日本HP、次世代ITインフラを実現する新戦略「HP Converged Infrastructure」

統合インフラ製品を強化、コンサルサービスと新データセンターサービスも

 日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は12月3日、次世代ITインフラ実現のための新戦略「HP Converged Infrastructure(HP コンバージド・インフラストラクチャー)」を発表した。あわせて、同戦略を支える統合インフラパッケージ「HP BladeSystem Matrix」の管理ソフトウェア製品を強化するとともに、各種コンサルティングサービス、新データセンターサービスを提供すると発表した。

 HP Converged Infrastructureは、コンピュータ、ストレージ、ネットワーク、電源冷却およびIT設備の既存リソースの統一管理を可能にすることで、仮想化され、高度に自動化された弾力性のあるデータセンターを実現する戦略、およびアーキテクチャ。同社では、この新戦略を推進するための専門組織「インフラストラクチャーソフトウェア・ブレード事業本部」を新設し、事業体制強化を図っている。

エンタープライズストレージ・サーバー・ネットワーク事業統括 インフラストラクチャーソフトウェア・ブレード事業本部 事業本部長の正田三四郎氏
HP Converged Infrastructureの各種コンサルティングサービス

 エンタープライズストレージ・サーバー・ネットワーク事業統括 インフラストラクチャーソフトウェア・ブレード事業本部 事業本部長の正田三四郎氏は、「コンバージドインフラストラクチャという言葉は、日本ではまだなじみがないが、集中・統合化されたインフラという意味になる。現在、企業のITシステムは無秩序に拡大を続けており、その結果、オペレーションと保守に多大なコストがかかっているのが実情。当社では、こうした課題を解決するためには、既存リソースをすべて統合したインフラを構築し、その上でビジネスを展開していく必要があると確信し、今回の新戦略を打ち出した」と説明した。

 新戦略では、統合インフラを具現化するパッケージソリューション「HP BladeSystem Matrix」を中核として、単に各種製品・サービスを組み合わせるのではなく、これまで蓄積してきた技術やスキルをベースに、1)共有サービスを実現するインフラストラクチャ運用環境、2)一度の接続でダイナミックな構成変更を可能にするフレックスファブリック、3)柔軟性の高い仮想化されたリソースプール、4)インテリジェントな電力管理を実現するデータセンタースマートグリッド、という4つのアーキテクチャを提供するという。正田氏は、「デスクトップPCからノンストップサーバーまで、すべて自社開発製品を持ち、標準化されたインテグレーションを用いて、社内システムからクラウドコンピューティングまで幅広い形態で統合インフラを提供できるのは当社だけ」と、新戦略における日本HPの強みを訴えた。

 HP Converged Infrastructureの本格展開に向けて、「HP BladeSystem Matrix」の機能強化を図るとともに、各種コンサルティングサービス、新データセンターサービスの提供を開始する。


各種コンサルティングサービスの関係性HPのデータセンター戦略新データセンターの概要

 HP BladeSystem Matrixの機能強化については、HP BladeSystem Matrixを構成するx86サーバー「HP ProLiantサーバー」および「HP BladeSystem」のシステム管理、運用管理を行うHP Insightソフトウェアポートフォリオの主要ラインアップを「HP Insight Control 6.0」と「HP Insight Dynamics 6.0」の2つに統合し、2010年1月から販売開始する。また、HP BladeSystem Matrixの活用促進に向けたパートナープログラムも2010年1月から開始する予定。

サーバー管理ソフトウェアを2製品に統合
テクノロジーサービス事業統括 テクノロジーコンサルティング統括本部 ソリューション第1本部 部長の内田恵氏
エンタープライズサービス事業統括 マネージドサービス統括本部 ビジネス開発部の藤澤誠氏

 HP Insight Control 6.0」は、HP ProLiantサーバーの監視と管理を簡素化するためのサーバー管理ソフトウェア製品で、今回、仮想マシンを管理する機能やWindowsシステムの運用管理製品「Microsoft System Center」と連携する機能を統合した。一方、HP Insight Dynamics 6.0は、HP製サーバー、ストレージの仮想環境を統合管理するソフトウェア製品で、インフラストラクチャオーケストレーション機能を統合した。また、仮想環境におけるHP製以外のサーバーの、ノードおよび仮想マシンの可視化、仮想マシンの論理サーバー管理、キャパシティプランニング機能が利用可能となった。さらに、災害対策などに利用できるアプリケーションのリカバリ機能を提供する。

 コンサルティングサービスとしては、1)ビジョン策定ワークショップ、2)計画立案サービス、3)設計および導入サービス、の3つのサービスを2010年1月から順次提供する。テクノロジーサービス事業統括テクノロジーコンサルティング統括本部 ソリューション第1本部 部長の内田恵氏は、「3つのコンサルティングサービスによって、従来までのサイロ化されたITシステムから、より最適化されたITサービスへの変革を支援していく。これらのサービスを活用することで、HP Converged Infrastructureの導入にあたって、コンセプト構築から実際の運用および実装までを、顧客自身で行うことが可能となる」と述べている。

 「ビジョン策定ワークショップ」では、顧客のビジネスにより適合したITインフラのコンセプト作りをサポートする。革新的なインフラの生み出す価値の理解、および活用方法について検討し、結論を導き出す。「計画立案サービス」では、共有サービスを企画、運用する組織、サービスの運用持続性、および新インフラへの移行タスクをロードマップとしてまとめ、新しい基盤へのスムーズな移行を支援する。「設計および導入サービス」では、HP Converged Infrastructureの基盤設計および企業全体でのスムーズな移行が行えるよう、組織設計、テクノロジー管理、移行管理といった重要事項の導入設計、実行をサポートする。日本HPのコンサルタントがプロジェクト管理を行い、運用の持続性を確保した共有サービス基盤を構築する。

 データセンターサービスとしては、東京近郊のデータセンター施設を利用した新サービスを本日より提供開始する。HP BladeSystem Matrixに最適なセキュリティ、電力、空調環境を備えた最新設備を活用し、ハウジングサービスに加えて、運用管理・監視サービスまでを含めたオールインワン・パッケージ型のアウトソーシングサービスを提供する。エンタープライズサービス事業統括 マネージドサービス統括本部 ビジネス開発部 藤澤誠氏は、「新データセンターは、1ラックに3つのブレードエンクロージャーを搭載可能な最新鋭の電力、空調設備を備えており、サーバースペースだけでなく、回線・電気料金を従量課金方式で提供する。また、キャリア局を収容しているため、低コスト、低遅延、耐障害性を実現するほか、インターネット超高速バックボーンへのダイレクト接続も可能」としている。

 サービス提供単位は、ハウジングからシステム全体の運用まで、顧客の必要な単位で提供する。必要に応じて、ファイナンスを利用したオフバランス化サービスも提供することができるという。今後は、ITリソースをサービスとして提供するクラウド型ITデリバリセンターの実現を目指す計画。

 今回発表した新製品およびサービスの価格は、HP Insight Control 6.0が5万6700円から、HP Insight Dynamics 6.0が26万8800円から。ビジョン策定ワークショップが157万5000円から、計画立案サービスが個別見積もり、設計および導入サービスが157万5000円からとなる。



(唐沢 正和)

2009/12/3 16:40