「“位置情報×動詞”でビジネスを展開」ロケーションバリュー砂川CEO
今回のEビジネスマイスターは、携帯電話の位置情報をもとに、いわゆる位置情報サービスを展開している砂川社長にお話をお伺いしました。現在のビジネスにいたるまでの海外留学およびインターン経験など、さまざまなエピソードをお持ちのユニークな社長です。
Eビジネスマイスター:砂川 大 株式会社ロケーションバリュー 代表取締役CEO 1995年に三菱商事入社、海外向け鉄道案件を手がける。2001年にハーバード・ビジネス・スクールに留学、途中UBS証券とマッキンゼーでインターンを経験。卒業後、2003年に米国の独立系VCであるGlobespan Capital Partnersに入社、ディレクターとしてデューデリや投資先の事業開発に従事。2004年に同社日本事務所の開設を行い日本代表に就任。2005年3月にロケーションバリューを創業し、現在に至る。 |
―砂川さんは大学を卒業してから三菱商事に入社されていますが、入社当初はどういったお仕事を手がけられていたんですか。
砂川氏
三菱商事では鉄道案件を担当していました。エジプトの地下鉄、オーストラリアの鉄道民営化などに携わっていましたね。入社当時はあまり若手がいなかったこともあってか、入社して4カ月後には海外に出張して、そのまま3カ月現地滞在になっていました。
―入社してすぐ海外ですか。砂川さんはもともと英語がお得意だったんですか?
砂川氏
僕はもともと帰国子女だったですよ。親が政府系金融機関で働いていた関係で2~6歳までフィリピン、小学校3~5年生までメキシコ、中3の夏から高校卒業するまでアメリカにいました。たぶん英語が話せたから、そういった部署に配属になったんだと思います。ただ、入社していきなり行ったのがエジプトだったので、英語は通じなかったんですけどね(笑)。現地では教わったアラビア語の単語をならべてました。エジプトには全部で2年弱くらいは行ったり来たりして、シンガポールも1年くらい行ったり来たり。南アフリカも行ったり来たりで5~6カ月。オーストラリアも1年くらいいました。
―ハーバード・ビジネス・スクールに在籍されていたときに、マッキンゼーのインターンを経験されたようですが、どんなことをされたんですか?
砂川氏
ハーバード・ビジネス・スクールに在籍していたサマーバケーションの間にインターンを経験しました。卒業すると同時に三菱商事に退職願を出して、ボストンのベンチャーキャピタルで約2年仕事をして、日本支社を立ち上げるのを機に日本に帰ってきました。
―ハーバード・ビジネス・スクールでは貴重な経験をされたんですね。やはり日本で普通に働いているだけでは、なかなかそういった経験は得られないものですか。
砂川氏
僕はそう思います。僕は2001年9月~2003年6月までの2年間在籍していたんですけど、世間は思っているよりもとても広いということも学びますし、物事の整理の方法を学びながら、本当にいろんな刺激を受けることができました。人との出会いもたくさんありましたね。例えば、台湾の元アイドル歌手だったり、元アメリカンフットボールのプロ選手だったり、現役の神父さんがいたり。そんな人たちと一緒にビジネスについて話をするんですから、普段は考え付かないようなひらめきやアイデアが本当にいろいろと浮かぶんですよ。それに教授陣はどんな有名な経営コンサルの人であっても気軽に話を持っていけるということも魅力でしたね。
さらに隣にはMIT(マサチューセッツ工科大学)があって、日本からも優秀な技術者が来ていました。中には日本最大手の通信会社にいた人とかがいて、特許申請をするときには特許の書き方を教えてもらいました。
―それからベンチャーキャピタルに転職されたきっかけは何だったんですか?
砂川氏
「自分のビジネスモデルを実現するには起業するしかない」と思ったことがきっかけですかね。
―つまり、どういうことですか?
砂川氏
もともと自分の人生プランの中で自分が起業するということは全然考えていなかったんですけど、ハーバードに在籍しているときに今の原型となるビジネスモデルを書いたんですね。それを三菱商事に持っていったところ、箸にも棒にもかからなかったんです。だったら、自分でこのビジネスモデルをやるしかないと思って起業しようと決めたんですね。ちょうどそのころ特許申請を日本に提出していて特許が取れるまでに3年くらいかかることがわかっていたので、その間に起業に必要な知識を吸収してしまおうと考えて転職することにしたんです。
インターンをしたマッキンゼーでは戦略が学べるのはわかっていたんですけど、戦略論はハーバードでひと通りやっていたので、声をかけていただいていたベンチャーキャピタルでファイナンスの知識を身につけようと思いました。どうやったら自分が立ち上げる会社にファイナンスをつけることができるかを考えたとき、投資側になっておいて損はないと思ったんですね。それでベンチャーキャピタルに転職したんです。
―実際にベンチャーキャピタルに転職されて、いかがでしたか?
