2010年度は“大公開時代”、新製品を続々投入予定のサイボウズ

青野社長らが戦略を説明

代表取締役社長の青野慶久氏

 サイボウズ株式会社は3月18日、戦略説明会を開催。代表取締役社長の青野慶久氏らが登壇し、「グループウェアを使える場所・用途・人を増やす」と今後の戦略を説明。そのために「2010年度は大公開時代」と定め、次々と新製品を投入する意向を示した。

 最初に青野氏が、今後の方向性について言及。「以前のグループウェアはほとんどがクライアント/サーバー型で、もっとWebに着目しようとサイボウズは始まった。サイボウズOfficeも初版は画面が貧弱だったが、バージョンアップを重ね、今ではだいぶいいものになったと自負している。ところが、そんなOfficeでも『社内メール機能』があまり使われていない。当社はほとんどが社内メール機能で、これさえあればeメールはいらないなと考えていたため正直、衝撃だった。同じようにサイボウズ デヂエもOfficeと比べると、5分の1も利用されていない。なぜかと考えると、サイボウズはスケジュールだけだと思われていたり、社員同士でしか使えないのが不便だったり、グループウェアの活用スキルがまだまだ浸透していないのだろう。今後は、これらにしっかりと戦略を持って向き合うことがミッションとなる」。

サイボウズOffice初版の貧弱なトップ画面ログアウトしてもスケジュールにアクセスできるというバグも存在したというバージョンアップを重ね、洗練されたサイボウズOffice8

社内メール機能があまり利用されていないことに青野氏は衝撃Twitterで「社内ではeメールはほとんど使用しません」とつぶやいたら、「(では、コミュニケーションは)テレパシー?」などの反応が。正解は、サイボウズOfficeの社内メール機能を利用している
KUNAIは今後、プラットフォームなどを増やす予定

 続いて登壇したSMB戦略部の野水克也氏が、「サイボウズOfficeを中心に、グループウェアが使える場所・用途・人を増やしていく」と、より具体的な戦略を説明。「当社の目標は、日本中のPCをグループウェアで埋め尽くすこと。しかし、中には仕事中ずっと外出している人や、そもそもPCを使わない職業の人もいる。そんな人たちにも価値を感じてもらえるソフトを開発していく」とした。

 「使える場所を増やす」のが、2月に発表した「KUNAI」。大規模向けグループウェア「サイボウズ ガルーン 2」をスマートフォンで利用可能にするものだ。現状はWindows Phone版のみだが、順次、BlackBerry/iPhone/Android版へ展開。使えるグループウェアも、サイボウズOfficeや無償グループウェア「サイボウズLive」へ広げていく予定という。

 次に「使える用途を増やす」のが、2009年9月に発表した「かんたんSaaS」。デヂエをSaaSで提供するものだが、特定業種を支援する狙いもある。特定業種に強いパートナーと組んで、デヂエによる専門アプリケーションを開発し、それをSaaSで提供しているのだ。

 現在、好評なのはアミタエコブレーンと一緒に作った『産廃契約らくらく管理』。産業廃棄を行う事業者向けに、行政手続きなど手間のかかる作業負荷を、デヂエの柔軟性で解消している。野水氏は「今後もIT以外の業種知識を持つパートナーと提携し、2010年度も続々とラインアップを増やしていく予定」と語る。

 かんたんSaaSの母体であるデヂエでも、応研の「販売大臣NX」とのデータ連携を実現。近日中にはサイボウズOfficeからタイムカード情報をCSV出力する「タイムカード・メーカー」を投入し、それを「PCA給与」や「弥生給与」に取り込めるような製品もリリースするという。

使える用途を増やす、かんたんSaaS特定業種向けのデヂエアプリケーションを多数提供しているタイムカード・メーカーも投入予定
使える人を増やす、サイボウズLive

 最後の「使える人を増やす」のが、無償で話題のサイボウズLiveだ。社内だけでなく、社外の取引先からプライベートの友人までを対象に、グループウェアのすそ野を増やしていく。Fremium(Free+Premium)のビジネスモデルを採用するLiveでは、どこから有償(Premium)とするかが重要だが、「現在、どこからなら皆さんに納得してもらえるか、料金体系を決めるためのテストマーケティングを実施しているところ」(青野氏)。同時に別稿の『サイボウズLive、無償グループウェアで狙う「100億円の売上規模」』で触れた通り、2010年中ごろの正式公開に向け、数多くの新機能を追加している最中でもある。

 このほか「当社の製品のほとんどで、2010年度中に新版を投入する予定。SharePoint上で稼働するグループウェアや、グループウェアの負荷計測ツール『ScaleBench』も提供し、また詳細は言えないが、これ以外にも1つ大きな新製品を予定している」と青野氏。

 「当社にとって2010年度は、新製品を続々公開する“大公開時代”。そのための大規模な投資を考えており、2010年度単体業績としては、前期比で売り上げが1.3%減、営業利益が39.7%減、経常利益が38.5%減と減収減益を予想している。ただし、これはさらに飛躍するためのもの。実際、人材採用に力を入れ、84名から217名へと正社員数を拡充している。拠点も国内・海外含めて拡大しており、大航海時代ではないが大きな船出に向けて準備を進めているところだ」とした。

 また「当社の課題は、“総合力の向上”にあると考えている。もはやスケジュールだけやっていても生き残りは厳しい。そこで考えたのが、使える場所・用途・人を増やす計画。目指すは、圧倒的な総合力を持つグループウェア製品群の実現で、これはグループウェア専業ベンダーの当社でしか出せない色だ。確かにGoogleやMicrosoftに企業規模では負けてしまうが、グループウェアの分野に限っては負けない。総合力で顧客の多様なニーズに応えていくので、ぜひ、“まだまだサイボウズ、できることあります”というところを見ていてほしい」と語った。


サイボウズ製品一覧ラインアップのほとんどで新版投入を予定。詳細は明らかにされなかったが、大きな新製品も1つ予定しているという
正社員数の推移。グループ会社も含めるとおよそ300名に拡大している国内・海外拠点も拡大





(川島 弘之)

2010/3/18 18:34