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クライアントPCでも仮想化を-マイクロソフトがクライアント仮想化戦略を紹介


ビジネスWindows本部 マネージャーの東條英俊氏
 マイクロソフト株式会社は10月24日、プレゼンテーションの仮想化・アプリケーションの仮想化など、同社のクライアント仮想化製品に関する記者向けの説明会を開催。先日発表されたデスクトップ運用管理支援ツールの新版「Microsoft Desktop Optimization Pack for Software Assurance 2008 R2(以下、MDOP)」に含まれるアプリケーション仮想化製品「Microsoft Application Virtualization(以下、App-V)」などをデモを交えて紹介した。

 同社では、サーバー仮想化とともにクライアント仮想化を含め、全方位で仮想化対応を推進する「Microsoft Virtualization 360」を展開している。その中でクライアント仮想化は、「これまでハードウェアとOS、アプリケーションは密接につながっており、クライアントPCのリース切れなどのタイミングでないと見直せないのが一般的だ。そのため、アプリケーションだけを移行したくてもできない場合があった。そのため、投資の観点からみると、PC入れ替え時に更新コストが急増してしまうのが課題だ。こうした課題を解決するのがクライアント仮想化になる」(ビジネスWindows本部 マネージャーの東條英俊氏)と説明する。


2つのクライアント仮想化により、柔軟な運用を実現
 同社が提供するクライアント仮想化技術としては、プレゼンテーションの仮想化とアプリケーションの仮想化の2つがある。プレゼンテーションの仮想化は、Windows Server 2008で強化されたターミナルサービスによって提供される。同社Windows Server製品部プロダクトマネージャの田中啓之氏は、「ターミナルサービス自体は、Windows NT Serverのころから提供しているが、Windows Server 2008で大幅に強化した。特にアプリケーション単位で画面をクライアントに転送できるTS RemoteAppや、HTTPS経由でSSL暗号化してやりとり可能なTSゲートウェイにより、タスクワーカーにとって利便性の高い環境を提供している」と説明する。

 プレゼンテーションの仮想化を利用するメリットとして、「シンクライアントの場合、専用端末を別途用意する必要があるが、既存PCを利用できるので、既存資産の有効活用が可能。セキュリティ面では、クライアント側にはデータが残らないので持ち出し保護といったセキュリティ面でのメリットもある。なにより、エンドユーザーからは既存のアプリケーションと同じ感覚で利用できるので、利便性を損なわないのが大きな利点」(田中氏)と、強化されたターミナルサービスの特長を紹介した。


ターミナルサービスで実現するプレゼンテーションの仮想化 TS RemoteAppはアプリケーションの画面のみを転送 TSゲートウェイを使うことで、VPNなどを用意することなく外部からアクセス可能

App-Vの強化点
 もう一方のアプリケーションの仮想化は、MDOPに含まれるApp-Vによって提供される仮想化。MDOPはWindowsデスクトップの導入・展開・管理において、アプリケーションの移行を支援するソフトウェア群のパッケージ製品。提供形態がソフトウェアアシュアランス契約ユーザーのみが購入できること、旧バージョンが英語版のみ提供されていたことで、知る人ぞ知る製品となっていた。

 このMDOPに含まれるApp-Vについて、同社ビジネスWindows本部プロダクトマネージャの森厚雄氏は、「もともとは2006年に買収したSoftricityのSoftGridという製品がベースになっているのがApp-V。今回、App-V 4.5として機能を強化してリリースした」と紹介。「App-Vは、アプリケーションが動作するのに必要なOSのコンポーネントを仮想的にパッケージ化することで、ほかのアプリケーションとの競合を解消できるのが大きなメリット。コピー&ペーストなどのOSの機能は通常どおり利用しながらも、OSへの依存性を解消できるのが特長」と説明する。

 また、サーバー側でアプリケーションを集中管理できるので、必要なときに必要なアプリケーションを配信するといった使い方も可能。配信されたアプリケーションは、クライアントPC側でキャッシュされるため、TS RemoteAppと異なりネットワークにつながっていない環境でも通常のアプリケーションとして利用することもできる。

 最新版のApp-V 4.5では、同社のTrustworthy Computingに即して開発するなど、セキュリティを強化。また、日本語を含む多言語環境をサポートしている。そのほか、アプリケーションの配信のみを行うストリーミングサーバーをサポートすることで、さまざまな利用法に対応。管理面では、System Center Configuration Manager 2007 R2から統合管理が可能になっている。


クライアントPCには、App-Vのクライアントのみインストールされている Office 2003の各アプリケーションをApp-Vで配信。アイコンをダブルクリックすると、サーバーからアプリケーションが配信され、クライアントPC上で動作する Excel 2003とExcel 2007を同じデスクトップ上で動作させられるのもApp-Vの利点

 クライアント仮想化はまだまだ認知度が低いのが現状。東條氏は、「クライアント仮想化の普及を進めるために、全国13カ所で仮想化戦略製品に関連したソリューションを紹介するセミナーを実施する。また、10社のパートナー企業と協力して、クライアント仮想化の普及促進も行っていく」と、クライアント仮想化の普及に向けた支援策を積極的に展開する考えを示した。



URL
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/

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( 福浦 一広 )
2008/10/24 18:29

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