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インテル、vProに関するプレスセッションを開催、「企業向けPCの売上に貢献する」


 インテル株式会社は10月11日、「インテル vProテクノロジー・コンファレンス」の開催直後に、吉田和正共同社長と、米Intelデジタル・エンタープライズ事業本部デジタルオフィス事業部長のグレゴリー・ブライアント氏による、プレスカンファレンスを開催。vProについてあらためて説明した。プレスセッションの内容を、Q&A形式でご紹介する。


吉田和正共同社長 米Intelデジタル・エンタープライズ事業本部デジタルオフィス事業部長のグレゴリー・ブライアント氏

vProで企業向けPC市場は伸張

―vProの投入によって、今年のクライアントPCの売り上げには影響はあるのか?

吉田氏
 vProの導入で企業向けクライアント市場は伸張すると考えている。企業ユーザーはセキュリティの強いソリューションを望んでいる。すでにそれに対応した製品はあったものの、検証に時間がかかるため、簡単に導入が進まない状況が続いていた。vProでは運用管理ソリューションとセキュリティソリューションは、検証の時間を大幅に短縮できるようになった。これで企業における新しいクライアント導入が促進されると考えている。その影響で、下半期の企業向けクライアントPC出荷台数は必ず増加するだろう。


―今回のvProはデスクトップ用だが、今後、ノートPCにおいてもvProの提供を予定しているのか。予定しているとすれば、いつ提供をしていく予定なのか。

ブライアント氏
 ノートPC向けの製品は、来年上期にリリースする計画となっている。Centrinoテクノロジーで対応を予定している。


―モバイル版にはどんな機能が入ってくるのか? モバイルならではのセキュリティリスクにはどう対応していく計画なのか?

ブライアント氏
 今の質問に対して正確に回答するのは、本当はスライドで説明するのが一番わかりやすい。今回は一般的な意味での説明を行うが、ファイアウォール内でのセキュリティは、デスクトップでもノートでも同等のセキュリティを実現する。しかし、モバイル需要の場合、デスクトップ版にはない、セキュリティ機能も必要になってくる。最初に提供するモバイル版のセキュリティ機能としては、WAN対応の機能は実現されない可能性が高い。徐々に機能を増やしていきたいと考えている。


―モバイル版のブランドは? Centrinoでいくのか、それともvProブランドとするのか?

吉田氏
 ブランド戦略をどうするのかは、現時点では何も決まっていない。いくつかアイデアはあるが、現時点ではどれが生かされるのかは未定になっている。どのブランドがふさわしいのか、PCベンダーの意見なども聞きながら、決めていきたいと考えている。ベンダー側のニーズにうまくマッチするようなブランドとしたい。


―企業がvProが搭載されたクライアントPCを導入する場合、利用している全機種を搭載機に切り替えるのが理想的だが、現実としては搭載機、未搭載機が混在する環境となるケースが多くなる。その場合、機能の一部でいいから、未対応機においてもソリューションの一部を利用したいという声があがってくる可能性がある。その際の対応は何か考えているのか。

ブライアント氏
 残念ながら、ハードウェア的な制限があり、未対応機に一部の機能を提供することは難しいと考える。vProのような新しいテクノロジーをリリースする場合、どのタイミングでリリースを行うべきか、メーカーとして選択しなければならない。インテルとしては、2006年をスタートの時期と判断した。2006年を皮切りにvProを搭載したPCが登場し、ユーザー側はそれを見て、クライアント機の移行時期を決定するだろう。

 ただ、vProテクノロジーを利用して新たに管理コンソールが登場する計画があるので、これらの管理コンソール自身は、どのクライアントでも対応ができるだろう。


コンシューマ向けPCにvProの機能を提供することも

―今回、デモンストレーションを見て、vProの一部の機能はコンシューマユーザーにとっても必要な機能となるのではないかと思えた。vProをコンシューマ用に提供する予定はないのか。また、PCの基本機能とするような計画はないのか。

ブライアント氏
 その指摘は正しい。確かにコンシューマユーザー向けにもvProの機能の一部を提供する必要がある。ただし、提供形態や名称は違ったものになるかもしれないが、コンシューマユーザー向けにも同じ機能を提供する可能性は十分にあり得る。


―仮想マシンを構築するための、バーチャル・マシン・モニター (VMM) の提供範囲はどう設定しているのか? あくまでもセキュリティベンダー向けのものなのか、一般向け、例えばオープンソースソフトを開発するコミュニティなど向けにも公開していくのか?

