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AI活用時代のデータ管理の在るべき"姿"と"考え方"。データ爆発、サイロ化、AI対応―次世代インフラの最適解を識者が徹底議論

 AI利用が広がる中、IT部門が長年、頭を悩ませてきたデータ管理において新たな課題がいくつも浮上している。「AI活用に向け社内に散在する大量データをいかに集約するか」「大量データから活用に足るデータをどう抽出するか」「AIの頭脳であるGPUにいかにデータを絶え間なく食わせるのか」などが代表だ。その実現の道筋と、そこで活用を見込める製品について。ネットワールド マーケティング本部 インフラマーケティング部 データセンター課 主任 髙橋 江里佳 氏と、トゥモロー・ネット AIプラットフォーム事業本部 ソリューション部門 出町 一樹 氏、日本ヒューレット・パッカード デジタルセールス・コンピュート事業統括本部 コンピュート技術部 小森 博之 氏が語り合った。(本文中敬称略)

写真左から、株式会社トゥモロー・ネットAIプラットフォーム事業本部 ソリューション部門 出町 一樹 氏、株式会社ネットワールド マーケティング本部 インフラマーケティング部 データセンター課 主任 髙橋 江里佳 氏、日本ヒューレット・パッカード合同会社 デジタルセールス・コンピュート事業統括本部 コンピュート技術部 小森 博之 氏

AI利用の広がりがデータ管理の悩みを深刻化

髙橋: 「データをいかに管理するか」はIT部門にとって永遠の命題です。経営から現場までのあらゆる意思決定において、正確で一貫したデータは何より大切で、適切なデータ管理は、必要な情報への迅速なアクセスの点で業務効率化や全社最適化などにも寄与します。

 ただ、その重要性からデータは廃棄しにくいことが厄介です。結果、多くの企業でストレージの肥大化に伴う管理工数とコスト増の問題に直面しています。また、DXを背景にデータの生成場所や保管先が社内外に急速に広がり、データ活用の下準備となるデータ集約の手法についても、ITディストリビューターである我々に少なからぬ相談が寄せられるようになっています。

出町: AIの普及が、企業の悩みをより深刻化させているというのが我々としての実感です。AIの頭脳はGPUですが、消費電力の大きさからオンプレ運用はなかなか難しい。そこでクラウド運用の話になるわけですが、今度は数PB級の大量データをGPUに効率よく供給するストレージ環境をいかに整備するかという新たな課題が持ち上がります。

小森: AI利用は今では組織規模を問わない企業の戦略施策となっています。そこでのストレージ課題は次の2つに大別できるでしょう。1つは、AI活用を前提に大量データをいかに整理し、扱いやすいよう集約管理するか、もう1つは高額なGPUを遊ばせないよう、絶えずデータを供給するストレージ環境をどう整備するかです。

"AI-Ready"なデータ管理で注目されるSDS

髙橋: つまりは、データ爆発やサイロ化というデータの従来課題に加え、AIのためのデータ管理という新たな課題対応に迫られていると……。IT部門はデータの保管先であるストレージの整備/運用で、かねてから手を焼いており、加えて、新たに"AI-Ready"なデータ管理に取り組むには、相当な苦労を覚悟する必要がありそうです。

小森: それは間違いないでしょう。ともあれ、対応においては、まずは各種ストレージ製品のコストと性能を両睨みで、バランスを取りつつ構成するのが現実的なアプローチになるはずです。大量データの集約では安価なHDDと性能に優れたSSDをどう組み合わせるかがポイントになります。一方で、GPUを遊ばせないストレージ環境の点では、オールフラッシュに進むことに間違いありません。

出町: それら課題の対応において、1つ考えてもらいたいのがストレージを構成する物理デバイスの「ハードウェアによる制約」です。例えば従来型のブロックストレージ製品はスケールアップでしか容量を拡張できないがゆえに、最大容量には限界があります。また、その中核でもある(専用設計された)ストレージコントローラにも制約が存在し、それがクラウドとのデータ統合といった各種のデータ処理課題の対応を困難にさせてきました。

 これらの制約は、膨大なデータを柔軟かつ効率的な管理/処理が求められるこれからのストレージ環境において大きなボトルネックとなります。では、それをどう克服すればいいのか。そこで今、お客様からの問い合わせが増え、我々も技術的な転換点として大きな期待を寄せているのがSDS(Software-Defined Storage)です。その名の通り、ストレージの機能をソフトウェアで実装/制御する仕組みで、上記のハードに起因する性能限界をスケールアウトによってリニアに向上させることで解消し、高い柔軟性や拡張性を実現しているのが大きな特徴です。

