オープンソースをベースに相互運用性を重視-レッドハットのクラウド戦略

米国クラウド事業責任者が説明

米Red Hat クラウド事業ユニット バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャのスコット・クレンショウ氏

 レッドハット株式会社は4月14日、クラウド戦略に関する記者説明会を開催し、米Red Hat クラウド事業ユニット バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャのスコット・クレンショウ氏がクラウド事業拡大に向けた戦略を説明した。

 レッドハットは、2010年度の重点戦略としてクラウドを掲げており、米本社では従来のLinux事業ユニット、ミドルウェア事業ユニットに加え、新たにクラウド事業ユニットを3月に設置している。今回、クラウド事業ユニットのヘッドに就任したクレンショウ氏は、昨年度まで同社の主力事業であるLinux事業ユニットを率いていた経歴をもち、同社がクラウド事業拡大に本気で取り組んでいく姿勢を示すものとなった。

 クレンショウ氏は、クラウド事業ユニットの戦略について、「当社では、これまでエンタープライズLinuxで培ってきた革新性、信頼性、パフォーマンス、価値をクラウド市場にも同様に提供しており、すでにほとんどのパブリッククラウドに当社のインフラテクノロジーが採用されている。当社が展開するクラウド戦略と他社のクラウド戦略が大きく異なる点は、オープンであることだ。他社は、クラウド市場において顧客を囲い込むようなアプローチをとっているが、当社はオープンソースをベースに、相互運用性に優れた柔軟性のあるクラウド戦略を展開していく。これにより、OSやアプリケーションの種類を問わず多様なIT資産を一つのクラウドとして管理することができ、顧客のITシステムにより高い柔軟性、信頼性、パフォーマンス、セキュリティを提供する」と述べている。

3フェーズによるクラウド事業への取り組み

 具体的には、(1)統合:サーバーの仮想化、(2)自動化:プライベートクラウドの構築、(3)ユーティリティ化:パブリッククラウドの追加――という3フェーズで、顧客にペストプラクティスとなるクラウドインフラを展開していく方針。まず、フェーズ1の「統合」では、同社の仮想化製品群「RED HAT ENTERPRISE VIRTUALIZATION」によってエンタープライズ全体の仮想化を推進し、物理サーバーの数を減少させ、その使用率と柔軟性の向上を図ることでクラウドの基盤を構築する。「当社の仮想化テクノロジーは、始めからクラウドの構築を念頭に置いて設計されており、マルチテナントに対応するとともに、QoS、セキュリティ、スケーラビリティ、パフォーマンスに優れた先進的な機能を備えている。これにより、顧客は効率的にクラウド基盤を構築できる」(クレンショウ氏)と説明する。

 フェーズ2の「自動化」では、ある程度まで仮想化が進んだ段階でプロセスの自動化を図り、プライベートクラウドの構築に向けて、「RED HAT ENTERPRISE VIRTUALIZATION」に加え、管理ソリューション「RHN SATELLITE」、運用管理・モニタリングを効率化する「JBOSS OPERATIONS NETWORK」、リアルタイムOS「MRG」という4つの製品を展開していく。「これらの製品によって、異なる多様なサーバー間において、OSやアプリケーションイメージを作成・展開し、それらを管理し、連携させることが可能となる」(クレンショウ氏)という。また同社では昨年、オープンソースプロジェクト「デルタクラウド」を立ち上げており、今後のロードマップとして、異なるさまざまな仮想化環境でも利用可能となるオープンインターフェイスの開発を進めていく。

 フェーズ3の「ユーティリティ化」では、プライベートクラウドの利用が進んだ段階で、キャパシティを低コストで増やせるユーティリティとしてパブリッククラウドのプロバイダを追加する。クレンショウ氏は、「当社が構築するプライベートクラウドはオープンで、同じアーキテクチャを採用しているため、AmazonやIBMの提供するパブリッククラウドをシームレスに追加し、既存のツールを使って管理することができる。例えば顧客は、社内のリソースが足りなくなった場合でも、パブリッククラウドを活用して柔軟にキャパシティを確保することが可能になる」としている。

フェーズ1:仮想化でスタートフェーズ2:プライベートクラウドの構築フェーズ3:パブリッククラウドの追加

 さらに同社では、こうしたクラウド戦略を支えるため、エコシステムにも注力しており、認定プログラムとして「Red Hat Certified Cloud Provider」とその上位プログラム「Red Hat Premier Certified Cloud Provider」を展開している。「このプログラムは、非常に厳密なテストと認定基準によって運営されている。これにより、当社のテクノロジーを活用したソリューション、サービスを安心してクラウド上で利用することが可能となる。そして、問題が発生した場合にもベンダー間のネットワークが構築されているため、充実したサポートを受けることができる」(クレンショウ氏)という。

レッドハットの廣川裕司社長

 なお、説明会では、レッドハットの廣川裕司社長が国内でのクラウド事業への取り組みについても触れ、「米国本社の動きを受け、日本法人も4月から20人体制でクラウド仮想化事業本部を立ち上げた。今回、クレンショウ氏がクラウド戦略を説明するのは、海外では日本が初めてであり、それだけ日本市場および国内パートナーへの期待度は大きいといえる。国内でもクラウド市場が拡大していく中で、旋風を巻き起こしたい」と意欲を見せた。




(唐沢 正和)

2010/4/14 18:46