「パートナーと成長したい」15周年のジェイズが語る、ディストリビュータの在り方
ネットワーク・セキュリティ製品のディストリビュータであるジェイズ・コミュニケーション株式会社(以下、ジェイズ)は、2010年4月で15周年を迎える。仮想化やクラウドなどトレンドの急変するIT業界において、ディストリビュータのミッションとは何か。15周年の区切りを「第二の創業」と位置付ける代表取締役社長兼CEOの愛須康之氏に話を聞いた。
―ジェイズについて教えてください。
代表取締役社長兼CEOの愛須康之氏 |
愛須社長
当社はネットワーク・セキュリティ関連の技術を提供してきた会社です。1995年に大阪で創立し、2001年に東京へ進出。現在は両本社制となっています。もともとは技術力(SI)のみの提供してきましたが、1999年に当時のNetScreen製ファイアウォールの輸入販売を始めました。
それから2005年にIronPort(現Cisco)、2008年にMirage Networks(現Trustwave)と代理店契約を結び、ディストリビューション事業を本格化。現在は、従来のインテグレーション事業とディストリビューション事業、それと保守やマネージドサービスを提供するサービス事業の3本柱でビジネスを進めています。
―15周年ということで「第二の創業」というメッセージを出していますが、その意図は?
愛須社長
そうですね。東京に進出したのが2001年。あのころはNetScreen製品を主力にしていましたが、まだまだ10番目くらいの代理店で、東京で成功するためには、ここでまずトップになろうと思いました。それから周辺サービスなども増やして、2008年にようやく出荷台数的にトップになることができました。気がつけば従業員も100名規模になり、ここからさらに新しいステージに進もうというのが「第二の創業」の真意です。
―現在の主力の事業は?
愛須社長
最も収益の高いのはサービス事業ですが、主力となるのは、ディストリビューション事業ですね。現在、Juniper製品、Web・メールセキュリティ製品のIronPort、エンドポイントセキュリティ製品のTrustwave NACなどを取り扱っています。
―事業戦略は?
愛須社長
やはり、主力のディストリビューション事業に注力します。Juniper製品を例に挙げれば、NetScreen時代から扱ってますので、技術的ノウハウは他社に引けを取りません。Juniperからも最も伸ばしたい、伸びてほしいパートナーの1社ととらえていただけているので、当社の威信がかかっています。
一方で、もともとは製品を持たないマルチベンダーのNIerとしてやってきましたので、この分野(インテグレーション)も引き続き伸ばしていくつもりです。
ほかのSIer/NIerと差別化という面でいうと、直販をしないという点が戦略です。
―それはなぜ?
愛須社長
IT業界は成熟を迎えつつあり、建設業界の形態に近づいていると感じています。大手ゼネコンを中心に、内装屋、電気会社、建材屋さまざまなプレイヤーが自分の役割に徹して、1つの建物を造っていく。IT業界も同じように、今後はベンダー、ディストリビュータ、リセラーの役割が今以上に明確になっていきます。
当社はJuniper、Cisco製品を取り扱っていますが、いずれも直接契約したわけではなく、NetScreenがJuniperに、IronPortがCiscoに買収されたことで、今のこの形になっています。ベンダーでは再編が相次ぎ、競争が激化する中、パートナーとして価値の見いだせないディストリビュータは、いつ切られてもおかしくありません。
そんな中、当社がこれまでやってこれたのは、ひとえにベンダーの戦略を理解し、リセラーの強みに変える架け橋になってきたからです。だからこそ、これからもパートナーを第一に、彼らがエンドユーザーの評価を得られるように、ディストリビュータとしての立場を貫くのが“正解”だと考えているのです。
―エンドユーザーの気持ちが見えにくくなりませんか?
愛須社長
ディストリビュータといっても、方針としては、エンドユーザーとの接点をたくさん持っていくので、それは大丈夫です。間接販売オンリーでも、エンドユーザーへの営業活動やパートナーに同行してのプリセールスなどを行っていきます。その流れで最終的にものを納めるときには、パートナーであるSIerや通信事業者に納めてもらうという考え方です。サービス事業でも契約はパートナー経由で、実際の作業は直接してほしいというお客さまの声もありますしね。
当社は、パートナーにとっての“スーパーサブコン的”存在でありたいと思っています。
―同業他社と比べてジェイズの強みは?
愛須社長
もともと技術・サービスを中心にやってきた文化があります。中にはRFP策定から顧客とかかわったり、製品検証を一緒にやったりもしました。マルチベンダー対応で技術を提供してきた背景が、単なる輸入商社的な会社にはない技術力を培ってくれた点が大きいですね。
もう1つ。企業規模的にオーバーヘッドが小さく、機動力に優れている点が挙げられます。上場している大企業だと、ビジネスを進める上で、ここまでしか利益は落とせないなどさまざまな制限が付きます。それに対して、当社は薄利での経営が成り立つ。
また、若さも強みだと思っています。15年やってきたわたし自身43歳で、役員もアラフォー世代がほとんどです。このあたりも機動力に表れているのかも知れません。
―今後の注力点は何でしょう?
既存ビジネスはもちろんのことですが、新たな展開として2009年12月に芝通の大阪事業所を譲り受けました。ネットワーク・セキュリティに加えて、プラットフォームとしてサーバーを提供することも多いのですが、そこで重要となる仮想化技術のノウハウを採り入れるためです。
パートナーが要望することに、さらに幅広く応えていきたいと考えています。
―仮想化事業は具体的にどんなことを考えていますか?
愛須社長
当社でアプリケーションを開発・販売しているわけではないので、プラットフォームの提供ということになりますね。プライベートクラウドへのサーバー統合を支援したり。クラウドには高可用性のシステム構築が必要なので、サーバーの冗長化やバックアップ・レプリケーションまで含めたプラットフォームとして提供していくつもりです。
―クラウドのお話が出ましたが、「所有から利用」へシフトする中、物売りのディストリビューション事業に影響はありませんか?
愛須社長
サーバーやPC、あるいはアプリケーション開発は減っていくかもしれません。ただ、当社が取り扱っているネットワーク・セキュリティ製品は逆に出ていくと見ています。
今後、業務アプリがどんどんクラウド化されると、ネットワークトラフィック量は当然増えますよね。対応するために、ネットワーク製品の需要が増えるというわけです。買い手がエンドユーザーから事業者に移っていくという変化はあるでしょうけどね。そういった影響はあるでしょうが、当社としてはクラウドは1つのトレンド。これによって業績が良くなる、悪くなるという意識はあまりありません。
―第二の創業の幕を開けてジェイズが、改善したいところ、あるいはより強めていきたいポイントは?
愛須社長
細かいところはたくさんありますが、まずは3事業をしっかり大きくしていくこと。それぞれの事業部に役員を就けて、将来的には「ジェイズホールディングス」の下に独立した法人として立ち上げるような構想はあります。
市場は競争が激しくなっているので、今以上に機動性を持って勝ち残れるようなスピード感をつけていきたいですね。JALの例を見ても、危機感を持つこと、その管理をしっかり行うことも重要。社員としっかり危機感を擦り合わせていかねばなりません。
そういう意識の下、サービス面ではJuniperのトップ代理店として、ジェイズを売っていきたいし、Juniperに続く新製品も発掘しながら、業界のSIer/NIerとしてのジェイズの知名度を高めたいと思っています。
そのためにもパートナーが重要。今後も、パートナーとともに成長していきたいですね。
―ありがとうございました。
2010/2/4 11:00