 さらにSDSで見逃せないのが、多様なデータ管理の課題に、ソフト側で手を打てることです。データ集約においても、データを分散させたまま、データの管理のみを一元的に扱える仕組みを構築できる点が、SDSの強みです。

 データ管理の課題は企業ごとに千差万別です。だからこそ、"AI-Ready"を見据えたデータ管理においては、高い柔軟性とソフト側の機能により、かつてない対応策が可能なSDSを活用した新たなデータ基盤の整備こそ、最有力のアプローチというのが我々の見立てです。

異なる強みでデータ課題解消を包括支援

髙橋: 市場にはSDS製品がすでにいくつもリリースされています。

出町: SDSと一口に言っても機能面での特長は製品ごとにさまざまです。例えば「Qumulo(キュムロ)」は、圧倒的な可用性とデータの可視性を誇るスケールアウト型SDSで、容量の99%まで性能低下なくストレージを利用できる効率性の高さが強みです。強力なデータ・アナリティクス機能も備え、どのファイルにどのユーザーが、どれだけアクセスしているかも容易に把握できます。大容量ファイルサーバーと同様の感覚で運用でき、その特性からデータ増への対応に向いています。

 また、AIやHPCなどで大いに活用を見込めるのが「WEKA(ウェカ)」です。GPUとストレージを直接つなげる「GPUDirect Storage」に対応しており、GPUに対してボトルネックを生じさせることなくデータを供給することができます。

 「Hammerspace(ハンマースペース)」は、既存ストレージのメタデータを連携させ、データ移動を伴うことなくシームレスなデータ集約を実現する製品です。ポリシーベースでのデータの自動配備も可能で、サイロ化した大量データの集約で大いに活用を見込めます。

 SDSは製品ごとに得意領域が異なります。それらは競合というよりも、企業のデータ管理の課題解消に向け互いに補完し合う関係と言えます。

髙橋: SDS製品はソフトウェアで、導入には稼働基盤のサーバーが必要になりますね。

出町: その通りで、かつ、SDS製品の能力を引き出すにはサーバー選びが鍵を握ります。サーバー性能はCPUやメモリ、ストレージ、ネットワークといったコンポーネントの能力で決まり、各SDS製品の特性を踏まえた最適なサーバー選択は、SDS製品の力を最大限引き出すうえで欠かすことができません。

多様な要望に対応したHPEのストレージサーバー製品群

小森: ここは大手サーバーベンダーの当社にぜひ口を挟ませてもらいたい(笑)。当社はサーバー製品として「HPE ProLiantサーバー」などを提供し、大量のストレージ収容に対応したストレージサーバーもラインナップに多数取り揃えています。

 そのうち、一般的なSDSの利用で推奨しているのが、安価な3.5インチHDDを最大24本搭載できることに加えて、小型で高性能なEDSFF(Enterprise and Datacenter Standard Form Factor)タイプのNVMe SSDを搭載可能な 「ProLiant Compute DL340e Gen12」と「Alletra Storage Server 4120」の2機種です。両機種ともHDDとSSDの組み合わせによる高いコストパフォーマンスの実現を狙いとしており、大量データの集約・活用を得意とするQumuloなどで大いに重宝できるでしょう。

 AI活用での、GPUに絶えずデータを提供する用途では、オールフラッシュの「Alletra Storage Server 4210」を用意しています。先に説明のあったWEKAの「GPUDirect Storage」機能の利用には当然、対応したネットワークインターフェースカードの搭載が不可欠で、同製品はすでに対応しています。NVMe SSDは大量のPCIeレーンを消費することを勘案し、CPUにはPCIeレーン数を強化したXeon プロセッサーを採用することができます。

 もう1つ、データのサイロ化の悩みに対応するのが、「Alletra Storage Server 4140」です。同製品は2つの前面ドライブケージにHDDを合わせて最大92本格納できます。最新の大容量HDDは1つで24TBの容量があり、これをフル実装するとサーバー1台で1PB以上のデータを余裕で格納できます。

髙橋: データ管理における悩みは企業の置かれた状況ごとにさまざまで、複数課題を抱えていることも珍しくありません。この状況下、将来的なAI活用を見据え、SDS製品をどう活用してデータ基盤の整備を進めていけばよいのでしょうか。

