日本HP、PB級のスケールアウト型NASシリーズ「StorageWorks X9000」
日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は12月9日、ペタバイト(PB)級の大容量データを効率的に管理し、容量とパフォーマンスを自在に拡張できるハイエンドNASシリーズ「HP StorageWorks X9000 Network Storage System(以下、HP X9000)」の販売を開始した。
■スケールアウト型の「HP X9000」シリーズ
ストレージワークス事業本部の高橋宏人氏 |
HP X9000シリーズは、スケールアウト型のNASシリーズ。ラインアップにNASアプライアンス「HP X9320」、大容量NASアプライアンス「HP X9720」、NASゲートウェイ「HP X9300」をそろえる。これら複数の異なるアプライアンス製品を束ねて1つのクラスタファイルシステムを構成し、アプライアンス単位で容量と処理性能を拡張できるのが、HP X9000シリーズの特長だ。
ストレージワークス事業本部の高橋宏人氏は、「例えば、規模の小さなアプライアンスから始めて段階拡張できるとともに、スケールアウトしたそれらを最大16PBの“シングルネームスペース”として構成することが可能。巨大な1つのシングルネームスペースを持つことで、ハードウェア容量の限界を気にすることなくデータを保存できるほか、複数のファイルサーバーを別々に管理する手間がなくなる」とメリットを語る。
また、米HPが8月に買収完了した米IBRIXの並列ファイルシステム「IBRIX Fusion」を搭載し、「データの階層化管理」「統合リモートレプリケーション」「自動リバランシング(平準化)」といった、ファイルサーバーに必要な機能を実現。機能ごとに追加費用のかかる他社製品と違って、標準搭載することで差別化を図っている。
データの階層化管理により、使用頻度の低いデータを高性能なストレージから低コストのストレージにオンラインで移行することが可能。
統合リモートレプリケーションでは、複数のストレージで構成されたプライマリサイトからセカンダリサイトへ、並列的なレプリケーションを実現する。「通常、レプリケーションはCPUパワーを要するため、ストレージとしてのボトルネックの原因になったりする。これに対し、並列レプリケーションではリソースに余裕のあるマシンから順々にコピーするので、パフォーマンスの低下が起こらない」(同氏)のがメリット。
自動リバランシングでは、複数のアプライアンス間でデータを平準化。「特定のディスクにデータが集中しないよう分散させ、ワークロードの均衡化を行うことで、コントローラーのボトルネックを回避することができる」(同氏)という。
HP X9000シリーズの特長。巨大なシングルネームスペースを構成できる | ハードウェア容量の限界を気にすることなくデータを保存できるなどのメリット | ファイルサーバーに必要な機能を標準搭載 |
■ラインアップされた3種のアプライアンス
用途に合わせて拡張可能な3種のアプライアンス |
こうした環境を実現するために用意されたのが、X9320/X9720/HP X9300のアプライアンス製品だ。
HP X9320は、容量と性能の要件に応じて最適な拡張が可能なアプライアンスモデルで、パフォーマンス重視の「21TB SAS版」と容量重視の「48TB SATA版」の2種類が提供される。一方、HP X9720は、最小構成82TBの高密度実装が可能な大規模アプライアンスモデルで、2台のブレードサーバーとともに専用ラックにラッキングして提供。「容量単価197円/GBで提供するため、いままで以上に低コストで大容量が実現できる」(高橋氏)としている。
HP X9300は、上記2つのアプライアンスからコントローラー部を切り出した製品で、日本HPが提供する「HP StorageWorks Modular Smart Array(MSA)」「同 Enterprise Virtual Array(EVA)」「HP LeftHand P4000」といったSANストレージと組み合わせてファイルストレージを構成する。サーバーとHP X9300間は1/10 Gigabit Ethernet(GbE)、InfiniBandによる接続が可能で、HP X9300とSANストレージ間は、FC/SAS/iSCSIから選択できる。
こうして組まれた異種混合のストレージ環境を、横軸にスケールアウトさせて、巨大なシングルネームスペースを構成できるというわけだ。高橋氏は「アプライアンス製品では、将来の拡張を見据えた設計を採用。業界標準のハードウェアを採用し、増設時には新プロセッサなど最新技術を搭載したアプライアンスを追加できる」点も強調している。
価格は、HP X9320の21TB SAS版が2181万9000円から、48TB SATA版が1887万9000円から、HP X9720(容量82TB)が1694万7000円から、HP X9300が617万4000円から。日本HPでは、一般的なファイルサーバーやアーカイブ用途のほか、メディア・エンターテインメント、コミュニケーション、ヘルスケア、ライフサイエンス、HPCなどの分野に訴求する。
■次世代インフラ戦略の主要構成要素
米HP StorageWorks Division, Unified Storage Division, Worldwide Business Development Managerのピート・ブレイ氏 |
また、12月3日に発表された次世代インフラ戦略「HP Converged Infrastructure」の主要構成要素としても推進する方針。同戦略は、「サーバー、ストレージ、ネットワーク、管理ソフト、電源&冷却を主要コンポーネントとし、インフラの統一管理を可能にすることで、仮想化され、自動化されたデータセンターを実現する」(米HP StorageWorks Division, Unified Storage Division, Worldwide Business Development Managerのピート・ブレイ氏)もので、HP X9000が「ストレージ」に該当する構成要素となる。
ブレイ氏は「データ量の爆発的増加やインフラの複雑化により、世界中の企業が『投資の70%を運用コストが占める』という共通の課題に直面。競合との差別化にわずか30%しか割けないでいる」と課題を提示。「この割合を逆転させるのが同戦略の目標だ。今回のNAS新製品はその第一歩。2010年はHPにとってスケールアウトNASの発展の年になる」と述べた。
2009/12/9 15:46