではベンチャーとVCの組み合わせによってイノベーティブなサービスが生まれて、シリコンバレーみたいなものもできたし。
―グリーはWeb 2.0的サービスを作り続けるフレームワークになっていますか?
田中氏
そうですね。フレームワークという意味では、グリーをインターネットが好きな人が集まる会社にしたいですね。ライフスタイルもワークスタイルもネットぽくして(笑)。だいたい、いいサービスを思いついても普通の会社では作れないですよ。そのための組織が必要なんです。ソフトを内製してオープンソースで素早く作れる、足回りが強化された新しい会社スタイルがいるんです。
そしてそういう会社を作ったら、それを今度はお金にしないとダメなんです。グリーはよいサービスを自分で作って、そしてそれをお金に変えるために最適なフレームワークにしていきたいですね。サービスを単純に作るというと、夜中に閉じこもってプログラミングするという感じにおもわれがちですけど、そうではないですよ。GREEが止まったときには数百通の苦情メールが来たわけで、それに回答するような体制だって必要です。
藤本氏
ソフトウェア的な意味でのフレームワークとしては、ETHNA(エスナ)というWebアプリのフレームワークを開発しています。
―Ruby on Railみたいなものですか?
藤本氏
まあそうですね。2001年くらいからWebアプリを作ってきたんですけど、その経験から作ったものです。技術的にWeb 2.0ぽく作るのは簡単なんですよ。どっちかというと、投入するスピードが大事だとおもいますね。思いついてすぐできることや、どこかがいいサービスを作ったら、すぐ追随できることが大事とおもう。競合が新しいものを作ったら、3日で追随するとか。
―事業的にビジネスSNSみたいなものは考えないですか?
田中氏
何がいいかどうかということは分からないですから、今はやらないけどいつかはやるかもしれないですね。試行錯誤を早くやればいい。mixiの話でも出ましたけど、他のサービスがどうかということはないです。ベンチマークよりはユーザーの考えを理解して、いいサービスを作り続けることでしかないとおもう。ユーザー数などの目標は考えていないですし。
―ほかに参考にしているサービスとか気になるサービスはありませんか?
田中氏
出尽くしたような感があるんですよね、最近は。ここ何年かは、これは衝撃を受けたというサービスがないです…。そういう意味では難しい時代に入ったでしょうね。でも、検索はやり尽くしたとおもったらGoogleが出たように、またなにか出るかもしれないですけど。
とにかく今は、いろいろなサービスが普及したこと自体がすごいこととおもってますね。ホームページやブログを公開するということよりも、世の中の人がみんなそれを持っていることがすごいですよ。
ブログやSNSを日本人全員が使ったらどうなるの? と考えたりしますね。そういう時代になったときの新しいサービスってなんだろう、と。今の広告予算や状況に即したサービスとなると、出尽くしたとおもうんですけど、その先の時代に何をやれるかを考えているという状態です。
―なるほど。
田中氏
いろいろなサービスの普及期には、とにかくサービスを継続していないと、世の中に影響を与えられないです。短期間で方針を決めてしまうような会社はそれ以上になれない。続けるということに事業のエッセンスがある。そうおもってグリーを経営しています。
―わかりました。今日はどうもありがとうございました。
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小川 浩(おがわ ひろし) フィードパス株式会社 COO。1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業および在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業。1999年9月にアジアと日本をまたがるSNSを開始。その後日立製作所にてコラボレーションウェア「BOXER」を立ち上げたのち、ネットビジネス・プロデューサーとしてサイボウズにジョイン。ブロガーとして「Web2.0 BOOK」「ビジネスブログ」シリーズなどの著作がある。 |
2006/03/07 00:00
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