日本IBM、世界最速の処理能力をもつ最新プロセッサ「POWER7」を発表
POWER7搭載の新製品ラインアップ |
日本アイ・ビー・エム株式会社(日本IBM)は2月9日、世界最速となる200ギガ・フロップスを超える性能をもつ汎用プロセッサ「POWER7」と、POWER7を搭載したサーバー新製品4モデルを発表した。サーバー製品は、2月14日から順次出荷を開始する予定。
POWER7は、1CPUあたり従来のPOWER6の4倍となる最大8コア、1コアあたり従来の2倍の最大4スレッドを実現し、従来の8倍に当たる最大32スレッドの並列処理能力を提供。最大動作周波数は4.1GHzで、45ナノメートルのプロセスルールによる次世代プロセッサとなっている。POWER6と比較して約5倍の処理能力を実現、消費電力あたりの処理能力も約4倍に向上している。
POWER7プロセッサチップの概要 | Power 750 Express | POWER7チップ、POWER7オーガニック・モジュール、POWER7セラミック・モジュール |
執行役員 システム製品事業担当の薮下真平氏 |
さまざまなワークロードに最適な環境をチップレベルで実現 |
POWER7の発表にあたって、執行役員システム製品事業担当の薮下真平氏が製品投入の背景などを説明。「当社は2008年11月に、ITシステムによってスマートな地球を実現する“Smarter Planet”というコンセプトを打ち出したが、今回、このコンセプトをさらに進化させ、今までのシステムの概念を超えた統合ソリューションとしてPOWER7を投入する。POWER7では、ワークロード最適化という考え方を具現化するために、8000社の顧客の声を聞いて多種多様なアプリケーション業務を分析。ワークロードに応じて柔軟にシステムを活用し、より高いレベルでエンドユーザー一人ひとりの意志決定をサポートする、クラウド時代に最適なソリューションとなっている」と述べた。
POWER7の技術的なトピックスとしては、通常CPUの外部に配置されるL3キャッシュを「eDRAM(embedded DRAM)」としてCPUに内蔵。この業界初の技術により、コアからL3キャッシュへのアクセス速度が6倍向上したほか、一般に用いられるSRAMに比べてスペースを3分の1、待機消費電力を従来の5分の1に抑えており、CPUあたり32MBの大容量キャッシュを低消費電力で実現する。また、SRAMによる実装に比べて、ソフトエラーの発生率も250分の1に低減している。
実メモリの最大10倍まで仮想的にアプリケーションに配分できる機能「Active Memory Expansion」も業界初の技術となる。SAPのERPアプリケーションなど、処理能力がメモリ量に依存するアプリケーション向けに有効な機能で、IBM試算では、SAPのERPアプリケーション向けにメモリ量を50%増加すると、トランザクションの処理量は65%以上向上する見込みだという。
さらに、業務アプリケーションの特徴や負荷に応じて、同時に実行するスレッドの数やキャッシュへのアクセスを柔軟かつ最適に制御することができる。これにより、複数の多様な業務アプリケーションの並列処理ができる一方で、データベース処理やデータ分析など、より多くのメモリを必要とする業務にも対応可能となる。業務の特徴や負荷に対して常に最適に資源が活用され、多様な業務を統合することで高い資源利用率を実現できるため、クラウド環境に最適となっている。
eDRAMでL3をチップに内蔵 | 物理コアで4スレッドを実行 | POWER7 消費電力あたりパフォーマンスの進化 |
理事 パワーシステム事業部長の高橋信氏 |
今回、POWER7搭載のサーバー新製品としてラインアップしたのは、ハイエンドモデル「Power 780」、中規模・大規模システム向けモデル「Power 770」、ハイ・パフォーマンス・コンピューティング専用モデル「Power 755」、中規模ビジネス向けモデル「Power 750」の4モデル。すべて、ラックマウント型の4Uモデルとなっている。
