米F5 Networks(以下、F5)では、企業がアプリケーションを的確に、安全に、高速に配信するための手段を提供するための、アプリケーションデリバリネットワーク(ADN)という構想を打ち出し、それにそった製品展開を行ってきた。つい最近も、そのための製品強化を行ったばかりで、これからもADNの展開に力を注ぐというメッセージをあらためて配信している。今回は、F5でマーケティングを担当している上級副社長、ダン・マット氏にADNについて話を聞いた。
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F5 マーケティング担当上級副社長、ダン・マット氏
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―まず、ADNを簡単に説明していただけますか?
マット氏
ADNとは、ネットワークにおいてポイントとポイントをつなぎ、アプリケーションを、迅速に、セキュアな形で届けるものです。これまでのネットワークでは接続性、つまりつなぐことだけが考えられており、インタラクションという部分は考えられていませんでした。ところが今日、企業規模に限らず、ネットワークの部分でもアプリケーションの問題が出てきたのです。そこでADNでは、ネットワークが知性を持ち、より信頼性のある環境を作れるようにしています。これによって、アプリケーションがスマートに、高速に運用できるようになるのです。
―ADNに近い構想を提唱しているベンダーもほかにありますが、その中でF5ならではのメリットとは何でしょうか。
マット氏
3つあります。まずは技術です。製品の基盤技術になっているTMOS(Traffic Management OS)はフル・プロキシアーキテクチャを持っており、入っていくものと出ていくものを高速に処理できます。このような技術はほかに類を見ません。
2つ目は、パートナーとの連携によるインテグレーションでしょう。Microsoft、Oracle、SAP、BEAといったアプリケーションベンダーと検証作業や共同開発を連携してやっていますから、顧客がこれらのベンダーの製品を当社製品と一緒に使った場合、セキュリティが高く、高速で、可用性の高い環境作りができるようになります。
従来のアプローチでは、アプリケーションとネットワークが独立してしまっていて、協力関係がなかった。ですから、アプリケーション側から見た時に「ネットワークでこんなことができたらいいな」という要望があっても、対応できていなかったんです。そこで当社では、この2つがきちんと連携して協調しながら体勢を整えていけるように取り組んでいます。最終形はビジネス面でのニーズになりますが、そこからホワイトペーパーに落とし、最終形をやりきるために必要な技術実装まで踏み込んだ形で、両者が連携した環境作りを推進するため、F5ではさまざまな指針を提供しているんですよ。
最後の3つ目は、オンラインコミュニティ「DevCentral」です。2万名を超えるユーザーが参加しており、ネットワークやアプリケーションのアーキテクチャをどうすれば使いやすくなるか、といった会話が促進されていますので、実際のシステム開発にも役立つ有効な情報交換が行われています。日本も世界で2番目にメンバーが多く、きわめて活発な国なんです。日本語版は最近提供できたのですが、英語版のみの時でも、活発な参加がありました。
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日本語化されたDevCentralのトップページ
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―2つ目に挙げられた取り組みは「Application Ready Network(ARN)」の名称で展開され、Oracle向けの強化が最近アナウンスされていました。ほかには、どのような取り組みを行っているのでしょうか?
マット氏
今考えられるのはVMwareなどの仮想化アプリケーションです。これはADNに適していると思います。また、企業のカスタムアプリケーションを持っている会社に対しては、ツールを提供することによって、環境作りをサポートすることも考えています。当社では、何百万ものエンドユーザーを抱えるベンダーとの連携ももちろん進めていきますが、カスタムアプリケーションに対しても同等の環境が得られるように、サポートを続けていこうと思っています。
―最後のDevCentralについて、日本でも活発に活動しているとのことですが、今年スタートした日本語サイトの効果はありましたか?
