日本HP、容量単価を低減したiSCSIベースの仮想化ストレージ「P4000 G2 SAN」

パリティベースのネットワークRAIDにも対応

P4000 G2 SANの特徴
エンタープライズストレージ・サーバー・ネットワーク事業統括 ストレージワークス事業本部 製品マーケティング本部 担当マネージャの宮坂美樹氏は

 日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は4月5日、iSCSIストレージの新モデルとして「HP StorageWorks P4000 G2 SANソリューション」(以下、P4000 G2 SAN)を発表した。容量あたりの価格を低減しながら、機能・性能を強化しているのが特徴。同日より提供を開始する。

 P4000 G2 SANは、スケールアウト型の拡張が可能なiSCSIストレージで、2008年末に米LeftHand Networksを買収し、自社のポートフォリオに加えられた製品。従来はLeftHandブランドで提供されてきたが、今回より日本HPのストレージブランド「StorageWorks」に統合し、新たに展開されることになったという。

 特徴は、ノードを増設するごとに、処理性能、帯域性能、容量をリニアに拡張できる点で、最小2ノードからの導入に対応。成長にあわせてノードを追加すれば、最大32ノードまでの拡張を柔軟に行える。また、標準ではGigabit Ethernet(GbE)を利用するが、オプションによって10GbEにも対応しており、ネットワーク性能を強化することもできる。加えて、仮想的にボリュームの容量を構成するシンプロビジョニング(仮想プロビジョニング)機能、筐体障害時の可用性を高めるネットワークRAID機能、バックアップやリカバリに活用できるスナップショット機能などを搭載しており、仮想化環境で必要とされる柔軟性、可用性などの要件を満たしているという。

 エンタープライズストレージ・サーバー・ネットワーク事業統括 ストレージワークス事業本部 製品マーケティング本部 担当マネージャの宮坂美樹氏は、「サーバー仮想化はかなり進んでいるが、あまりにも先行しすぎたため、ストレージが置いてけぼりになっている」という現状を指摘。「ストレージも認識した上で、全体的な仮想化を行うことにより、コスト削減を実現する。シンプルな管理、パフォーマンス向上、可用性向上といったメリットをP4000 G2 SANで提供できる」と述べ、仮想化時代に適したストレージだと強調した。

 今回の新モデルでは、こうした従来の特徴を受け継ぎながら、ネットワークRAID機能をさらに強化した。これまでは筐体を冗長化していたため、容量効率が悪いという問題があったが、P4000 G2 SANではパリティベースのネットワークRAIDをサポート。ネットワークRAID 5/6を利用することによって、筐体の冗長性を保持しつつ、容量効率を上昇させている。宮坂氏によれば、こうしたネットワークRAID機能は、競合製品となるデルの「EqualLogic」との差別化を図る上でも、可用性の確保という点で重要な要素になるという。

 また、「今の構成がベストプラクティス構成と比較して、どこがまずいかを表示してくれる、Best Practices Analyzer機能を搭載し、初歩的な構成ミスやうっかりミスを防げる」(宮坂氏)のも、大きな強化点。さらに、Windows環境において、アプリケーションと連携した整合性のあるスナップショット作成が可能になったほか、高速な読み取りを支援する仕組み「先読みキャッシュ」機能が追加された。加えて、x86サーバーベースのハードウェアを採用する利点を生かし、ベースとなるハードウェアを、Xeon 5500番台ベースの最新プラットフォームに変更。アクセス性能の改善も行われている。

ベストプラクティス構成との比較機能が搭載されたハードウェアの改善点
TB単価が大きく改善されている

 このほか機能面以外では、「規模の経済性を生かし、容量あたりのコストを大きく低減した」(宮坂氏)点も大きい。宮坂氏によれば、「LeftHand Networksの買収後、同社が創業以来販売してきた数の2倍あまりを、HPはこの1年間ちょっとで販売した」とのことで、大容量HDDの採用などとあわせて、従来製品の同等クラスと比べ、TB単価を35~48%低減させた。例えば「P4300 G2 7.2TB SAS Starter SANベースモデル」では、従来の同等製品と比べ、容量を4.8TBから7.2TBへアップさせながら、価格を504万円から388万5000円にダウンさせ、TB単価を48%低減している。

 他モデルの価格例は、SATA HDDの代わりにMid-Line SAS HDD(7200rpm)を採用した「P4300 G2 16TB MDL SAS Starter SAN Solution」が346万5000円、「P4300 G2 8TB MDL SAS Starter SAN Solution」が210万円、「P4500 G2 60TB MDL SAS Scalable Capacity SAN Solution」が976万5000円。また、SAS HDD採用の「P4500 G2 5.4TB SAS Virtualization SAN Solution」が323万4000円、「P4500 G2 10.8TB SAS Virtualization SAN Solution」が598万5000円、「P4500 G2 21.6TB SAS Multi-site SAN Solution」が1155万円、などとなっている。既存製品についても、ソフトウェアのアップグレード(無償)によって、新モデルとの同一クラスタ構成が可能になっているとのこと。

エンタープライズストレージ・サーバー・ネットワーク事業統括 ストレージワークス事業本部 事業本部長の富岡徹郎氏

 なお、エンタープライズストレージ・サーバー・ネットワーク事業統括 ストレージワークス事業本部 事業本部長の富岡徹郎氏は、「多くのお客さまがメンテナンスのためにIT投資の7割以上を利用しているのが現状で、新規投資のために、メンテナンスコストをいかに圧縮するかが課題」という点を指摘。それを実現するための重要な要素として、容易な管理性と拡張性を備えたP4000 G2 SANを、戦略製品として提供するとした。

 具体的な販売ターゲットとしては、小さく入れて大きく伸ばせるという特性を生かし、中堅・中小企業を想定。パートナープログラムの強化によって、この領域に積極的に売り込む意向を示す。さらに、直販を中心とする大規模領域については、無停止で迅速に拡張できる点、高い可用性を持つ点が「クラウドコンピューティング」に向くとし、クラウド事業者に対して販売を進める考えを示している。

 「iSCSI市場は非常に伸びる分野として期待しているし、スケールアウト型のアプローチも支持されている。当社は、iSCSIストレージの出荷台数、出荷容量では国内1位を獲得しているが、圧倒的なシェア1位をこれからも保っていきたい」(富岡氏)。




(石井 一志)

2010/4/5 14:16