ネット通販時代のコンタクトセンターとは?-日本アバイアの事業戦略

通販の「メディアミックス戦略」を支える多彩な仕組み

システムエンジニアリング部 システムエンジニアリングマネージャーの幸崎真一氏

 日本アバイア株式会社は12月4日、「ネット通販時代のコンタクトセンターを考える」と題して記者説明会を開催。現在、通販各社が力を入れて取り組む「メディアミックス戦略」と絡めた、同社のコンタクトセンター事業戦略について紹介した。

 通販業界では、「メディアミックス戦略」がトレンドとなっている。カタログやテレビの通販からシフトし、幅広い商材や充実の機能で、性別を問わず幅広い年齢層を取り込んでいるネット通販だが、「年々、競争が激化。他社との差別化を図ろうと、通販各社がインターネット、テレビ、電話、FAX、メール、紙媒体など各チャネルの連携を進めているのだ」(システムエンジニアリング部 システムエンジニアリングマネージャーの幸崎真一氏)。

 それがメディアミックス戦略。テレビなどの「認知度向上」に適したメディアと、インターネットなど「販売」に適したメディアとの創造高価を追求する販売戦略で、「テレビでおなじみのジャパネットたかたも、紙媒体やメールなどへ積極的な連携を図っており、実はテレビよりも大きな収入源になっている」(同氏)という。

 こうしたトレンドを受け、日本アバイアでは、「メディアミックス戦略の深化」「顧客セグメンテ―ションに基づくコンタクトルーティング」「企業間連携も含むビジネスプロセス連携」に中期的課題として取り組んでいる。

通販各社が取り組む「メディアミックス戦略」日本アバイアの通販コンタクトセンター事業における中期的課題「メディアミックス戦略の深化」の概要

 「メディアミックス戦略の深化」では、さまざまな製品・技術でメディアミックスを支援。「コンタクトチャネルの間口を広げ、顧客ごとに適したチャネルへ誘導する仕組みをシステム化する」(同氏)のが狙いで、その一例として、電話のセルフサービス音声とWebの画面が連動するデモを紹介した。

ユーザーが注文キャンセルしようとWebへアクセスキャンセルの方法が分からない場合にボタンをクリックコールセンターに電話。表示されているパスワードをコール先で入力して認証を行う
ここからは電話のセルフサービス音声に合わせて、自動でWebの画面が切り替わっていく。電話でメッセージを聞きながら、Web画面をクリックすることも可能キャンセルする前に商品について聞きたいと思い、お問い合わせ“*”を入力オペレータへの待ち時間なども表示される

 「顧客セグメンテ―ションに基づくコンタクトルーティング」では、顧客属性を基に、購入実績の多いVIPのコールを優先したり、あるユーザーから再問い合わせがきた際に、過去に対応したエージェントを自動割り振りしたり、さまざまなルーティングを実現する。

 データベースと連動して多彩なルーティングが可能で、ほかにもイタズラ電話対策として発信者番号を通知している顧客を優先する「発信者番号通知/非通知」、何度も“かけては切る”を繰り返しているユーザーを優先する「再呼優先」、発信者の地域を識別して地域特定サービスを実現する「発信者地域別」などがあるという。

「VIPルーティング」の例最後に対応したエージェントに割り振る「ラストエージェントルーティング」の例ほかにもデータベースと連動して多彩なルーティングが可能

 「企業間連携も含むビジネスプロセス連携」では、SOAPなどのWebサービスにより、他社のシステムとも連携したコール対応を実現。例えば、「ユーザーから通販会社へ配達状況の問い合わせがきたとする。これまでだと、通販会社の方で物流会社へ問い合わせてユーザーにコールバックする必要があったが、Webサービスで通販会社と物流会社のシステムを連携させれば、通販会社のセルフサービス音声内で配達予定日時も案内できるようになる」(同氏)。

 ほかにも受発注管理、在庫管理、生産管理システムなどと連携することで、コンタクトセンター業務のプロセスを飛躍的に効率化することが可能。「メディアミックス戦略の深化」で紹介したデモも、PBXとWebサーバーを連携させることで実現している。

Webサービスを使って企業内プロセスを効率化他社システムと連携した例。物流会社のWebサーバーと連携することで、通販会社のセルフサービス音声内で商品の配達予定日時も案内可能に

 こうしたサービスのためには、リアルタイム分析が欠かせない。そのBIツールを含めて、日本アバイアではよりよい顧客サービスの実現に注力している。現状、通販会社売り上げトップ10のうち、9社のコンタクトセンターで日本アバイア製品が使われているという。事業は順調とのことだが、逆にすでにそれだけのシェアを占めているということは、近い将来、新規顧客の頭打ちを迎えることにもつながる。同社では「中堅・中小の通販会社のための製品や、クラウドに対応するSaaS型の製品もすでに準備が整っている。今後は、こうした領域にも注力し、顧客サービスの充実を図っていく」(同氏)と述べている。


(川島 弘之)

2009/12/4 17:46