マット氏
3月にオープンして以来、4~6月期でほぼ倍になり、そのペースで現在も増え続けていますね。つい最近フォーラムもオープンしまして、技術的なアイデアをディスカッションしたり、iRulesに関する質問を受け付けたり、といったことが可能になってますので、さらに登録は増えていくでしょう。
―実際にDevCentralを効果的に活用した例としては、どんなものがあるのでしょう。
マット氏
海外の例ですが、例えば暗号化トラフィックのためにアプリケーションがうまく起動しない問題が話題になった時、なんとかネットワークで解決できないかという話がたくさん出てきました。また、DevCentralの中で毎年コンペをしていまして、何か問題が出てきた場合に、ここでクリエイティブなアイデアを出した人が参加します。この例としては、2年前に大規模な会社がスパム対策のアイデアを出して、そこから(BIG-IPの)Message Securityモジュール製品化につながっていったということがありました。
―一方でADNの構成要素を考えますと、F5では米Acopiaを買収し、NASの仮想化ソリューションをポートフォリオを拡大しています。この分野ではこれまで、ストレージベンダーによる買収がほとんどでしたが、ネットワークベンダーであるF5はなぜAcopiaを手に入れたのでしょうか。
マット氏
確かに、買収を仕掛けていたのはストレージベンダが多かったですね。しかし私たちが感じたのは、Acopiaと当社は類似点が多いということです。両社ともインラインデバイスを提供していますが、インラインというのはそんなに簡単な製品ではありません。また仮想化層を作ってどうやってデータセンターとつなげていくか、というアプローチにおいても、共通点を見いだしやすかったんです。
それぞれの製品を使うことで、ファイルの追跡もできますし、ユーザーが誰でどこから来ているか、またそれに対してどのようなポリシーを適用するか、ということが向上するメリットもあります。ユーザーとデータは、以前はきわめて遠かったのですが、それらの距離を縮めていこうという考えですね。
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WAN高速化製品のWANJetにおいては、12月5日にTMOSベースの新OSが発表された
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―具体的には、どのようにAcopiaの製品を生かしていくのでしょう?
マット氏
WANJetにAcopiaの製品を連携させると、データの複製が簡単に、効率よくできます。この2つを同時に使用することにより、パフォーマンスを10倍にも向上させられるでしょう。同じようなアプローチをしているものもありますが、競合となる製品は、アウトバウンドの設置をする製品が多く、根底の技術としては、インラインのAcopiaの方が優れています。また、WAFSのように支店からファイルサーバーを取り除いてデータセンターへの集約を進めるソリューションとは異なり、集約することも残すこともできるメリットがあります。
―買収したばかりのAcopiaの製品は別にして、既存製品はTMOSへの統合を進めるという方針を打ち出されていますが、これは順調に進んでいるんでしょうか?
マット氏
Webアクセラレータ、Webアプリケーションファイアウォールに加えて、WAN高速化のWANJetもまもなくTMOS上で提供しますし、SSL-VPNのFirePassも、将来的は統合するという計画は変わっていません。実際、TMOSのパフォーマンスにも満足していますし、統合による顧客の満足度も順調に現れてきていますね。FirePassについては、買収した時点ではまだTMOS側で受け入れる準備がなかったために、FirePass自身の機能強化を優先していましたが、必ず統合しますよ。
―最後に、ADNで不足している部分や、強化していかなければいけない今後の課題などがあれば教えてください。
マット氏
まだまだ強化できる点はあります。さまざまな製品とのインテグレーションも必要ですし、迅速に問題点・障害点を把握できるようにするか、といったこともあります。また、現在ではまだ手を付けられていませんが、「アプリケーションの設定を、いかにスムーズな形でネットワークの設定へつなげていくか」ということがあります。アプリケーションとの連携という点で顧客満足度につながっていくと思いますので、ぜひ取り組んで行きたいですね。
―ありがとうございました。
■ URL
F5ネットワークジャパン株式会社
http://www.f5networks.co.jp/
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( 石井 一志 )
2007/12/07 09:00
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