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日本IBMとIBCS、金融危機による世界不況対策となるオファリングプログラム


日本IBM執行役員 GBS Strategy&Market Development担当 兼 IBCS専務取締役の金巻龍一氏

IBMが提供してきた広義のサービスをソリューションとオファリングに分類し提供する
 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)とアイ・ビー・エムビジネスコンサルティング サービス株式会社(以下、IBCS)は2月17日、金融危機による世界不況対策として、抜本的なコスト削減や全社規模での経営資源の再配置など、企業損益に短期間で直接効果を与えるコンサルティングとサービスを体系化し、緊急オファリング(対策提案)として発表した。

 今回の発表の背景を、IBCSの金巻龍一専務は次のように説明する。

 「金融危機による世界不況に対し、IBMとして何らかのメッセージを出していくべきではないか?という声が社内からあがった。お客さま自身に余裕がない厳しい環境下にあって、日本IBMは何を提供できるのかと、お客さまからテストされているような状況にある。私自身、昨年から兼務で、日本IBMのGBS Strategy&Market Developmentを担当することになり、営業教育も担当している。ソリューションを提供する際、きちんとオファリングできていたのかをあらためて見直すタイミングとなっている」

 その中で顧客のニーズは、同じ「今やるべきこと」であっても、1)明日を迎えるために、「今」やらねばならないこと、2)将来の成功のために「今」からやっておかないと手遅れになること、の2つに大きく分類できると指摘。

 世界不況についても、ある地域の経済環境が悪化していても、好況な別な地域を見つければ売上を確保できた従来型の不況と今回の世界不況は状況が異なる。そのため、各社の売上が悪化しているものの、「早くからリストラに取り組み、キャッシュを持っている日本企業の中には、この機に応じてM&Aを実施することでグローバル企業となるチャンスでもある」(金巻専務)という。


顧客ニーズの変動に対し、従来の足し算的コスト削減ではなく、引き算となるコスト削減を提案
 こうした各社の状況を踏まえた上でIBMのサービス事業は、従来のソリューション提供にとどまらず、顧客に対して、1)いつ、2)どこの領域に、3)どれくらい効果が期待できるかをはっきりと数字で示さなければならない状況となっている。

 「これまでのソリューションから、オファリングを抜き出して提示し、そこで興味を持ってもらうことができた段階で、ソリューションを提示する」(金巻専務)

 コスト削減は好況といわれていた時期でも求められていたが、それは現状のコストでより高度なサービスを提供するものだった。しかし、現在の顧客が求めるコスト削減は、現在のサービス内容を維持しながらもコストを圧倒的に下げるものへと変化しているという。

 「従来提供してきた中で、例えば納期回答は10分間で回答することが本当に求められていたのか。本当は翌日回答でも十分だったのに、過剰サービスとなっていなかったのかといった見直しが求められている。従来のコスト削減は、より高度なサービスを提供する足し算型だったとすれば、現在求められているのは現状のサービスから不要なものを抜く、引き算型コスト削減となっている」(金巻専務)


 サービスを利用する顧客の状況も以下の4つに分類する。

  1. 将来ビジョンではなく、6カ月以内という短期間に確実なコスト削減を行いたい
  2. コストダウンすべき要件はわかるが、さまざまな理由でなかなか着手できない
  3. グローバルでの経営資源配置の最適化見直しを行い、大幅なコスト削減を狙いたい
  4. 現在、M&Aを計画もしくは実行中。速やかにシナジーを享受したい

 その上で、通常のIBMのオファリングでは即効性ある具体策となりにくいことから、より即効性あるオファリングプログラムを用意した。

 例えば、SPI(Strategic Profit Improvement)というオファリングは、金融危機以降、海外で顕著な効果をあげている緊急業務改革方法。直近の利益確保のために、確実に行わなければならないアクションだけを抽出し実行する。

 その中身は、業務をCBM(Component Business Modeling)手法により可視化し、その中でコストダウンに重要な関係のある業務(ホット・コンポーネント)を抽出。それぞれのホット・コンポーネントに対し、グローバルで蓄積され多くの事例から効果が実証されたソリューションを当てはめ、期待改革効果を試算し、緊急かつ重要な領域から対策に着手していくもの。

 海外の製造業ユーザーでは、SPIの導入により、間接部門の業務標準化と効率化を行い、人事や財務などの部門をシェアード・サービス・センター化することで、約120億円のコストの削減効果を見込んでいる。

 これ以外にも、営業バックオフィスやコンタクトセンター統廃合、ITコスト緊急削減、新興市場へのシフトに向けた海外拠点配置最適化、グローバルキャッシュ一元管理、M&Aにおける事業シナジーの緊急創出など25のオファリングプログラムを用意している。

 「オファリングの中には、最短2週間でお客さまの状況を診断するものも用意した。費用は数百万円程度となるが、問題個所の分析を行い、コスト削減提案を提供。そこで納得していただければ、次のソリューション提案を行う。以前のソリューション提案は、乾いたぞうきんをさらに絞って成果を出すものだったが、現在の提案はぞうきんのぬれている部分を見極め、そこだけを絞って早く結果を出すもの。そこで活用しているのが、米国で成果をあげているSPIという方法で、日本IBM内にも専任部隊を作り、対応していく」(金巻専務)


オファリングを25種類に分類し、2週間でその顧客の問題分析を行い、問題点を改善提案する 2週間で実施するオファリングの手順


URL
  日本アイ・ビー・エム株式会社
  http://www.ibm.com/jp/
  アイ・ビー・エムビジネスコンサルティング サービス株式会社
  http://www-06.ibm.com/services/bcs/jp/
  プレスリリース
  http://www-06.ibm.com/jp/press/2009/02/1702.html


( 三浦 優子 )
2009/02/17 15:09

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