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鹿児島大学、遠隔地でのアクセス高速化実証に富士通の高速転送ソフトを採用

 富士通株式会社は31日、国立大学法人 鹿児島大学が、升屋正人教授(鹿児島大学 学術情報基盤センター)が率いる「高遅延インターネットにおけるTCPスループット向上システムの研究開発」プロジェクトにおいて、富士通の高速転送ソフト「FUJITSU Software Interstage Information Integrator V11.0」(以下、Information Integrator)の採用を決定したと発表した。4月1日から2015年3月31日まで、与論町(鹿児島県大島郡)と東京都内のデータセンターなどの間で、さまざまな実験を行う予定。

 このプロジェクトは、インターネットを介した遠距離サーバー間での伝送速度低下を低コストで解消し、ICTの利活用による地域社会の活性化を目的としたもの。通信距離が長くなると転送速度が遅くなるTCPの特性上、東京から1500キロ以上離れた与論町から東京にあるインターネット関連サーバーにアクセスすると、光ブロードバンドが整備されている状況でも、伝送速度が10Mbps程度にとどまってしまっているという。

 そこで、2015年3月をめどに、50ミリ秒の往復遅延時間が発生する遠距離間のインターネット環境で、50Mbps以上のTCPスループットを、1世帯あたり5万円以下の設備費用で実現する技術の開発を目指して研究が進められている。

 今回、鹿児島大学が採用したInformation Integratorは、TCP/IP通信のアプリケーション間のプロキシとして利用することで、通信距離や回線品質による遅延の問題を解消するソフト。ハードウェア性能に依存せず、低コストでの伝送速度向上を実現できる特徴を持つ。

 実際の検証では、サーバーとPC、それぞれの近くに、TCPのパラメータなどを通信距離が長い環境に最適化した代理サーバーを置き、代理サーバー間のTCPスループットを向上させることで、サーバーとPC間の伝送速度高速化の効果を検証する。ここでは、富士通のx86サーバー「FUJITSU Server PRIMERGY TX140 S2」を代理サーバーに採用し、伝送速度を高速化するために、Information Integratorが導入されるという。

 また、大阪府大阪市、福岡県福岡市、鹿児島県鹿児島市などに中継サーバーを置いて通信区間を分割し、データ転送距離を短縮することにより、データ転送の遅延を防いで高速化を図るとのこと。この中継サーバーにも、伝送速度を高速化するため、Information Integratorが導入される。

 こうした技術により高速化が実現すれば、インターネットを活用した産業の活性化や、高速データバックアップによるデータ保全の向上、医療現場などでの、インターネットを活用した検査画像の高速転送などが可能になるとのことだ。

石井 一志