「ステルスモード」で進行中 Googleの作る“Google Pad”


 「iPad」の発売は、タブレットへの関心と認知度を一気に高めた。同時にライバル各社の対応にも注目が集まっている。いまやAppleの最大のライバルとなったGoogleが、タブレット端末を投入するのは自然な流れとみられており、トップのEric Schmidt氏の言葉などから、“Google Pad”の輪郭が次第に明らかになりつつある。

 iPadの発売から約1週間がたった4月11日、New York Times紙は、ライバル各社のiPad対抗機の動向を伝える記事を掲載した。iPadの最初の販売状況や反響が出そろったのを受けたもので、Nokia、Microsoftとそのプラットフォームを採用したHewlett-Packard、そしてGoogleの動きをまとめている。Googleについては、Schmidt 氏がロサンジェルスのパーティで友人に語った内容をもとにしているという。New York Timesはさらに翌12日、Google の計画の続報を伝えた。

 これら両記事の情報をまとめると、(1)GoogleタブレットはOSに「Android」を採用 (2)Webブラウザには「Chrome」を搭載し、iPadと違ってAdobe Systemsの「Flash」をサポート (3)このタブレットは現在“ステルスモード”で、Googleは複数の出版社とコンテンツ配信を実験している――という。

 より具体的な話もある。TechTremor、Techtreeなどの情報サイトはNew York Timesとほぼ同時期に、Google が台湾のHTCと提携してタブレットを開発中であると伝えた。HTCは、Android携帯電話でGoogleと組んだ実績がある。ソースはNew York Timesとは異なり、New York TimesがOSにAndroidを採用したと伝えたのに対し、「Android かChrome OS」(Techtree)、「AndroidではなくChrome OS」(TechTremor)と、Chrome OSの優勢を伝えている。

 当のGoogleは、こうした報道に対して何もコメントしていないが、今年はじめの段階で“Google Pad”のコンセプトを公表していた。ChromeブラウザとChrome OSでUI開発を率いるGlen Murphy氏が「The Chromium Projects」のブログで公開したものだ。「Chrome OSタブレットのUIがハードウェア上でどのように見えるか」を視覚的に表現してみたものだという。

 しかし、New York Timesが伝えるSchmidt氏からの情報では、開発中のタブレットのOSはAndroidだという。Android なのか、Chrome OSなのか――。まだ見ぬGoogleタブレットの成功を占う上で、OSの違いは大きな要素となる。

 Chrome OSはインターネット利用に特化した“Web OS”だ。迅速に立ち上がり、Gmail、Google MapsなどのWebアプリケーション、オンラインストレージ機能を利用するイメージだ。一方のAndroidはモバイル機能が充実しており、まずスマートフォンに採用されている。タブレットは、PCやネットブックと、スマートフォンの間に位置するフォームファクターで、両OSとも採用される可能性はある。

 eWeekは、タブレットこそChrome OSの本領を発揮できるカテゴリーと見ている。それでもなお、Googleがタブレットに Androidを採用するのだとすると、OSの機能のためではなく、iPadがタブレット市場での地位を固めてしまう前に、早急に投入することが狙いだとしている。Googleによると、Chrome OSのリリースは2010年後半の予定で、搭載するハードはさらに後になりそうなのだ。

 New York Times紙によると、Schmidt氏は友人に対して(タブレットは)「最初は適切に提供できないかもしれない」「その後、2~3年で見極められるだろう」と述べたという。

 GoogleがiPadに対抗してタブレットを出すとなると、Flashのサポートとオープン性が強みとなりそうだ。膨大な Flashコンテンツを利用できることは、ユーザーとプロバイダーの両方にとって魅力である。GoogleとAdobeは、対 Appleでますます関係が強まっており、Googleは3月末、Flashプラグインを組み込んだChromeブラウザを公開している。タブレットは、3社の動きを加速させそうだ。

 オープン性では、Appleが最新の「iPhone OS 4.0」と同SDKで囲い込みの動きに出たところだ。Googleは対照的にオープンさをアピールして、開発者とユーザーにアピールしようとするだろう、とNew York Timesは予想する。

 では、Googleがタブレットに進出する際の課題は何だろうか? Googleは、スマートフォンではiPhoneを追いながら OSを発表したが、結局は「Nexus One」を投入して真正面から対決した。ただしNexus Oneは今のところiPhoneの後塵を拝しており、これにはGoogleのマーケティングのまずさを指摘する声もある。タブレットでも同じ轍(てつ)を踏んでしまう可能性はある。

 またOSについては、eWeekは分断化の警告を発しながら、GartnerのアナリストRay Valdes氏の「Googleはスマートさ、政治的スキルを問われる」というコメントを伝えている。Androidに、さらに Chrome OSが加わることで混乱が増すことを危惧するというのである。

 Gigaomは、GoogleがiPadに対抗するにあたって、サイズ(5~8インチが狙い目)、「Android Market」へのアクセス、端末とPCとの同期機能など具体的なアドバイスを挙げている。そして「Appleのエクスペリエンスの方が洗練されている」とした上で、Googleは「オープンなエコシステム」「Googleサービスとの統合」などで差別化が可能であると分析している。

 もちろん、Nokia、Microsoft、HP、DellなどのIT大手もiPadに対抗するタブレットの準備を進めている。さらに、多くのベンチャー、中国、台湾などのデバイスメーカーもそれぞれ独自のタブレットを開発しているようだ。

 GoogleとApple、他のライバルたちば、これからタブレット市場で本格的な戦いを繰り広げることになる。

(岡田 陽子=Infostand)

2010/4/26/ 11:58