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「ストレージユーティリティを陰から支える」Brocadeの戦略


Brocadeの会長兼CEO、グレッグ・レイス氏
 ブロケードコミュニケーションズシステムズ株式会社は9月7日、プレス向けのラウンドテーブルを開催し、この中で米Brocade Communications Systems Inc.(以下、Brocade)の会長兼CEO、グレッグ・レイス氏が同社の戦略を説明した。

 市場をエントリー、ミッドレンジ、エンタープライズといった形、つまり小・中・大の3つに分類する、というのはどの製品でもよく使われる手法である。Brocadeでもまた、一般的なSAN市場をこの3つにセグメント化し、それぞれに製品を投入してきた。

 レイス氏はそうした自らのラインアップを「エントリーレベルの市場からエンタープライズのメインフレーム向けまで、他社に例を見ない広範な製品を持っている」と評し、この3セグメントにおいて、それぞれのニーズに応じた製品を提供しているし、これからも提供していくとする。

 これは当然、シェアを拡大するための施策である。レイス氏は、これらのセグメントのうち現在はまだトップになっていないエンタープライズ分野でも「2005年にはナンバー1になる」、と自信を隠さない。これは、先だってリリースしたディレクタ「SilkWorm 24000」が非常に好評なためだという。その理由に関して同氏は「SilkWorm 12000を利用しているユーザーも、アップグレードが可能だから。これまでの投資が無駄にならないような施策も当社は提供している」とアピールした。

 しかし、同社はそれだけで満足するのではなく、新しい分野にも積極的に進出しようとしているという。その1つがブレードサーバー分野だ。ライス氏は「今後のコンピューティング世界の中で1番伸びるところだと考えているので、ここでも1位になりたい」と述べ、期待の大きさを表明した。同社ではすでに、IBMのBladeCenter向けのスイッチングブレードを5月に発表しているが、今後はこれを拡大する方向で、2005年初めには別の2社向けの製品を提供する予定という。

 また、これまでは運用するアプリケーションごとに独立して設けられてきた、いわゆる「SANアイランド」を統合することにも力を入れている。同社では、複数のSANアイランドの相互接続を実現するマルチプロトコルルータをすでに提供しているが、今後は「単につなぐ」だけでなく、それを一歩進めた「ストレージユーティリティ(仮想化)」実現に向けて力を注いでいくという。

 ここでいうストレージ仮想化とは、たくさんのストレージをあたかも1台のストレージであるかのように運用する技術だ。これを実現するためには、ストレージインフラのほかにソフトウェアなどほかの要素も必要となってくるというが、レイス氏は「当社はあくまでインフラの提供のみ。(アプリケーションなど)ほかの要素はOEM先などとの協力によって提供する」と述べ、これまでと姿勢を変えないことを強調。ストレージインフラを中心に提供するベンダとして、ストレージユーティリティを“陰から支える”意向を示した。OEMが販売の多くを占める同社では、これまでそれらのベンダと競合する立場での製品提供を極力避けてきており、これからもそれを堅持する方向だと見られる。


ブロケードの代表取締役社長、津村英樹氏
 またレイス氏に続いては、ブロケードの代表取締役社長、津村英樹氏が登場し、国内での取り組みを説明した。津村氏はまず「日本ではワールドワイドに比べて10ポイント以上高い、79%のポートベースシェアがある。デファクトスタンダードと呼んでもいいのではないか」と現状を評する。こうした既存顧客が新しい技術を導入しようとした場合、「同社製機器なら互換性を維持できる」(津村氏)ことから、このシェアを生かして既存ユーザーのリプレースを狙う考えを明らかにした。

 さらに、「シェアは高いといっても、まだ日本のマーケット自体は欧米の1/5しかない」ため、SANを現在活用していないユーザー層の掘り起こしも積極的に行う意向。まず、日本ではまだ多く利用されているメインフレームでのSAN利用を促進する。通常、メインフレームではDASが多く用いられているが、同社のダイレクタなどでは、IBMのzSeriesが利用しているFICON(FIbre Connection)機能をサポートしているため、メインフレーム向けのSANソリューションを提供できるという。ブロケードではこうした特徴をアピールし、顧客が利用しているDASからSANへの移行を進めていく考えだ。

 加えて低価格なバンドル製品の展開や、ブレードサーバーへの対応を進める、などの施策によって、IAサーバーのSAN利用も拡大を目指す。特にブレードサーバーに関しては、「今後メインフレームなどからのマイグレーションも増えると思うが、こうした場合はサーバーの台数自体が非常に多くなるため、ブレードサーバーには高い管理性が求められる。サーバーをベースにしたアプリケーション管理には限界があり、ストレージを中心とした一元的な管理が世界で求められている」と述べ、今後も注力していく姿勢を見せた。



URL
  ブロケードコミュニケーションズシステムズ株式会社
  http://www.brocadejapan.com/
  米Brocade Communications Systems Inc.
  http://www.brocade.com/

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( 石井 一志 )
2004/09/07 19:29

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