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アイシロン、1.6PBまで拡張可能なクラスタストレージのハイエンド機

シン・プロビジョニング機能を備えた新ソフトも投入

Isilon IQ9000

米Isilon Systemsのマーケティング・コミュニケーションズディレクター、クリス・ブレシングトン氏
 アイシロン・システムズ株式会社(アイシロン)は7月27日、同社製クラスタストレージのハイエンド機として、1.6PBまで拡張可能な「Isilon IQ9000/EX9000」、およびクラスタストレージ用リソース管理アプリケーション「SmartQuotas(スマートクォータ)」を発表した。

 最近、ビデオデータや音声データのようなデジタルコンテンツによる非構造化データの蓄積ニーズが急速に増大しつつある。こうしたニーズに対応するためアイシロンが提供しているクラスタストレージは、メディアエンターテイメント業界にとどまらずCAD/CAMを活用する製造業界、コンピュータモデリングや3Gを活用する業界、放送業界などで導入が進んでおり、すでにワールドワイドでも約500社以上におよぶユーザーを擁している。

 今回発表のIQ9000/EX9000はこれまでのIsilon IQ200、IQ1920、IQ3000、IQ6000/EX6000といった一連のクラスタストレージの最上位機種にあたり、750GB SATA HDDを12基搭載する。このうちIQ9000は、CPUやメモリを搭載し、パフォーマンスと容量を拡張可能な製品で、またEX9000では容量のみ拡張可能となっている。この両製品をペアで利用した場合、96ペア(192台)までクラスタを拡張でき、単一クラスタ/ボリュームで最大1.6PBの大容量を実現できるという。

 米Isilon Systemsのマーケティング・コミュニケーションズ ディレクター、クリス・ブレシングトン氏は「当社のユーザー向け基本コンセプトは“Pay-As-You-Grow”。企業やビジネスの成長に応じてストレージ拡大できるので、過剰投資をしなくてすむ点が最大のメリットだ。Isilon IQ9000/EX9000はシングルファイルシステムで1.6PBまでの拡張性を持ち、容量単価もこれまでの製品でもっとも安い」とアピールする。この1.6PBという容量は、従来のSAN/NAS製品と比較すると100倍以上になるという。

 ブレシングトン氏は「当初3カ月前に発表を予定していたが、少しずれこんだ。この理由は、750GB HDDが企業向けでも使える信頼性があることを十分検証した上、確信をもって投入したかったからだ」と述べ、念入りに厳しい試験を繰り返してきたことを強調する。使用ドライブはSeagate社が5カ月前に提供開始したもので、Isilon Systemsではミネソタ州の検証センターで、およそ200基のHDDをテストしたという。

 750GB HDDでは、なぜこれほど検証に時間がかかったのか。同氏はこれについて、「これまでの500GB HDDの場合と異なり、750GB HDDでは垂直磁気記録方式を使用している。この信頼性を検証するため、のべ3カ月に及ぶ試験を繰り返して完成させた」と述べ、その苦労をかみしめた。

 なお、これまでIQ6000/EX6000などを利用してクラスタ環境を構築してきたユーザーも、そのまま既存クラスタへIQ9000/EX9000を増設することが可能だ。すでに、欧州版YouTubeともいうべきDailyMotionや、100億枚の写真を扱うKodakGalleryなどが、1カ月ほど前からIQ9000/EX9000を使用しており、既存の顧客における先行導入用に当初用意していた600ノード以上の初回ロットも、すでに完売状態という。


 またクラスタストレージ用リソース管理アプリケーションであるSmartQuotasは、実際にユーザーが必要なストレージ容量を見越した管理を可能とするもの。特にクォータ管理とシン・プロビジョニング(Thin Provisioning)機能を1つのソフトウェアに統合したことが特徴で、これにより管理のフレキシブル性やコスト削減を実現可能という。

 クォータ管理は各ストレージ管理者に対しニーズに応じて管理しやすいよう割り当てを決めるというもの。SmartQuotasの場合、クラスタはじめディレクトリ、グループ、サブディレクトリ、ユーザーといった5レベルの設定が可能になっている。ブレシングトン氏は「他ベンダでもユーザーレベルのクォータに対応できるところは少しあるが、サブディレクトリに対応可能なのは当社のみ。これができなければ、ストレージシステムのために、ユーザーに対してファイル構造の変更を強要しなければならなくなる」と、競合と比較した強みをアピールする。

 またシン・プロビジョニング機能では、実際に存在する物理的ストレージ容量よりも大きな容量を、ユーザーに対して仮想的に割り当てることが可能になり、「ストレージの購入しすぎを防ぐことができる」(ブレシングトン氏)。もちろん、物理容量以上の書き込みを行うことはできないため、実際の空き容量が少なくなった場合は、クラスタストレージを増設するか、まだ余裕のあるほかのボリュームから物理HDDをアサインし直すことになる。ブレシングトン氏は「SmartQuotasはこれまでのIQシリーズにも対応しているが、これも共通のOSである『OneFS』があるからできること。特にWeb 2.0ニーズも高まる中、『大容量ストレージは欲しいが予算は限られている』といった日本の製造業関連のユーザーにはベストソリューションだろう」と自信を示していた。

 参考価格は、IQ9000の最小構成(27.0TB)で2823万円程度になる見込みとのこと。



URL
  アイシロン・システムズ株式会社
  http://www.isilon.jp/
  プレスリリース
  http://www.isilon.jp/news/press/release_150.html
  http://www.isilon.jp/news/press/release_149.html

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( 真実井 宣崇 )
2007/07/27 12:19

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