出町: 企業ごとに課題や優先順位が異なるため、一律の進め方を示すことは難しいですね。ただ、データ管理の狙いに優先順位をつけると、自ずと"解"が見えてくるはずです。GPUで何かを学習させたい、ただ、学習用データがいまだ用意されていない状況であれば、データ準備でのデータの可視化が得意なQumuloをまずは導入することが最初のステップになるでしょう。その後、集約したデータをGPUにフィードするフェーズで、より高速な処理を望むのであればWEKAの出番となります。

ソフトとハードの個別導入の手間の"解消法"

出町: SDSで成果を上げる企業もここにきて相次いでいます。中でもユニークな活用法を実践しているのが映像編集を手掛けるA社です。同社では従来、クラウド上にQumuloを導入し、そこに格納した映像データを、同一クラウド上で稼働する編集ツールを用いて作業を行っていました。編集ツールをクラウド側に置いたのは、オンプレよりも機能面で相性が良かったからです。

 ですが、このシステム構成では新規の編集作業の都度、クラウドへのデータのアップロードが生じ、いくつもの編集業務を継続的に手掛ける同社は、その手間に長らく悩まされてきました。

 その解消に向け同社が着目したのが、クラウドとオンプレを連携させ、オンプレ側に存在するデータをクラウド上にあるかのように見せるQumuloの「グローバルネームスペース」機能です。その活用を通じてハイブリッド環境でのデータの場所を問わないシームレスな作業が可能になり、工数削減とともに作業効率の向上も可能と見込まれました。

 最終的に同社ではQumuloとの相性を考慮しHPEのストレージサーバーを用いて環境整備に踏み切り、期待通りの成果を上げることに成功しています。

図1:クラウドとオンプレのストレージ統合を実現するQumuloのグローバルネームスペース機能

小森: HPEのサーバー製品は「安全」「安心」「最適化」をモットーとしています。それらも評価して採用いただいたということで、我々にとって非常に光栄なことです。

髙橋: SDSのメリットは理解できます。とはいえ、ソフトとハードの個別導入は煩雑だと感じる企業もありそうです。

出町: 我々トゥモロー・ネットの存在意義はそこにあります。面倒さと不安の解消に向け、当社は製品提供から各種問題の切り分けを含めた導入、さらに問い合わせ対応を含めたサポートまでを一貫して行っています。お客様からは、x86サーバーとSDS製品を組み合わせた構成にも関わらず、専用アプライアンスと変わらぬ感覚で利用できているとの声も多数寄せられています。

セキュリティ面でもハードとソフトの連携が加速

髙橋: SDS製品はストレージの柔軟性と"AI-Ready"のための機能の両面で、AI時代のデータ管理の"現実解"となりそうです。

出町: SDS製品は各種の機能強化が相次いで進められている点もユーザーにとって魅力です。Qumuloは今年のアップデートにおいて、AI活用の支援に向けた「NeuralSearch(ニューラルサーチ)」という機能を追加しています。格納された非構造化データの関連性を自動探索し、GPUに優先的に処理させるべきデータを探し出してくれる機能です。AI活用に要する工数の大半は現状、データ検索に費やされており、その抜本削減が期待されます。

 セキュリティ機能の強化も全体的に活発化し、同じくQumuloでは今年中に利用中のデータの改ざんなどを検知するランサムウェア対策機能が追加される予定です。

 繰り返しになりますが、SDSの魅力の源泉は高い柔軟性と、"AI-Ready"なデータ管理のためのソフトウェアだからこその付加機能です。我々の培ってきた技術力やノウハウを基に、それらを生かしたデータ基盤の整備に注力することで、企業のデータ管理にまつわる多様な悩みの解消にできる限り貢献できればと考えています。

小森: SDS製品の活用支援に向けた我々の強みは、ストレージサーバーの製品ポートフォリオの広範さです。SDS製品の活用にはサーバー選びが重要との話がありましたが、当社であればその面で少なからずお役に立てると自負しています。

 一方で、当社のサーバー製品で誇りたいのが、セキュリティ面での一日の長です。ファームウェアレベルでセキュリティ被害を常時監視する機能を備えているのもその1つです。データ管理においてセキュリティは極めて重要で、この面でも必ずやお客様のお役に立てるはずです。

髙橋: 今回お2人の話をお聞きし、AI時代のデータ管理のストレージとしてSDS製品が極めて有力なことに改めて気づかされました。幸いなことに当社は今年、HPE様のディストリビューターとなり、そのサーバー製品を提案できる立場になりました。これを好機に、トゥモロー・ネット様、HPE様と手を取りつつ、AI活用の実践に足るデータ基盤の提案をSDS製品で加速させていきたいと思います。今回は貴重なお時間とお話をありがとうございました。