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コカ・コーラや三井住友銀行はDWHで何を改善したか?


米Teradata CTOのStephen A.Brobst氏
 米Teradata CTO(最高技術責任者)のStephen A.Brobst氏は、「Teradata製品は解析に優れている。クエリの優先度付けを行うTASM(Teradata Active System Management)によるワークロード管理が最大の強み」と語る。

 では、この解析力を生かしてユーザーはどのようにTeradata製品を活用しているのだろうか。ラスベガスで開催中のPARTNERS 2008では、数多くのユーザー事例が紹介されている。その中から日本でなじみの深い2つの事例を見てみよう。


自販機の訪問計画を効率よく

 1つ目が、コカ・コーラ ウエスト ホールディングスの自動販売機(以下、自販機)ビジネスにおけるDWH活用事例だ。同ビジネスでは、自販機を設置してもらうための営業活動のほか、飲料品の補充やメンテナンスなど、設置した後も各自販機に足を運ぶ機会が多い。

 ビジネスシステムグループ 担当マネジャーの中野規浩氏によれば「1人の販売員が訪問できる台数に対して、担当する自販機の数は圧倒的に多く、自販機の中で飲料が消費期限切れを起こさないようにするためには、1カ月に5回まわらなくてはならない自販機をいかに4回で済ますか、といったレベルで効率化を行うことが非常に重要になってくる」という。

 そこで導入したのが、訪問計画システム「HOWKS」だ。コカ・コーラでは、夜間に一度売り上げデータや補充数を通信してくれる「オンライン自販機」と、販売員がハンディ端末を使って現地でこうした情報を取得する「オフライン自販機」を展開している。HOWKSはこれらの情報をDWHに保管し、さらに効率的な訪問計画を行ってくれるという。

 システムのコンソールには、各自販機の売り切れ情報、賞味期限情報、故障情報などが表示される。同氏は「1つの画面でいつどこの自販機に訪問すればよいかが一目で分かるようになっている。また、優先的にどの自販機を訪問すべきかを提案してくれるため、新入社員でもベテランと同じように自販機の訪問作業が可能になり、コスト的にも大きなメリットが得られた」と述べている。


HOWKS概要 各自販機の情報を一覧 グラフィカルに売り切れ、賞味期限切れなどの状況が把握できる

銀行と顧客を結びつけるため、地図情報を活用

 2つ目が三井住友銀行(以下、SMBC)のコンシューマ事業での事例だ。SMBCにおける同事業は、数年前まで収益の小さいお荷物事業だったという。それはなぜか。個人業務部 マーケティング企画室 情報システムグループ長の葛原賢氏によると「今は貯蓄・運用の時代だが、一般の人からすると銀行はお役所というイメージが強く、何かと相談しにくく、ただ単にお財布代わりとして利用するケースが多い」。このため個人向けにもさまざまなサービスを展開するも、なかなか利用してもらえなかったのだ。

 こうした課題を乗り越えるため、SMBCが取り組んでいるのが、30~50代の主婦を主とした「Money-Life Partner(MP)」による自宅訪問である。「派遣として雇った話し好きでコミュニケーション能力に優れた主婦が、一般の顧客の家を訪問、日常の話題をしながら心を開かせていく。最終的に客と銀行を引き合わせるのが役目」(同氏)で、これにより銀行のサービスをより良く理解してもらうきっかけを作るのが狙いだ。

 MPはこうした訪問活動を行うために、「以前は市販の地図をコピーしてそこへ顧客情報を書き込み、地図付き顧客台帳としていたが、家事もやらなければならず実働時間の短いMPにとっては手間も大きい。そのため地図を作らなかったり、土地勘に頼ったりするMPなどもいて効率がなかなか上がらなかった」(同氏)。実際、大抵のMPは移動時間を含め、4時間ほどの訪問時間しか確保できないケースが多く、こうした事前作業が効率を著しく低下させていたのだという。

 そこでSMBCが作り上げたのが「MCIF MAP」というシステムである。住宅地図情報とCRMが連動しており、TeradataのDWH製品にはこの2つの情報をひも付けるコード情報が格納されている。

 MCIF MAPを活用することで、「MPが自分の担当地域を訪問する際、わざわざ書籍の地図をコピーする手間が省けるほか、地図上の住宅をクリックするだけで顧客情報を閲覧することも可能で、地図付き顧客台帳を作成する手間が大きく低減できた。また例えば、訪問が成果を上げた場合、その近隣の顧客や同じような環境の顧客を表示して、どの順番で訪問していけばよいか把握したり、訪問の偏りに気がついたりすることも可能になった」と葛原氏は語る。

 結果、銀行員が一般の顧客にサービスを説明する機会が増え、コンシューマ事業は急成長。いまでは、法人向けサービスなどほかの主要な事業と肩を並べて、SMBCを支える一大事業になったという。


Teradata製品の拡張性とパフォーマンスが決め手に

 なぜ今回の事例で、両社はTeradataのDWHを採用したのか。その理由は「実用に耐えるパフォーマンスだった」と両者は口をそろえる。TeradataのDWHは、複数のSMPノードをインターコネクトを介して接続することで超並列処理(MPP)を実現している。これはメモリもHDDもプロセッサが共有しない構成を取るため、「Shared Nothing」の構造ともいわれており、Teradata製品に計り知れないパフォーマンスを生み出している。

 例えば、Oracleが発表した「HP Oracle Database Machine」では、「下位にHPのハードウェアを使い、HDD間をファイバチャネルで接続している。そこでオーバーヘッドが生じるほか、上位のOracle Databaseももともとスケーラビリティに乏しく、真のMPPとはほど遠い」とBrobst氏は指摘。

 また「それでもOracle製品にはOLTPに強いという優位点があるが、(上述の事例のように)DWHで解析を行おうとした際には、Teradataの右に出るものはいない」と述べている。



URL
  コカ・コーラ ウエスト ホールディングス株式会社
  http://www.ccwh.co.jp/
  三井住友銀行
  http://www.smbc.co.jp/
  Teradata
  http://www.teradata.com/

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( 川島 弘之 )
2008/10/15 09:55

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