砂川氏
まず、投資契約書もどういう構成になっているかも全然知らなかったので、どういう条件になっているのかということがつまびらかになりました。ベンチャーキャピタル側にいて、ベンチャーキャピタル側の立場というのも理解することができました。この経験は実際に起業する際に大いに役に立ちましたね。
ベンチャーキャピタルに入ってものすごくラッキーだったことは、うちのベンチャーキャピタルがファンドから投資をしていた投資先の日本進出をおてつだいすることになったときです。そうなるとそういった企業のCEOと一緒に日本に出張するんです。そんなすごいCEOとずっと朝から晩まで一緒ですから自然と仲良くなりますよね。すると「将来起業したいと思っていて、こんなビジネスモデルを考えているんだ」ということを話せる間柄になるんです。すると、「こんな人を味方にしたほうがいい」とか、「もっとビジネスモデルはこんなふうにしたほうがいい」とか、アドバイスをいただけるんです。生の経営者に生の経営アドバイスをひと通りもらうことができる貴重な体験でした。ナスダックに上場しているような社長さんといまだに連絡をとったりすることができることは、とても大きな財産です。
―2002年の冬に考えたビジネスモデルを実際に立ち上げたのは2005年の3月。若干時間がかかっているように思いますけど。
砂川氏
そうですね。その間はずっとベンチャーキャピタルでベンチャーキャピタル業務を粛々とやっていて、時間が空いたら自分のビジネスモデルをブラッシュアップしていきました。
―具体的にはどうやってブラッシュアップしていったんですか。
砂川氏
最初このアイデアをひらめいてから2週間くらいかけて10枚くらいに書きおこしてハーバードの戦略論やベンチャー論の先生に見ていただき、とてもポジティブなフィードバックをいただきました。しかし、日本に帰ってきてから戦略系コンサルティングの人や大学教授、中小企業診断士や弁護士、弁理士など自分の知り合いを含めて100人くらいの方のところに相談に行ったんですけど、全員にダメ出しされました。中には人格否定とも受け取れるようなダメ出しを受けることもあって、心が完全に折れたときもありましたね。それでも熱い気持ちを持ち続けました。
―どうしてハーバードでの評価と日本での評価にはこれほどまでに差があったんですかね。
砂川氏
日本のベンチャーが育たない理由のひとつに、日本には評論家がすごく多いことが挙げられると思います。アメリカのベンチャー業界というのはその粗削りのビジネスアイデアの可能性を拾い出すいわば加点方式、日本はそのアラさがしをするといったいわば減点方式。ハーバードの先生方は本当にたくさんのビジネスアイデアを見てきている中で、僕の今思えばイケてないプレゼンを見て何か光る可能性を見つけたから絶賛してくれたんだと思います。もちろんそのとき提出したものは粗削りなビジネスアイデアでしたけど、それを理解した上で「ぜひやってみるべき」と後押ししてくれました。
―心が折れかけつつも、なぜこのビジネスモデルを信じることができたんですか。
砂川氏
なぜでしょうね。ただ、今となってはよくそんなレベルで話を持っていったなと思います。僕のプレゼンのしかたが悪かったのかもしれないですけど、批評されているポイントが本質からずれていたんです。自分がこのモデルで解決しようとしている課題とはかけ離れた各論の部分で批判されていたので、「そこじゃない」って信じてたからでしょうね。もちろんいただいたフィードバックは、改善点として真摯(しんし)に受け止めましたが。
―そういったいろいろな批判を受けつつ、ビジネスアイデアをよりブラッシュアップされていったんですね。このビジネスはどうやって組み立てていったんですか。
砂川氏
まず会社を設立しました。日本では株式会社を作るために取締役が3人必要なのですが、人に数枚の紙でプレゼンして「おれに賭けてくれ」といってもなかなか集まるわけではありません。そのために原型となるデモを友達に作ってもらって、このビジネスの世界観をわかりやすく見せました。すでにこのとき100戦100敗のサンドバッグ状態を体験していたので、かなり改善されたものを見せることができました。そのデモをきっかけに有名な会社に勤めていた優秀な人を集めてきてチームを作ることができました。
