「グローバルブランド確立が目標」、リコーが中期戦略を説明

5年で新規事業を倍に、売り上げ全体の25%を目指す

 株式会社リコーは3月12日、中期経営戦略に関する記者・アナリスト向けの説明会を開催。代表取締役 社長執行役員の近藤史朗氏が、同社の目指す方向性を説明した。

 リコーでは2008年3月まで第15次中期経営計画を展開し、「新たな顧客価値創造や効率性向上を目指した、仕込みとなる投資を積極的に実施。大型の効率化投資や、さまざまな買収、開発拠点の統合といった施策を打ってきた」。そして、「次の第16次中期経営計画できちんと効果を刈り取り、会社の効率化によって得た利益を、さらなる成長につなげていこうとしていた」という。

 しかし、2008年後半のいわゆる“リーマンショック”により世界経済が低迷した影響を受け、基本戦略に加えて、いくつか追加の施策が必要になったという。1700億円あまりを投じた独立系販売会社IKONの買収自体は、リーマンショックの前に意志決定がされていたというが、「第15次中期経営計画で資産が増えてしまった。それをしっかり筋肉に変えていく動きが必要で、グループ全体の構造改革『CRGP(Corporate Restructuring and Growth Project)』に緊急で着手した」と、ここまでの経過を説明。「CRGPを進めてきたが、さらに“ドバイショック”や南欧を中心とした経済不況が襲いかかっており、為替に対するインパクトも、北米・欧州を中心にした事業が伸び代であるので苦しくなっている」とも述べ、目標達成を2~3年伸ばさざるを得なくなったとの状況を示した。

代表取締役 社長執行役員の近藤史朗氏当初計画よりも、目標達成時期を2~3年伸ばすという
5つの目標
オフィス領域でのシェア拡大を目指す
プロダクションプリンティング事業もフォーカスの1つ

 その上で、今後進める基本戦略としては大きく5つを示す。1つ目は、「狙いの事業領域でトップになる」ということ。そのために、近藤社長は「お客さまの価値はもう、機器を保有することにはなく、クラウド、資産を保有しない動きが大きく出ている。これまでのハードウェアからサービス、ソリューションにリソースを切り替え、効率化や再配置をしないといけない」と述べ、一例として、オフィス領域の展開拡大を挙げた。

 従来、複合機はスタンドアロンで設置されていたが、今ではほぼ100%ネットワークにつながるようになった。そうした中で、「『印刷が出ない』となると、当社のオンサイトサービスを呼んでいただける。ただ、当社の製品が原因でなかったとしても、それで帰りますというわけにもいかず、保守員はネットワークやサーバーの保守も無償でやっていた」状況がある。そこでリコーでは、このようなITサービスを何とかして有料化しようと取り組みを進めており、その伸び代が、グローバル領域を含めて非常に大きいのだという。

 顧客企業のドキュメント入出力環境を包括的に管理・運用する「マネージド・ドキュメント・サービス(MDS)」についても、ICONを中心に、すでに米州で2000サイト、欧州でも200サイトでサービスを提供中で、「こうして得た知見を、地域地域でアレンジしながら、大手のお客さまには統一したメニューで、統一した価値を提供できる」とリコーの価値を強調。ITサービス「BBパック」についても、日本での加入者はまだ5万にとどまっており、「ユーザー数からいくとまだ数%のお客さまへしか行き渡っていない」と述べ、成長の余地が大きく存在するとアピールしている。

 これ以外の事業では、「まったくの新規事業」という、プロダクションプリンティング事業への期待を示す。この分野では、機種開発に対する投資など、大きな投資を行っていたが、「IKON、IBMとの共同出資会社であるInfoPrintとの体制を固めて、お客さまに当たれるようになった。2010年度以降、徐々に、しかし着実にその成果が出てくる」(近藤社長)とのことで、まだ事業に対する貢献度は低いが、今後伸びてくるだろうとの見解を述べている。

全体の環境負荷を、2050年までに2000年の1/8にする目標を立てている
新しい成長領域の創出を図る

 また2つ目の「環境経営の強化、加速」については、2050年までに、環境負荷を2000年の1/8にするという長期目標を掲げているとのこと。近藤社長は、「省資源・リサイクル」「省エネ・温暖化防止」「汚染予防」を3つの柱に、それぞれ1/8を達成するため、「個別の目標を部門・部門できちっと作り上げて実行する」と話した。

 3つ目は「リコークオリティの確立」で、この面では、さらなる顧客満足度の追求を実施。4つ目の「新しい成長領域の創出」においては、プロダクションプリンティングを推進するほか、3月8日に発表されたプロジェクションシステム参入など、新規ビジネスの創出を継続的に実施する意向という。なおリコーでは、売上高全体の25%を、常に新規事業からの売り上げにしたいとの目標を設定しており、現在の新規事業の割合をおおよそ3000億円規模と説明。新規ビジネスを5年で倍くらいにすれば、25%を達成できるだろうとした。

 最後の5つ目は、「グローバルブランドの確立」。近藤社長は、「一朝一夕で可能とは思っていないが、愚直に、真摯(しんし)にお客さまと一緒に作り上げていく。そして、グローバル優良企業に求められる高収益体質を実現したい。CRGPや拠点の整理統合などを実施しながら、2009年は500億円くらいの経費削減をやってきたが、2010年度からは本格的にフェーズ2に取り組む決意。大きな買収を通して当社の資産はふくれあがっているが、その良さを失わない形で効率を上げていく」と述べた。

 リコーでは、こうした取り組みを通じて、5年以内に営業利益率10%、ROE12%、配当性向30%といった目標の実現を目指して、事業を行っていくとしている。

グローバルブランドの確立を目指す中期的な経営目標





(石井 一志)

2010/3/12 16:45