理事 パワーシステム事業部長の高橋信氏は、POWER7搭載サーバーの投入にともなうパワーシステム事業部の戦略について、「POWER7を搭載するサーバー製品は、ワークロード最適化システムとして、当社のもつさまざまなソリューションを統合し、“仮想化無限大”、“ダイナミックなエネルギー最適化”、“ダウンタイム・ゼロクラス”、“自動化された管理”という4つの価値を提供する。これを機に、2010年のパワーシステム事業部では、ワークロードの最適化を推進するとともに、ビジネス変革のためのITトランスフォーメーション、およびビジネス・パートナーとの協業も積極的に進めていく」との方針を示した。
具体的に、ビジネス変革のためのITトランスフォーメーションの推進では、顧客システム全体のスムーズな移行を支援する「Japan Migration Factory Program」を引き続く展開することに加え、新たに他社製サーバー/Power旧モデルからPower System新モデルへの移行を支援する「Power Rewards移行促進0%リース・プログラム」、月々の支払の増額なく最新テクノロジーへアップグレードできる「Power対象テクノロジー・アップデート・オファリング」を提供開始する。また、パートナーとの協業の推進では、POWER7発売記念の特別オファリングとして、「POWER7フォーカス・ソリューション特別割引」、「POWER7デモ開発機特別割引」を実施する。
Power Rewards移行促進0%リース・プログラム | Power対象テクノロジー・アップデート・オファリング |
POWER7搭載サーバー各モデルの特徴は、ハイエンドモデル「Power 780」では、業務アプリケーションの特徴に応じてPOWER7プロセッサを「TurboCoreモード」と「MaxCoreモード」の2つのモードに切り替えられる機能を業界初搭載。「TurboCoreモード」では、データベース処理やデータ分析など、コアあたりに高い処理能力や多くのメモリなどが必要な業務向けに、搭載している8コアの半分となる4コアを稼働させ、CPUの動作周波数を3.8GHzから4.1GHzに増強するとともに、1つのコアで使用可能なキャッシュを倍増させ処理能力を向上する。一方、「MaxCoreモード」では、CPUあたり最大32スレッドを活用し、Webアプリケーションなど一般のアプリケーションでの高い処理能力やサーバー統合による資源の最適利用を実現する。2つのモードを使い分けることで、業務要件に応じて処理能力の最適化を図ることができる。
中規模・大規模システム向けモデル「Power 770」は、POWER7を最大で8個搭載できるビルディング・ブロック型のラックマウント・サーバー。価格性能比に優れ、コア数が同じの従来モデルと比較すると、約3分の1の価格で同等の性能を発揮する。最大で256スレッドの並列処理が可能で、今年中には最大640の論理区画の構成をサポートする予定。
ハイ・パフォーマンス・コンピューティング専用モデル「Power 755」は、1台の論理性能が844ギガ・フロップス(GFLOPS)、64台構成では56テラ・フロップス(TFLOPS)となる。また、1ラック6台構成の論理性能は5TFLOPSで、これは2004年発表のスーパーコンピュータ「IBM Blue Gene/L」1筐体と同程度の性能になるという。
中規模ビジネス向けモデル「Power 750」は、4ソケットシステムとして業界最速を実現。また、省電力性に優れており、パフォーマンスあたりの消費電力は従来モデルの約25%となっている。「Power 755」とともに、RISCベースのサーバー製品として初めて、アメリカ環境保護局(EPA)が推進する省電力化プログラム「エネルギー・スター」の認定を取得している。
税別価格は、「Power 780」が2788万8400円、「Power 770」が1291万8000円、「Power 755」が1251万1500円、「Power 750」が546万5100円。出荷開始は、「Power 750」と「Power 755」が2月19日から、「Power 770」と「Power 780」が3月16日からとなる。
【2/12 訂正】
Power 780/770について、日本IBMより、価格訂正の発表がありましたので、初出時より価格を訂正いただしました。
2010/2/9 17:53