人材は集まったので、次はファイナンス面。ここは僕がアメリカのベンチャーキャピタルの日本代表をしていたときに、いろんな代表のファンドにお会いしていたのが功を奏しました。日本代表をしていたときに「今度僕は起業するんです」ということを話していたんですね。初めてファイナンスにつけてくれた会社は僕がUBS証券でインターンをやっていたときからの知り合いが勤めていたことがきっかけでした。それを機にさまざまなところから出資をえることができましたね。それをもとに本番サービスを作り上げてauの公式サイトに採用していただきました。やはりauさんはGPSを売りにしていたので、すごく親和性が高かったんですね。それを契機にほかのベンチャーキャピタルからも出資を得ることができました。
―それはすごいですね。当時は「ライブドアショック」の後で、ベンチャーに対しての出資が非常に厳しかったという時期だと思うんですけど…。
砂川氏
これだけの資金を集めることができたのは、やはり僕がベンチャーキャピタルにいたこともとても大きな要因の一つだと思います。ベンチャーキャピタルの投資デューデリのプロセスをよく知っていましたから。まずはチーム。誤解を恐れずにいえば人はビジネスモデルよりも大事です。またビジネスについては、評価軸で合意することがとても重要です。自分はその分野に精通していても、ベンチャーキャピタルが同じ情報を持っているとは限りません。最終的には同じ船に乗ってもらうわけですから、情報の格差がある中で、同じ視点でビジネスを評価してもらうことがなによりも大事なんです。あとはベンチャーキャピタル側のポートフォリオとしての意味あいですね。一般的に投資家は相関の低い投資をすることも大切ですから、この投資機会がいかに重要かつユニークかという論点も説得力があります。もうひとつは希薄化を恐れないことでしょうか。
―具体的にはベンチャーキャピタルにはどういう話を持っていったんですか。
砂川氏
「携帯電話は今後どう変化していくのか」ということを話しました。われわれは「モバイルなので外に出ているときに使えるモバイルWEBのあり方とは何なのか、そこでものすごく重要な切り口になるのが“位置情報”です」というように、ビジョンから話を進めていきました。またベンチャーキャピタルとしてより高いリターンを狙うためには、差別化を図れる会社にかけておきたいですよね。普通、経営者はこんなことは言わないかもしれません。つまり、ファンドとして組み入れをしていく中で、将来性を考えると携帯の位置情報ってはずせない分野だと思うんです。僕らは位置情報を専業でやっている珍しい会社ですから、検討する価値が高い。
―なるほど。ベンチャーキャピタルでの経験が生かされたわけですね。そして2007年には三菱商事さんも理解してくれたと。
砂川氏
そうなんです。そこまではファイナンスラウンドで、ここからはストラテジックラウンドと位置付けていました。つまり単純な資金というよりも事業シナジーを狙った資本提携です。僕ら一番やりたいのはバーチャルの世界とリアルの世界をつなげるための位置情報。となると、リアル世界でネットワークを持っている会社が僕らにとって一番シナジーの高いところだと考えたんです。だから、三菱商事とリクルートインキュベーションパートナーズさんとぐるなびさんの3社と提携することにしました。
―それぞれ3社とは事業内容の提携もやっているんですよね。
砂川氏
そうですね。リクルートさんとはうちのビジネスモデルを組み込む形で事業を展開していただいていますし、ぐるなびさんはうちの最も重要な販売代理店の1つです。
―ソフトバンクとの提携には驚きましたけど。
砂川氏
これは劇的でしたね(笑)。ホワイト学割を導入するときの目玉サービスのひとつとして、「おてつだいネットワークス」を入れてもらえることになったんです。
―孫さんとは直接お話しされたんですか。
砂川氏
はい。昨年1月の金曜日にいきなり孫さんの秘書から電話をいただきました。そしてすぐ伺って孫社長に15分くらいサービスの説明をさせていただいたところ、急に資本提携の話になって(笑)。ホワイト学割のプレスリリースが翌週の月曜日に出ることが決まっていたらしく、次の日の土曜日にソフトバンクから電話がかかってきて「プレス発表に使う『おてつだいネットワークス』のスライドを送ってほしい」と。そして月曜日には孫さんが提携の発表をされていました(笑)。まだ書面では契約をしていない段階であっという間に進んでいきましたね。
―その後、問い合わせが殺到したんじゃないですか。
砂川氏
あまりにも突拍子なかったので、あっけにとられた人が多かったみたいですよ。すでにロケーションバリューのサービスとして知っている人は特に。学割クラブというポータルからの流入口として「おてつだいネットワークス」が入っていたので、おかげさまで流入は増えましたけど。
