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“現実的なコストで提供できる”ディザスタリカバリ製品、米3PARから


 米3PAR data,Inc.(以下、3PAR)は4月12日(米国時間)、ディザスタリカバリ製品「3PAR Remote Copy」の最新版を発表した。同製品には「Many-to-One(多対1レプリケーション)」機能が組み込まれており、同社のストレージサーバー「InServ Storage Server」(以下、InServ)と併用することによって、統合データレプリケーションに必要なコストを、大幅に削減できるという。


シン・プロビジョニングでユーティリティストレージを実現

3PARの社長兼CEO、デビッド・スコット氏

InServ Storage Server
 3PARは、1999年に設立されたストレージベンダ。コンピューティングリソースを電気・ガス・水道のように利用できる「ユーティリティコンピューティング」という発想が広まってきているが、同社ではストレージもユーティリティ化されるべきだと考え、いかに有効にストレージ資源を利用してもらえるか、を念頭にソリューションを提供してきたという。

 しかし業界全体では、「利用されるのはごく一部、約25%程度に過ぎないというデータがある」(社長兼CEO、デビッド・スコット氏)と状況だ。それは、「通常の製品では、アプリケーションごとに、1~3年程度の間に利用するであろう容量を見越してストレージを購入するから」(同CEO)。つまり、現時点では使わない容量を踏まえて購入するため、稼働率がどうしても下がってしまうのである。

 そこで同社では、「シン・プロビジョニング」機能をInServに持ち込むことによって、ストレージの書き込み量に相当するHDD容量のみを購入すれば済むようにしている。それは、「ユーティリティストレージ」とも呼ぶべきシステムによって実現されたという。このシステムの肝は、複数のアプリケーションが共有する「仮想バッファプール」という領域を設けたこと。あるアプリケーションに割り当てられていた物理容量を超えて書き込みを行う必要が発生したとしても、仮想バッファプールに余裕があれば、そこから必要な分を引き出して使用できるのである。

 この方法を採用すると、仮想バッファプールに十分な容量を用意しておけば、アプリケーションごとのデータボリュームのサイズをあらかじめ見越してストレージを用意しなくてもよいため、「ストレージの稼働率を飛躍的に向上させることが可能になる、つまり無駄なコストの削減が可能になる」(スコットCEO)わけだ。

 またInServでは、物理ディスクを256MB単位の「チャンクレット(仮想物理ディスク)」という単位に分割し、ディスクをまたがった複数のチャンクレットを組み合わせて論理ディスクを構築するアプローチを採用。ディスクのI/Oを最大限に利用し、高い性能を発揮できる環境を整えた。加えて、「最小1TBから導入が可能で、1筐体では最大384TBまで柔軟に拡張可能。FCポートも最大192ポートを搭載できるため、スイッチなど、サーバーとディスクの中間にあるハード、ソフトが不要になる点も重要だ」と、スコットCEOは自社製品の長所を強調する。

 かといって、もちろん、すべてをいきなりInServで統一するような運営は、ほとんどのユーザーでは現実的に難しい。そのため同社では、スイッチベンダ、OSベンダなどとアライアンスを組み、互換性を保つことも忘れていない。そして、スモールスタートが可能な特徴を生かして、徐々に既存製品からの置き換えを狙っていく戦略をとっている。


シンプルなソリューションで、ディザスタリカバリのハードルを引き下げる

 今回3PARが提供するディザスタリカバリソリューションは、こうした特徴を持つInServと、3PAR Remote Copyの両製品によって実現される。Remote Copyはデータレプリケーションを担当するアレイで、今回より多対1レプリケーションに対応したため、複数のプライマリサイトからのデータを、バックアップサイトにある1台のInServでバックアップすることが可能になった。これによって、1対1にのみ対応する製品と比べて、必要となるストレージの数を節約できるほか、レプリケーション用途だけでなく、ローカル環境でのストレージとしても同じInServを使用できる「混合ワークロード」機能にも対応した。

 また、シン・プロビジョニング機能もサポートしており、競合他社のストレージを利用する場合と比べてストレージの使用率を高めることができる。加えて、ネイティブでIPプロトコルに対応する点も長所とのことで、IPコンバータやエクステンダを用いずに長距離レプリケーションが実現可能になり、この面でも費用の削減が期待可能という。

 このソリューションに関してスコットCEOは、「ディスク容量だけでも70%のコストを削減できる。またシステムが単純化される点もメリットだ。企業にディザスタリカバリのホスティングサービスを提供するxSPはこうした点を生かしてコストを節約できるため、より安価にサービスを提供できるようになり、競合に対して優位にたてるだろう」とコメントした。

 また、取り組みが遅れているといわれている一般企業での導入に関しても、「既存のディザスタリカバリソリューションは費用面の負担が大きく、一般企業ではなかなか導入できなかった。しかしIPベースでこのソリューションによって、そうした企業に対しても、導入のハードルを下げることができたのではないか」(日本オフィス代表の加藤賢造氏)、「ニーズがなかったのではなく、(導入できないほど高い)コスト面がネックだったのではないか。当社では安価なソリューションによって、『現実的な(支払える範囲の)コストで導入したい』という声に応えていく」(スコットCEO)、と期待を表明していた。



URL
  米3PAR(英語)
  http://www.3par.com/
  プレスリリース(英語)
  http://www.3par.com/news/_pr/041205.html


( 石井 一志 )
2005/04/13 18:14

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