マイクロソフト、環境への取り組みを説明~2012年までに30%を削減


 マイクロソフトは28日、マイクロソフトの環境への取り組みに関する記者会見を開催。全世界でマイクロソフト製品の売上げに対するCO2排出量を、2012年までに対2007年比で30%削減するなどの目標を掲げた。

マイクロソフトは売上げに対するCO2排出量を30%削減へ

環境問題に関する取り組みのリーダー役を務めるマイクロソフト政策企画本部 竹原 正篤氏

 社内外において環境問題に関する取り組みのリーダー役を務めるマイクロソフト政策企画本部 竹原 正篤氏は、マイクロソフトの環境に対する基本方針について、「ソフトウェア技術による環境負荷を削減するとともに、事業活動全般にわたる環境負荷削減に取り組んでいる」と述べた。「対2007年比で2012年までに30%を削減」という目標は米MSのCEOスティーブ・バルマー氏が全社あてメールで通達したという。この目標は3月にマイクロソフト社内向けに発表された。

 また竹原氏は、「ITを活用したエネルギー効率の向上」「技術的進歩の礎となる研究開発」「環境に対する責任ある起業活動」を3つの柱として、すべての取り組みをパートナーシップを通じて推進、持続的に環境保全に取り組んでいくと述べた。



IT機器の消費電力量は2025年までに現在の5.2倍に

マイクロソフト最高技術責任者の加治佐 俊一氏

 次にマイクロソフト最高技術責任者の加治佐 俊一氏がIT活用によるエネルギー効率の向上について説明。IT機器の総消費電力量は急増しており、2025年までに現在の約5.2倍に増加するとのグリーンIT推進協議会試算データによる予測を紹介した。

 加治佐氏はマイクロソフトの環境に対する取り組みのうち、技術的なアプローチについて例を挙げて説明。WindowsのクライアントOSでは、Windows Vistaから搭載した省エネ機能「ハイブリッドスリープ」は、「スタンバイとハイバネーションのいいところを兼ね備えた機能」として紹介した。「使っていない時には電力を消費しないように落とし、使いたいときにはすみやかに復帰するように」を目指した。この「ハイブリッドスリープ」によって、年間760Kwh=0.5トンのCO2が削減できる計算になるという。

 また、Windows Server 2008から仮想化機能「Hyper-V」が搭載されたが、この「Hyper-V」機能を活用し、サーバーを集約することにより消費電力を88%削減したという新潟ポリマーの導入事例を紹介。ソフトウェア技術によりサーバーを集約することで「スペースとハードウェアコストの節約、それに消費電力の3つが削減できた」。新潟ポリマーでは1400ワット使用していたサーバーの消費電力が160Wになったという。

 マイクロソフトでは「Microsoft Partner Widgets」のコーナーでサーバー仮想化による環境負荷を低減する試算ツールを配布しており、サーバー仮想化によって、CO2排出量とコストがどれだけ低減できるかのシミュレーションができる。

マイクロソフトの環境へのコミットメント急増するIT機器の電力消費量(グリーンIT推進協議会試算データ、2008年)「スペース、ハードウェアコスト、消費電力がソフトウェアだけで削減できた」という新潟ポリマー社長 青木秀明氏


Windows 7とWindows Server 2008 R2の省エネ機能

 今後の製品については、竹原氏はまず、Windows 7の省エネ機能について、Windows Vistaからの省電力オプションについて紹介。Windows 7ではアクティブディレクトリでグループポリシーの設定が可能なので、そちらを設定すれば企業や部署で統一した省エネ設定が可能だと述べた。

 Windows 7で新たに電源設定の分析と改善コマンドを用意したという。電源設定コマンド「POWERCFG」にオプションとして「-ENERGY」を用意。コマンドラインで「C:\>POWERCFG -ENERGY -OUTPUT ...」と入力することで、Windows 7の電源設定について、効率的な設定になっているかを自動で分析し、レポート化する。

 また、Windows 7と同時にリリースされるWindows Server 2008 R2では、論理コアの関連ワークロードをトラッキングし、使用していないコアをスリープさせる新しい技術を用いた「Core Parking」機能を新たに追加。このほか、サーバーのPステートの調整機能によりプロセッサーパフォーマンスのコントロールを可能にしたこと、およびSANブート対応により、ディスクなどの駆動機器を集中管理することで資源と電力節減が可能になった点が紹介された。

Windows 7の省エネ機能Windows 7の電力消費量の改善(Vista SP1との比較)Windows 7では、電源設定コマンドのエネルギーオプションで電源効率の診断レポートが可能に
Windows Server 2008 R2の消費電力節減機能仮想化により、平均的なサーバー使用電力の効率が5倍以上に改善n


より大規模な仮想化とクラウドによる環境への取り組み

 加治佐氏は「マイクロソフトでは、Hotmailをはじめとするliveサービスなど全部で200くらいのサービスを提供しているが、こうしたクラウドコンピューティングへの取り組みは今後さらに加速していく」として、こうしたクラウドを支える基盤となるデータセンターにおける環境への取り組みを紹介した。

 マイクロソフトでは、米ワシントン州クインシーでは水力発電だけを試用した、炭素を排出しない「カーボン・ニュートラル」データセンターを開設。また、現在アイルランドのダブリンに建設中の第4世代データセンターは、コンテナ型サーバー「CBlox」を採用。コンテナにサーバーを詰めていく方式で、1つのコンテナに約2万コア、10ペタバイトを収容する。ダブリンは風が強く、また寒冷な気候のため、サーバー冷却のための電力は100%風力発電による空調でまかなう。

 このほか、加治佐氏は技術的進歩の礎となる研究開発として、世界の各地にセンサを置いてデータを収集し、長期間にわたりログを収集分析する「SensorMap」や、ネットブック用のATOM 330デュアルコアを使ってデータセンターを作ってみるなどの試みを紹介した。

 最後に竹原氏が、環境に対する責任ある企業活動として、各種の活動を例を挙げて紹介。従来CD/DVDで配布していたボリュームライセンスプログラムを、ダウンロード中心にしていく取り組みにより、メディア送付枚数が2008年度の108万枚から2009年度には35万枚へと7割の削減を達成したという。また、中古向けのOSを提供するMicrosoft Authorized Refurbisher (MAR) プログラムの開始や、2009年10月開設予定のマイクロソフト大手町テクノロジーセンターを活用し、今後エンタープライズ顧客に環境/グリーンITソリューションを提案していくなどの取り組みを説明した。

200以上のサービスを提供するマイクロソフトではデータセンター建設に5億ドルを投資、月1万サーバーのペースで増強している風力発電や、外気冷却などクリーンエネルギーの利用を推進2008年秋にシカゴのデータセンターから導入したコンテナ型サーバー。このコンテナ型サーバーと風力発電を採用したデータセンターをダブリンに建設中

(工藤 ひろえ)

2009/7/28 18:23