僕らとしてはこのお話をいただく前から、近いうちにキャリアと組もうと考えていたんです。すでに公式化していたauは位置情報が虎の子ですから立ち位置が微妙でしたし、ドコモにいたっては公式コンテンツにすらさせてもらっていない。意思決定の速さと位置情報でのシナジーが見込めることもあって、僕らはソフトバンクしかないと思っていたんです。まさに「渡りに船」でした。
―出井さん(ソニー前会長兼グループCEO)が御社の顧問をされていますよね。
砂川氏
そうなんです。出井さんとは、うちに出資してくださったベンチャーキャピタルのパーティでお会いしました。そのときにいわゆるエレベーターピッチをさせてもらったのですが、とても興味を持っていただけたんですね。出井さんが考えていた位置情報活用の概念とわれわれのビジネスモデルが何か一致した部分があったんでしょうか。出井さんはどちらかというとマクロ的な発想で社会インフラ的にご覧になっていたようですが、僕らはあくまでもひとつのサービスとしてしか考えていなかったので、大きな発見がありました。何か協力できることはないかと言っていただいたので、顧問就任をお願いしました。この規模のベンチャー企業に出井さんがどんな形であれ、かかわっているのは珍しいと思いますよ。ビジネスウィーク誌の特集でもお話しましたが、出井さんは視野がとてつもなく広いし、お忙しい中、顧問になっていただいて本当に良かったと思います。
―御社のサービスである「おてつだいネットワークス」についてお伺いしたいと思うのですが、そもそも「労働力を細分化する」という発想はなかなか思いつかないですよね。
砂川氏
僕は慶應義塾大学出身なのですが、島田晴雄教授(現・千葉商科大学学長)のもとで労働経済学を学んでいたんです。ほかの財やサービスと同じように、労働も細切れにして売り買いできないだろうかということを大学時代に考えていたんです。「おてつだいネットワークス」の原点はそこにあります。
ただ、三菱商事にいたときには鉄道の仕事をしていたのでまったく関係なかったんですが、ハーバードに行ってeBayに出会って衝撃を受けました。eBayでは自分が持っているベースボールカード1枚からオークションにかけられる。余剰労働力もそうやって売り買いできないのかということをあらためて考えたんですね。
しかし、労働力は時間の経過とともになくなってしまうので、その取引にはリアルタイム性が必要。それに、例えば「僕は今から3時間働けます」といっても、勤務地が現在地から1時間かかる場所だとしたら、行って帰って2時間。働ける時間は1時間しかないんです。ものすごく効率が悪いので、こういった短時間の細切れの労働力の提供は難しいと当初は考えていました。
―それなのに、なぜビジネスモデルとして発展させることができたんですか。
砂川氏
ある日、別の授業で携帯電話についていろんな議論を交わしていたときに、日本が一番携帯電話が発達しているからという理由で、僕が日本の携帯電話について調べることになったんです。そのとき携帯電話についてはまったくのド素人だったんですが、いろいろと調べていくうちにauが携帯電話にGPSを搭載しているということを知ったんです。そのときに突然、労働力をリアルタイムにマッチングさせるアイデアと融合して「GPS機能を使って近くにいる人を雇えばいいんだ」ということに気づいたんですね。夜中だったんですけどその場で嫁さんをたたき起こしてこの話をしたら「うるさい」って言われました(笑)。ただ、嫁さんに話すことで頭の中が整理できました。そして、有名なハーバードの戦略論の先生にこの話をしたら「面白いじゃないか。やってみろよ」という話になって、本格的にこのビジネスについて考えるようになったんですよ。
―なぜこの時代に「おてつだいネットワークス」を展開できるとお考えですか。
砂川氏
とても緩やかで見にくい変化なのですが「人口が減っていること」がとても大きなポイントなんです。われわれ第2次ベビーブーム世代から見ると、今の1学年の人数は5~6割程度しかいない。本当に人がいないんです。そもそも人口減少社会において労働力を確保する方法は、オートメーション化するか、外国人労働者に頼るか、細切れの労働力を活用するかの3つしかないんです。われわれはその中で埋蔵されている「細切れの労働力」に未来があると考えているのです。
例えば、専業主婦は2~3時間働けるときもあれば、まったく働けないということもある。雇うほうも雇いづらいし、働くほうも心苦しいのでうまく活用されてない。学生も学業が本分ですから、毎日毎日アルバイトというわけにはいけない。ただ、そういう労働力って仕組み次第でうまく使えるんです。
