日立・中西新社長が会見、「グローバルビジネスで技術力を生かす」


新社長に就任する中西宏明氏(右)と、会長兼社長の川村隆氏(左)

 株式会社日立製作所は2月4日、同社取締役 代表執行役 執行役会長 兼 執行役社長の川村隆氏と代表執行役 執行役副社長の中西宏明氏の両名が出席し、同日発表された新社長人事に関する記者説明会を開催した。

 新社長に就任する中西氏は、1946年生まれの63歳。1970年に同社に入社しており、今年で40年になる。

 今回の人事について、川村氏は、「3年連続の赤字という状態で、昨年4月に会長と社長を兼任し、とにかく出血を止めることを最優先に取り組んできた。その間、事業ポートフォリオの再編や新株発行などにより、経営基盤の確立を図り、なんとか出血状態は回避できた。次の成長のためにはさまざまな布石が必要だが、兼務していることで機会損失が発生してしまっている。攻めの状況に入るときには、一人ではなく二人の体制が必要と感じた」と、緊急対応の段階から次の成長を見据えた段階に入るための人事であったと説明。

 中西氏を新社長に選んだ理由については、「これまで幅広い分野で活躍しているが、日立GSTの再建、イギリスでの鉄道事業の推進など、特にグローバルビジネスでの実績がぬきんでている。また、情報通信ビジネスの経験もあり、情報通信と社会インフラの融合を進めている日立にとって、最適な人物と判断した」と述べた。


取締役 代表執行役 執行役会長 兼 執行役社長の川村隆氏新社長に就任する代表執行役 執行役副社長の中西宏明氏

 社長就任の打診は昨年末にあったと、中西氏は説明。「権限を集中することで、危機を脱出する段階から、改革を実行する段階に入っていると理解し、就任を引き受けた。厳しい環境や乗り越えなければならない課題も多いが、日立の製品は世界中で信頼されており、これをさらに広げていきたい」と、高い品質・高い信頼性が同社の根幹であると強調。「グローバルビジネスの拡大も課題であり、拡大する上で海外でのエンジニアリング力を高めることは必須。最適なチームをグローバルで編成することで、結果を求めていきたい」とした。

 あわせて発表された役員人事について、「(代表執行役 執行役副社長に就任する日立金属 取締役会長の)持田農夫男氏は、日立金属のプロパーであり、グループ会社からこのような形で役員になるのは、過去に一人いただけ。新執行部で最終的な意志決定を行う際、持田氏が入ることで、よいつなぎとなっていくことを期待している」(川村氏)と説明。「(執行役専務に就任する日立マクセル代表執行役 執行役社長 兼 取締役の)角田義人氏は、日立マクセルの社長をやりながら、電池全体のまとめ役をお願いする予定。電池に関しては、これまで6億セルを製造しながら、出火事故を起こしていないという実績がある。今後、モバイルから巨大なものまで幅広く展開していく」(川村氏)と述べた。

 日立を今後どのような会社にしたいかと問われた中西氏は、「“人をいかし、技術をいかす”というのが日立の最大の価値。技術を大切にし、それを担う人を支えていきたい」と述べ、「日立は社風として品質を本当に大事にしており、品質に関して終わりがないという実感を持っている。品質は設計段階から資材購入・部品の信頼性にいたるまで、品質を作り込むことが重要」と、品質を第一にする考えをあらためて強調した。





(福浦 一広)

2010/2/5 00:00