「日本市場はIPv6に期待、クラウドは現状でも対応可能だ」-Blue CoatネスミスCEO


 ProxySGなどのネットワーク製品を手掛ける米Blue Coatが、米Packeteerを買収してから2年近くが経過。その間に、クラウド型ソリューションが大きく注目されるようになるなど、ネットワークの世界も様変わりしている。今回は、来日したブライアン・ネスミスCEOに、現状を踏まえた同社の戦略と動向について聞いた。


米Blue Coatのブライアン・ネスミスCEO

―いわゆるリーマン・ショック以降、米国での投資動向はどうなっているとお感じでしょうか?

ネスミスCEO
 一般的な傾向として、2008年末以降、多くの会社が慎重になったが、今年は持ち直し気味で、昨年夏の終わりごろから、ITに関しては購入する必要がある、という動きが見られます。ソリューションとしては、セキュリティやプロバイダー向け、ROIの高いもの、ということで動きが出ていますね。


―そうした中で、Blue Coatのビジネスはいかがでしょう。

ネスミスCEO
 直近の状況は決算発表前でお話しできませんが、2009年に関しては、経済の環境はチャレンジングでありましたが、当社はその中でも、多くの企業と比べて成長することができました。


―それは、Blue Coatの手掛ける領域が投資の優先順位と認められている、ということでしょうか?

ネスミスCEO
 短く答えれば、イエス、の一言です。

 きちんとお答えすると、当社のソリューションは、生産性を高めるために使うことで成長できるものですし、インターネットの脅威に対応するためにも利用できます。この2つの方向とも、予算に組み込んでもらえているんですね。

 その中でももっとも訴求できる部分は、WAN最適化、ゲートウェイセキュリティ、アプリケーション配信(ADN)といったソリューションで、こういった部分が価値提案として認められたのだと考えています。


―IT投資全体を見ると、どこが一番ホットな部分だと感じておられますか?

ネスミスCEO
 IT投資、という意味では話す立場にはいませんが、業界全体の傾向を見ると、仮想化の伸び、というものが1つありますね。2つ目のトレンドとしては、クラウドサービスも挙げられますし、ビデオも、企業の内外でますます重要なビジネスツールになってきた。4つ目は、モバイル環境が様変わりしているということで、音声ではなくデータネットワークとのしての利用が広がってきました。


―今、お話しいただいたように、アプリケーションというものが非常に増え、それらがネットワークに載るようになってきました。そういった視点から、Packeteer買収を振り返っていただけますでしょうか。

ネスミスCEO
 Packeteer買収には多くの理由がありました。新たなチャネルを手に入れられたことも大きいですし、技術面では、特に(アプリケーションを識別する)PacketShaperの技術を得たのは、非常に喜ばしいこと。今後の戦略的なプラットフォームとして位置付けています。メリットの1つ目は、700近いアプリケーションの識別を細かくできる点、また2つ目はネットワークリソースの保護と制御が可能になる点です。これらを使うことで、何が起きているのかという可視化を提供できます。お客さまの拠点でPacketShaperを使ってネットワークのアセスメントをするということがよくあるのですが、多くのお客さまは、その結果を非常に驚かれます。

 今のPacketShaperは、2年前のものと大枠で同じ機能ですが、当社では、その機能をさらに拡張しようと模索しているところ。また、この技術によってProxySGのてこ入れもしていきたい、と考えています。


―そのProxySGでは、近年、セキュリティへの対応を強めているような印象があります。同製品を「セキュアゲートウェイ」と位置付けるような展開もされていますが、セキュリティ製品としての側面も、強く訴えていかれるのでしょうか?

ネスミスCEO
 当社では、ずっとアクセラレーションとセキュリティの双方にフォーカスをしてきたのですが、CacheFlowとしてスタートした当初は、アクセラレーションの方に軸足が置かれていました。これを、数年間に変更し、今ではセキュリティとアクセラレーションのバランスをとるようになっています。

 またこれからも、お客さまがインターネットからの脅威を適切に管理できるように、引き続き投資をしていきます。3~4年前の脅威は主にメールからのものでしたが、今はこれがWebベースになった。クラウドベースのサービスを向上し、マルウェアへの対応をお客さまができるように、支援していくつもりです。インターネットの危険な要素から、一番いい形で守っていけるのは、当社のProxySGを使っていただけることなのです。


―クラウドに関しては、いかがでしょうか。現状、米国にサーバーがあることの多いパブリッククラウドサービスの場合、日本との距離の問題から、遅延などが大きな影響をおよぼすことも考えられます。そういった状況の解決には、アクセラレーション製品を持つベンダーがより力を発揮できるのではないかと思うのですが。

ネスミスCEO
 当社の戦略としてはシンプルなものです。ProxySGでは、クラウド環境についてもすでに、アクセス性能を増強することができます。日本からのものも含めて、クラウドへアクセスする際の高速化を図れるでしょう。また、当社のソリューションはインフラの高速化のみならず、セキュリティ対応というメリットも提供できます。

 わたし自信は、クラウドをそれほど大きな市場であるという見方はしていません。市場の商機を拡張していけるのは、中規模のお客さまに対してでしょう。ただ、クラウドではそれ固有のセキュリティ要件が出てくるだろう、とは思っています。社員が安全にクラウドに入れるよう、暗号化トンネルを造ったり、適切な認証を行ったりすることです。もちろん、適切なパフォーマンスを得られるようにするための管理も必要でしょうね。


―クラウドということでは、エンタープライズ向けビジネスを中心とするBlue Coatが、コンシューマ向けのサービスを提供していますね。これは、どんな意味があるのでしょう。

ネスミスCEO
 K9(K9 Web Protection、Webフィルタリングソフト)のことですね。当社の社内で少数の人間が、情熱を持って、子供を持つ親向けのソリューションを提供したいと思っているのです。市場として見ている、ということではありません。ただ、マーケティングの価値としては高いものがあると考えています。企業でも、K9を家で使っていて、子供の手助けをしているのを見ていますからね。

 今は英語版ですが、日本だけでなく、中国や南米、欧州などから、多言語への対応に関して要望があるということは認識しています。多額の投資をしているわけではなくので、お約束はしにくいですけれど、対応していきたいとは考えていますよ。


―さて、日本でのビジネスについてお伺いします。現在の日本法人をどう見ていらっしゃいますか?

ネスミスCEO
 日本法人の重要な役目としては、何を要求されているのかを理解し、どういったところでお手伝いができるのかを理解し、お客さまにどう対応できるのかをお伝えするといった、客さまと近いところでの視点を持つことがあります。お客さまと近いところで、ビジネスをする必要があるでしょう。(マネージングディレクターの)ベネット氏が着任して1年ほどになりますが、はっきりとしたリーダーシップで、引っ張ってくれていると思いますよ。

 日本法人でもっとやってもらいたいと思うのは、IPv6についてです。これは他国に先んじていて、多くの企業で注目されていますから、この領域などを含めて、日本のチームをもっとアグレッシブな形で引っ張っていってもらいたい。

 ちなみに、日本のお客さまは、クオリティーやパフォーマンスに対する要求が厳しいですね。そのおかげで、品質と性能向上に役立っているといえます。


―国内ではもともと、パケッティアの方がビジネスが大きかった印象がありますが、合併した効果はあったのでしょうか。

ネスミスCEO
 これは日本に限らずですが、ProxySGのお客さまにPacketShaperを販売する、もしくはその逆のパターンといった、クロスセルのチャンスは大きくなりました。両方のソリューションをお客さまに提供していく、という意味で強さが出せると思っています。


―ありがとうございました。




(石井 一志)

2010/2/12 13:00