「おてつだいネットワークス」の概念は「労働力のロングテール」。長時間、働ける人は少ししかいないけど、ちょっとだけなら手を貸せるよという人であれば、いくらでもいる。このシフト表をひとりで埋めていこうとすると無理がありますよね。でもいろんな人で埋めればなんとかなる。ロケーションバリューはここをマーケット化したんです。不定期短時間で働けるから、アルバイトではなくてもっとライトな感覚。だから「おてつだい」なんです。
―なるほど、だから「おてつだい」なんですね。もっと具体的にサービス内容を教えていただけますか。
砂川氏
このサービスのフローは、サイト上で「今ヒマ」と宣言すると、現在いる場所の近くの求人情報メールが届き、気に入った募集があれば応募します。雇用者側が採用してくれればメールがきて、指示に従っておてつだいをする、という流れです。例えば、昔スーパーのレジやっていた人は、スーパーのレジ打ちをすることはできますから、3時間だけ時間が空けば近くのスーパーでレジ打ちのおてつだいをすることができますよね。
また、評価システムがあって、高評価が蓄積されると採用される確率があがるんです。しかも自信があれば時給の指値もできる。例えば20人から「非常に良い」という評価があるとき、時給1000円の仕事の募集があっても、それに「1500円だったら働きますよ」と指値を言うことができるんです。本当に優秀な人材であれば、時給が高かったとしても採用する合理性がある。
―今までの採用サイクルと違って、面接などを行わないということですよね。
砂川氏
通常だと応募・面接まで入れて稼動し始めるまでに1カ月くらいかかります。面接がなくてクオリティが確保できるのかといわれることもありますが、逆に30分面接したところで何がわかるのかと思いませんか? 今まで採用した20人の雇用者が口をそろえて「非常に良い」と評価した人のほうがよっぽど信ぴょう性が高いと思いませんか。
うちのサービスで今までに最短で着任して働き始めるまでの時間が7分という人がいましたね。平均だと求人を出してから数時間後には採用が決まっています。
―「おてつだいネットワークス」が受け入れられている大きな要因はどんなところだと考えているんでしょうか。
砂川氏
アルバイトは、6カ月以内に50パーセントの人が辞めるといわれています。社員や店長の雰囲気が悪い、仕事内容が合わない、といった「やってみないとわからなかったこと」が原因になっているそうです。だったら、インターンみたいにいろんなところで仕事を体験してみて、自分が気に入ったところで働けるようにすれば、雇用する側としても気に入った人材を確保することができますし、定着率が上がりますよね。働き手からも雇用主側に評価が集まりますから、そうなると時給を下げても応募が増えるんです。アンケート結果を見ても時給以上に、働きやすさが重視されていますから。
―サイトを拝見すると御社のビジネスモデルは、これからも「位置情報×動詞」で展開されていく予定なんですね。
砂川氏
例えば、おてつだいネットワークスは「位置情報×働く」ですね。なんで全部動詞になっているかというと、位置情報を活用してその場ですぐアクションに起こしてもらえるように動詞にしたんです。位置情報が付随したカスタマイズされた情報を提供することで、その場で何かアクションを起こしてもらうというのが僕らのコンセプトですから。
―名刺の裏面と、サイト上に連なる「Location×dine」「Location×play」「Location×exercise」「Location×buy」「Location×travel」の文字と、そのすべての後にComing Soon…となっていますが、この状態を見ているだけでも何かわくわくしてきますね。これからのサービスにも注目していきたいと思います。
本日は、お忙しいところありがとうございました。
今回のキーワード:ロケーション・ベースド・サービス 一般的にLBSと省略されることもある。位置情報を利用したサービスという意味。携帯電話などのモバイルデバイスがセルベースやGPSを利用した位置情報取得機能を搭載するようになってから特に注目を集めるようになった。現在のところ、どこに何があるといった電子地図的な使い方や、少し発展させた移動する人・物がどこにいるかを調べるサービスなどが主流だが、今後は現実世界における行動履歴の統計を活用したサービスなどが具現化する可能性が高い。 |
2009/8/27/ 09:00