「仮想化でエンタープライズITをシンプルに」-CitrixテンプルトンCEO


米Citrix マーク・テンプルトン社長兼CEO(左)。右奥はシトリックスのマイケル・キング社長

 シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社(シトリックス)は9月4日、米Citrix マーク・テンプルトン社長兼CEO来日に伴う記者会見を開催。その中でテンプルトンCEOは、エンタープライズ向けのITについても、コンシューマ向けと同等の“シンプルさ”が必要だという点を強調。仮想化技術がそれを実現する上での大きなキーテクノロジーになると説明した。

 テンプルトンCEOは、「ITのコンシューマ化、つまり、よりシンプルなシステムを求める消費者の嗜好(しこう)が、エンタープライズITにも影響をおよぼすだろう。誰でも、シンプルなシステムが好きだからだ」という点を指摘。そして、銀行のATMを例に取り、「ATMとそのユーザーインターフェイスが広く使われているのはシンプルで価値があり、おまけに何のトレーニングを受けることなく利用できるから。しかしエンタープライズのITはこれとまったく異なるのが現状。将来的にはシンプルさを提供しないといけない」と主張する。

 過去のITシステムでは、複数の部分から構成される分散コンピューティングのアーキテクチャが採用されており、それぞれが高度に、また複雑に相互接続され、柔軟性に欠けてしまっている。また、各分野でさまざまな技術が長年にわたって導入された結果、ITが雑然としてしまっているという。この点について、ITを車に例えたテンプルトンCEOは、「かつて米国メーカーは10万点の部品で車を作っていたが、それぞれの部品の信頼性が99.9%とすると、車全体での信頼性は80%程度になる。しかし日本メーカーは5万点の部品で車を作っており、部品の信頼性が同じでも、車全体の信頼性は90%を超える。このように、部品が少ないと信頼性が高くなるし、コストも下げられる」と説明する。

 この車の例と同様に、ITでも部品を削減することで複雑性を解消するアプローチが望ましい。その際の、ITのシンプル化をけん引するのが、Citrixが注力している仮想化の技術だとする。「仮想化によって、部品点数を削減すると同時に、既存インフラをできるだけ排除する。そうすると、(インフラに縛られた)硬直化された構造がなくなり、より柔軟性の高い環境が実現可能になる」(テンプルトンCEO)という、シンプルな状況が生まれるのだ。ただしシンプルといっても、機能が劣っているというわけではない。「シンプル=機能、能力が少ない、と誤解されることがあるが、実はシンプルであればあるほど機能も能力も高くなる。それは、シンプルであればユーザーが適切にコントロールできるからで、生産性やビジネスチャンスを高められる。また、選択の自由があるため、どのような環境や端末でも利用できる。つまり、どのような場所でも仕事ができるということだ」(テンプルトンCEO)。

 なお、Xenの開発元であるXen.orgは8月31日(米国時間)に「Xen Cloud Platform(XCP)」イニシアチブを発表している。テンプルトンCEOによれば、エクスターナル(パブリック)クラウドとインターナル(エンタープライズ/プライベート)クラウドとの相互運用性を確立するこのイニシアチブにより、仮想化によって得られる柔軟性を、さらに拡張する考えだという。「仮想マシンとしてインターナルクラウド上で実行されるものが、エクスターナルクラウド上でも実行されるようになる。この両者をつなぐ分野でも機会があるし、管理、パフォーマンス、セキュリティ、アプリケーション開発といった分野にも、多くの価値が生まれてくるだろう」(同CEO)。




(石井 一志)

2009/9/4 15:42