ブライアント氏
 われわれが考えている戦略では、基本的な仮想化機能を提供できればよいのではないかと考えていたが、現在のところ、いろいろなアプローチをいただいている。

 付け加えると、VMMはライセンスベースのものではなく、無償で提供されているドライバだ。


―先日米国で開催されたIDFでは、パット・ゲルシンガー上級副社長が、「vProはSaaS向けクライアントである」とアピールしていた。この点をもう少し具体的に説明して欲しいのだが。

ブライアント氏
 今日のコンファレンスの中では、SaaS向けという点については触れていなかった。が、SaaSは重要な動きととらえている。vProはSaaS提供における最適なクライアントとして提供していく計画だ。具体的には、vProプラットフォームによって、アクティブマネジメントの一部の機能が取り入れられている。こうした機能自体が、SaaSで利用するのに最適なものとなる。2008年以降のロードマップでは、メータリング機能、PCストリングにおけるアクセラレーションといった機能を搭載していくことが計画されている。


―SaaSは日本でもかなり早く浸透しそうと見ているが。計画を早める必要性はないのか?

ブライアント氏
 SaaSはわれわれにとっても中核となるソリューション。IDFでゲルシンガーが話した通り。すでにロードマップがあり、その中にはすでにvProに入っている技術もあれば、これから搭載する技術もある。これから搭載する技術については、あらためて発表の機会を設けて、そこで発表したい。


シンクライアントではなくハイブリッドのアプローチが正しいやり方

―企業向けクライアントとして、vProとは対極にシンクライアントが存在する。シンクライアントとvProを比較した場合、vProにはローカルデータの管理をどうしていくのかという課題があると思う。この問題に対して、将来のロードマップではどう対応する計画なのか。

ブライアント氏
 なぜ、シンクライアントが必要になるのか? シンクライアントには長い歴史があるが、最初のシンクライアントはコスト削減のために提供され始めた。ところが、導入したところ、あまりコスト削減にはつながらないことが明らかになった。ただ、最近はセキュリティに着目され、セキュリティにおけるシンクライアントの展開が考えられるようになった。しかし、ユーザーの多くは、シンクライアントのような囲い込みを好まない。クライアントにおける実行の柔軟性をデスクトップでもノートでも、エンタープライズ全体でも実現していきたいと考えているユーザーが大半だろう。そうした需要に答えるためにも、ハイブリット型のアプローチがこれからの正しいやり方。それがこれから証明されていくことになる。

インテル マーケティング本部 本部長の阿部剛士氏
 この点について、補足させていただくと、官公庁ではセキュリティ保持のため、完全なローカル用、イントラネット用と2台のPCを使っている場合がある。vProを利用すれば、1台のPCで仮想化技術を使うことによって、物理的な分離が可能になる。これが実現できれば、今いわれているようなセキュリティ目的のシンクライアントの導入というニーズにも、自由にPCを利用するというニーズにも対応できるようになる。

ブライアント氏
 ハイブリット型のアプローチが最も正しいアプローチになるだろう。例えば、シールドストレージを実現するためには、トラステッド・エグゼキューションテクノロジーを利用すれば、情報防止が実現できる。


―vProに搭載されている機能のアップデート方法について確認したい。機能のアップデートはインテル自身が行うのか? クライアント管理のための機能の場合、ソフトベンダーからひとつの機能として提供されていくというイメージになるのか?

ブライアント氏
 われわれ自身についていえば、ファームウェアの一部を取り替えることはあり得るかもしれないが、大規模な交換は考えていない。あくまでも、前方互換という考え方で、数年間、同じコンソールを使って管理を続けるということを念頭に置いて開発を進めている。



URL
  インテル株式会社
  http://www.intel.co.jp/

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( 三浦 優子 )
2006/10/11 19:15

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