コンビニ向け複合機で強みを発揮するシャープの取り組みをみる


 シャープが、コンビニエンスストア向けデジタルフルカラー複合機の導入を加速させている。

 2007年に投入した、コピー・FAX・デジタル画像プリントなどが可能なデジタルフルカラー複合機は、2007年11月にファミリーマートに導入したのを皮切りに、サークルKサンクス、スリーエフへも導入。さらに、2010年3月には、デイリーヤマザキ1500店舗に導入。シャープでは具体的な導入店舗数はあきらかにしていないが、試算によると約1万5000店舗以上に導入。業界シェアは約4割に達すると見られ、同社の複合機事業における重要な柱のひとつとなっている。

 シャープのコンビニエンスストア向けのデジタルフルカラー複合機事業の取り組みを見た。


ユーザーの使いやすさ、現場の管理のしやすさを配慮

 シャープがコンビニエンスストア向けの複合機の販売を開始したのは、1986年。ファミリーマート向けに導入したのが始まりだ。

 オフィス向け複合機をベースに、コンビニエンストアでの利用に求められる機能を搭載。専用製品として開発するとともに、同分野向けの専門営業部門を設置して展開している。

デイリーヤマザキの店舗で使われている「MX-4500DS」

 現行モデルは、MX-4500Nをベースとした「MX-4500DS」で、末尾のDSの型番にはドキュメントサービスの意味がある。

 シャープドキュメントシステム株式会社ドキュメント法人事業統括流通営業部 部長の黒木敏博氏は、「コンビニエンスストアからの声を聞き、それを反映し続けてきたことが実績につながっている。ユーザーの使いやすさ、現場の管理のしやすさなどに配慮した設計を随所に凝らしていることが、店舗からの高い評価を受けている」とする。

 コンビニエンスストアではコピーの操作に慣れない人も利用するため、わかりやすい画面表示に配慮。原稿種別自動認識機能「マジカルビューII」の搭載により、原稿の種別を自動的に判別し、最適なコピーモードに設定できるようにしているほか、簡単な操作で両面コピーを行えたり、カードの表裏を1枚で同一面に印刷できるカードコピー機能、2ページ分の原稿を1枚の用意に並べて印刷できる集約コピー機能などを搭載。さらにサイズや用紙、枚数を選ぶごとに料金を明確に表示するなどの工夫が凝らされている。

 カラー印刷とモノクロ印刷のボタンを別に用意しているのも、間違い操作を防ぐ工夫のひとつだ。

 メディアからデータを転送する場合に、データ転送後の抜き忘れを防止するために、抜き取り操作が終わらないと、次のプリントの操作に進めないといった利用者視点での操作性も実現している。


操作に慣れない人でもわかりやすい画面表示カラー印刷とモノクロ印刷のボタンをそれぞれ用意さまざまなメディアを利用可能
シャープドキュメントシステム ドキュメント法人事業統括流通営業部 部長の黒木敏博氏
データを自動的に消去していることを表示する

 「かつては、メディアの抜き忘れが多く、現場では問題が多かった。これを解決するための仕組みとして採用した。また、USBメモリーを挿した場合には、SDメモリーカードなどの別のスロット部はふたが開かないようにして、間違いを防いでいる。ユーザビリティを高めるという点では、家電メーカーとしてのノウハウを活用している」とする。

 一部店舗では、複合機からのコピー用紙の盗難があったことから、ロック機構を設けて、簡単に給紙カセットが開かないようにしているのも、店舗からの要望を反映したものだ。

 さらに、1枚や2枚といった少ない枚数を利用する人が多いため、ファーストコピーが早くできるという、コンビニ向けならではの仕組みも採用している。

 また、2003年6月には、コンビニ向け製品としては初めてセキュリティ対応を図り、使用後に複合機に読み込んだデータを自動的に消去する機能を搭載。「運転免許証や健康保険証、履歴書のコピーなどの用途では、個人情報の漏えいを危ぶむ利用者も少なくない。データを消去するとともに、その作業を行っていることを明確に表示するようにしている」という。


写真プリントや証明写真、オリジナルカレンダーも作成可能

 コンビニエンスストアにおいて、カラー複合機の機能強化は、サービス拡大に向けた重要なツールとなる。

 シャープのコンビニ向け複合機では、コピー機能やFAX機能だけでなく、デジタル画像プリントサービスが行えるほか、デイリーヤマザキ、サークルKサンクス、スリーエフに導入している複合機では、L判サイズの写真プリントサービスも用意している。

 デジタル画像プリントサービスでは、デジタルカメラや携帯電話で撮影した画像をA4光沢紙に印刷。さらに最大A4サイズに拡大出力でき、これを4枚つなぎあわせA2相当のポスターサイズの印刷も可能とした。カレンダー機能も搭載しており、撮影した写真を使った卓上タイプや張り出しタイプのオリジナルカレンダーを作成することもできる。

 また、写真プリントサービスは、増設した印刷用の昇華型プリンタにより、L判サイズの印刷のほか、証明写真の印刷も可能となっている。

 「結婚式の際に、近くにシャープの複合機が導入されているコンビニエンスストアを探して、2次会までの短い時間内に印刷をして配布するといった使い方もできる。さらに、就職活動をしている学生は何枚もの履歴書用の写真が必要になるが、低料金で証明写真を作ることができる」などの例を示す。


写真プリントサービス用の機器携帯電話で撮影した写真は赤外線で送ることができる
4×3cmの証明写真の場合、L判に4枚プリントアウトできる

 履歴書に使用する証明写真の場合、200円で4枚分の写真をプリントアウトでき、1枚あたりのコストは50円と、一般的な証明写真撮影機でのプリントアウトよりも低料金になる。

 なお、デイリーヤマザキ、サークルKサンクス、スリーエフでは、複合機が導入されている店舗のうち、95%程度で写真プリントサービスが可能だという。

 また、FAX機能も、ヤマトシステム開発が提供しているクロネコFAXを利用することで、FAX受信が可能になるサービスも提供している。

 「コンビニエンスストアの複合機を使って、これだけのことができるということを知らない人が多い。もっと認知度を高めていく必要があるだろう。コンビニエンスストアと協力して、認知度を高めるための支援を行っていきたい。特に、デジタル画像プリントサービスや、L判サイズの写真プリントサービスなどの利用率を高めたい」(黒木部長)としている。

 コンビニ向けの複合機は、ほぼ4~5年ごとに新製品が開発されており、「2010年度は、コンビニ各社からさまざまな要望を聞き、次世代製品の開発にこれを反映していく年になる」としている。



(大河原 克行)

2010/4/2 09:00