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米Borland・インターシモーネ氏、「ブランドが変わってもIDEは進化し続ける」


 米Borland Software Corporation(以下、Borland)は2月8日、統合開発環境(IDE)関連事業の一部を売却する意向を発表した。20年以上にわたって同社の中心的な事業であった開発ツールの売却は、ユーザーのみならず大きな衝撃をもたらした。

 そんな中、3日3日に都内で開催されているBorland Developer Conference Tokyo 2006に合わせ、Borlandのデベロッパー・リレーション担当副社長のデビッド・インターシモーネ氏が来日した。インターシモーネ氏は同社のチーフ・エバンジェリストでもあり、常にユーザーと交流してきた人物である。今回は、多くのユーザーから「David I」の愛称で親しまれる彼が、IDE関連事業の売却についてどういったメッセージを持っているのかを聞いた。


BorlandでなくなってもIDEはなくならない

基調講演でIDE関連事業の説明をする、デベロッパー・リレーション担当副社長兼チーフ・エバンジリスト、デビッド・インターシモーネ氏
 インターシモーネ氏は、現在のBorlandにはALM(アプリケーション・ライフサイクル・マネージメント)と、IDEという2つのビジネスが存在していると述べた。しかしBorlandの企業規模を考えた場合、どちらかのビジネスにフォーカスしなければならず、Borlandは企業としてALMのビジネスにフォーカスすることをチョイスしたのだという。

 IDE関連事業の売却に関してインターシモーネ氏は、どこかの企業にIDE関連の部門を売却するというより、IDE関連部門をスピンアウトして新規に企業を設立したいと考えていると説明する。同氏の、「我々が望んでいるのは、どこかのベンダが自分たちの部署のひとつにするために買収するのではなく、純粋に新しく設立されるIDE関連企業への投資という形です」という発言からもうかがえるように、“売却した後はどうなるか知りません”という顔をするつもりはないということである。

 もちろん、現在発表されているIDE関連事業のマイルストーンは現在でも有効で、今後も開発は継続していくという。インターシモーネ氏は「ソフトウェアはReadyの状態にならなければ、なかなか正式にお話することはできない」としながらも、今月カリフォルニアでおこなわれるEclipse関連のイベントにおいて、Eclipse上でJBuilderのデモをおこなう予定であることや、日本で人気の高いInterBaseのUnicode対応をおこなっていることを明らかにした。

 さらにインターシモーネ氏は、企業体としてALMとIDEがわかれることによって、それぞれが制約から開放されてより可能性が広がると主張する。Borlandとは今後もパートナーとして協力体制をとってはいくが、Borlandから離れたIDEは、米IBMなど競合他社の構成/変更管理製品との連携や統合も推し進めることができる。逆にALM事業にとっても、他社のIDEとの連携を深めていくことが可能になる、というのである。


“Devco”にはソースコード、エンジニア、そしてDavid Iがいる

 この新しい企業へと引き継がれる予定の製品としては、JBuilderの製品ライン、Developer Studio 2006に含まれる各言語(Delphi、C++、C#)、Kylixといった開発ツールが中心であるが、InterBaseやJDataStoreといったデータベース関連製品も移行される予定だという。ただし、JBuilderに含まれるUMLモデラーのテクノロジーに関しては、Borlandと共有する可能性が高い。

 Borlandから引き継がれるのは、単にソースコードやソフトウェアのパテントだけではない。研究開発チーム、一部の営業、マーケティング、サービス、サポート、デベロッパーリレーション、そしてなによりもインターシモーネ氏自身が移動する。

 「すでにBorlandの社内では、2つの企業が存在しているかのように動いています。新しい企業の設立の準備は整っています」とインターシモーネ氏が語るように、Borland社内では新しく設立する企業を“Devco”というコードネームで呼んでおり、転籍するエンジニアやボードメンバー候補者などもある程度は決まっているようである。ちなみにこのコードネームは単に“Developers company”を略しただけなのだそうで、この名称で企業が設立されるわけではない。米国にはDevcoという建設関係の有名な企業がすでに存在するとのことで、新企業の社名がDevcoになることは絶対にないとのことである。

 「私、David Iも“Devco”に移動します。とうとう、胸に“Borland”のロゴがついた(愛用している)シャツを大量に買い換えなければならない時期が来たようです。ただ20年もBorlandに在籍していましたから、しばらくはBorlandのDavid Iと名乗ってしまいそうです」と笑顔でインタビューを締めくくった。



URL
  ボーランド株式会社
  http://www.borland.co.jp/
  米Borland Software Corporation
  http://www.borland.com/us/

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  ・ 米BorlandがDelphiなどIDE事業を売却、アプリライフサイクル管理分野に注力(2006/02/09)


( 北原 静香 )
2006/03/03 12:53

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