リバーベッド、Webアプリ高速化などを強化したWAN高速化装置向けOS新版

モバイル向けソフトも強化、クラウド対応の仮想ソフト版も提供へ

リバーベッドのシニアテクニカルコンサルタント、寺前滋人氏
Webアプリケーションの高速化機能
ICAの高速化が可能に

 リバーベッドテクノロジー株式会社(以下、リバーベッド)は12月9日、WAN最適化アプライアンス向けOSの新版「Riverbed Optimization System(RiOS) 6.0」と、PC向けWAN最適化ソフトウェアの新版「Steelhead Mobile 3.0」を発表した。「高速化と使い勝手の追求、という両側面から機能を強化した」(リバーベッドのシニアテクニカルコンサルタント、寺前滋人氏)点が特徴。いずれも、12月中旬から販売を開始する。

 リバーベッドのWAN高速化アプライアンスである「Steelhead」は、拠点に設置したアプライアンス間の通信を最適化し、限られた帯域を有効に利用できるようにする製品。データキャッシュと差分のみを通信する技術によって効率化を図るほか、CIFSをはじめとする各プロトコルの最適化、圧縮など、複数の技術を組み合わせて高速化を実現している。

 このアプライアンスのOSとなるのが、今回バージョンアップしたRiOSで、新版ではまず、Webアプリケーションの高速化技術が追加された。具体的には、これまで対応していたバイトレベルキャッシュの機能に加えて、繰り返し利用される、画像データ、ボタン、スタイルシートなどをキャッシュする「オブジェクトキャッシュ」機能を用いて、高速化を実現している。

 また、Citrix XenAppなどで利用するICAの最適化機能も追加された。ICAでは、暗号化が施されていることに加えて、同じポート番号で複数の種類のデータをやりとりされるため、「それが優先しないといけない通信かどうか、ポート番号だけではうまく判断できない」(寺前氏)という課題がある。これを解決するため、ICAを一度Steelhead側で復号し、最適化処理を実行。さらに、Citrixが通信に付けている優先度に従って、Steelhead側のQoSを設定できるようにし、より効率的な通信を可能にしたとのこと。リバーベッドによれば、最大83%の帯域幅削減、および最大40%のユーザー応答時間向上が見られたという。

 このほかRiOS 6.0では、Mac OS X Leopard/Snow LeopardでのCIFS最適化、印刷トラフィックに対するCIFS最適化、Oracle EBS 11i/12におけるWebベースアプリケーションの高速化、SSL証明書設定の単純化、といった強化が行われている。

Steelhead Mobile 3.0での機能強化

 一方のSteelhead Mobileは、主に外出先のノートPCなどで利用されるWAN最適化クライアントソフト。拠点に設置されたSteelheadアプライアンスとの間で、通信を最適化する機能を備えている。新版では、Windows 7をサポートしたほか、Windows 7とWindows Vistaの64ビット版にも対応可能になった。また、「クラウドサービスの普及で、モバイル環境でも、Webの高速化がより必要とされている」(寺前氏)ことから、RiOS 6.0と同等のWeb高速化技術をサポート。最高60倍の高速化、最大98%の帯域削減を実現したという。

 さらに、社外で利用していたノートPCを、Steelheadアプライアンスを設置している環境に持ち込んだ場合、両者のキャッシュを同期させる「ブランチワーミング」機能を搭載した。寺前氏はこの機能について、「ノートPCのキャッシュをアプライアンスと共有したら効率的ではないか?という発想から生まれた機能で、PCが持っていたキャッシュをアプライアンスに還元する。また、アプライアンス側のキャッシュも取り込むため、ユーザーがオフィスから再度出てもすぐ、キャッシュがある状況で使えるようになる」とメリットを説明している。価格は、ポリシー管理などを行う「Steelhead Mobile Controller」と、30ライセンス分のクライアントソフトウェアを合わせて230万円程度から。このほか、Steelheadアプライアンスが別途必要である。

Virtual Steelheadの提供により、クラウドサービス事業者の投資負担を軽減できるようにするという

 なおリバーベッドでは、クラウドコンピューティングの普及を見据えて、仮想アプライアンス版のSteelhead「Virtual Steelhead」を開発中であることも明らかにした。米Riverbed Technology グローバルアライアンス担当副社長のベヌゴパル・パイ氏は、「コスト削減や弾力性など、多くのメリットがあるクラウドだが、クラウドを介してサービスを提供すると、遅延がパフォーマンスに影響をおよぼす」という点を指摘。これを解決するため、クラウドサービス事業者に対して、コストメリットのある形でWAN最適化を提供できる、仮想アプライアンス形態での製品化を計画しているとした。Virtual Steelheadでは、利用ユーザー数や帯域など、何らかの指標を用いて従量課金で提供することも考慮しているという。

 加えて、登場しつつあるクラウドストレージについては、「データを保存する場所とユーザーの距離が離れる」点をあわせて指摘。iSCSIに特化し、ブロックレベルでの通信最適化を提供する「Riverbed Cloud Storage Accelerator」も開発中とした。こちらもWAN最適化製品同様、ハードウェアアプライアンスと仮想アプライアンスを提供する計画で、Virtual Steelheadを含め、いずれも2010年に登場する予定とのことだ。

 「Virtual Steelheadなどによって、LAN的なスピードでクラウドを活用できるようになる。また、クラウドストレージについても、WANをSANのように利用可能なソリューションを提供できるだろう」(パイ氏)。




(石井 一志)

2009/12/9 17:46