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クラウドとタブレットで災害公営住宅建設を迅速化、宮城・女川町で

JBSとマイクロソフトが技術支援

 日本ビジネスシステムズ株式会社(以下、JBS)と日本マイクロソフト株式会社(以下、マイクロソフト)は4日、Microsoft AzureとWindowsタブレットで宮城県女川町の災害公営住宅建設事業をサポートすると発表した。災害公営住宅建設の迅速化を支援する。

 株式会社三菱東京UFJ銀行(以下、BTMU)と株式会社三菱総合研究所(以下、MRI)が、一般社団法人女川町復興公営住宅建設推進協議会(以下、協議会)と進めている、女川町災害公営住宅建設事業にて電子記録債権を活用した資金支援スキームを提供するにあたり、Microsoft AzureとWindowsタブレットが工事進捗管理システムに採用された。

 東日本大震災の被災地における災害公営住宅の建設では、建設事業者への建設費用の支払いが全戸引渡時に一括で行われるため、事業者は通常の公共工事で採用される前払金などを受け取れず、人件費や資材購入費などを各自で立て替える必要があり、それが工事の遅れにもつながっていたという。

 そこでBTMUとMRIでは、女川町の信用力を背景とした電子記録債権を利用することで、事業者が工事進捗状況に応じて“実質的な出来高払い”を受けられる資金支援スキームを構築し、2014年3月から提供を始めた。提供開始後1年で計16棟の災害公営住宅の建設で活用されているという。

 スキームの流れは、(1)建設事業者がタブレットと専用アプリで、物件の進捗に応じたエビデンス(物件写真と位置情報)をMicrosoft Azure上に提出。(2)出来高確認者(NRI)が報告された物件・写真・位置情報を確認。(3)出来高確認者(MRI)が債権管理サービス合同会社(SPC)に出来高情報を伝達。(4)SPCが建設事業者に工事進捗に応じた電子記録債権を振り出す。

スキームの概要
建設現場イメージ
Windowsタブレットの利用イメージ
工事進捗管理システムの管理者画面サンプル

 このスキームを実現するためには、建築事業者が現地の工事進捗状況について、出来高確認者(MRI)に正確に報告し、確認を得るプロセスを物件ごとに実施する必要がある。現地の建築事業者と遠隔地の出来高確認者を結ぶ工事進捗管理システムには、クラウドサービスとデバイスを駆使する必要があると考え、Microsoft AzureとWindows 8.1搭載タブレットの採用に至った。

 選定理由としては、物件の撮影と位置情報を記録するデバイスとして、他社OSタブレットでは接続できなかった高精度GPSモジュールが接続可能だったこと。周辺機器も含め、デバイスについてさまざまな選択肢があること。アプリ開発やセキュリティ、災害普及を考えると、東日本・西日本の日本データセンターを利用でき、開発環境が整っているMicrosoft Azureが最適であること――などを挙げている。将来的には、Microsoft Lyncを使ったビデオ会議の追加も検討するという。

 JBSが構築を担当し、業務アプリ開発ツール「Microsoft Project Siena(コードネーム)」と統合開発環境「Microsoft Visual Studio」の活用により、1カ月で専用アプリやWebアプリが完成。プロジェクト開始から約3カ月で工事進捗管理システムを作り上げたとのこと。

 MRI 戦略コンサルティング本部長の榎本亮氏は「本システムにより、工事状況を遠隔地からでも迅速に確認できるようになり、災害公営住宅の建設期間短縮に貢献できました。コストと労力の省力化も実現し、工事進捗管理システムとしての有効性が確認できたこと、またクラウド上に構築され横展開が容易であることを生かし、今後はこのスキームをほかの被災地域にも提供することを検討しています」と述べている。

川島 弘之